第92話原田の諸事情
二番目に
「俺もこれで免許を取れる」
俄然仕事にもやる気がでる。何せ時給が上がるのだ。汗を流して得たお金。必ず免許を取って時給をアップさせたい。原田が店番をしていると客がやって来た。
「いらっしゃい」
挨拶して野菜のお勧めをする。今日は大根が安い。しかしある客に原田は目が釘付けになった。推しの吉岡里穂に
「今日は大根が安いよ」
女は言った。
「大根も良いけど他のお勧めは何ですか」
「ほうれん草ですかね、鮮度も抜群です」
俺は吉岡里穂さんと会話をしている錯覚に
「あの人は吉岡里穂そっくりだ。まさか本人ではあるまいな」
配達は時間との戦いである。野菜の知識も必要だ。取引先とのやり取りも原田の大切な役目である。
「おはようございます、商品置いておきます」
素早く商品と納品書を客に渡し、次の店に回る。時間との戦いだ。
「原田さんも大分仕事に慣れたね」
同僚が言ってくれる。
「いや、やりがいもあって楽しいです」
そう答えておくと良いと言うのも原田が身に着けた処世術だ。そう言いつつも客でやって来た吉岡里穂に似ている客の事が頭にあって離れない。それほどそっくりなのだ。
「もしやすると本人かもしれない」
原田の妄想は膨らむばかりであった。小野田家に戻り近藤からノートパソコンを借りて
(吉岡里穂)
と入力して検索する。画像と共に情報が表示される。写真集が来月発売されるが原田は予約済みである。やはりあの客はよく似ている。
「このような事も有るのだな」
原田は不思議に思った。
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