第85話男達の下着

隊士一同の悩みは尽きない。下着もその一つだった。全員、ふんどしであった。下着でも現代に適応させられざろうを得なかった。薫と詩織がミシンで作ろうかと思案したが面倒くさいので現代の下着に変えてもらった。


「やはりトランクスが褌に近く、便利である」


「いやいやボクサーブリーフは腹が冷えず体に良い」


各々おのおのの好きにすれば良い、と近藤の一言で決まった。間違えないようにマジックで名前を書いた。


「なんか、恥ずかしいな」


洗濯物を干す詩織はなんだか照れる。今までは父の下着だけだったがこれだけ増えると一仕事になる。褌を初めて見た時はびっくりしたものだが今は箪笥たんすにしまってある。


小春日和こはるびよりに隊士達の下着が風に吹かれている。洗濯と干すまでは詩織がするのだが、乾いた後は隊士達がそれぞれに取り込み、各自に衣装ケースが配られているのでそこに収納する。


「洋装には褌は合わぬ」


隊士一同の見解である。こだわりを見せたのは斉藤である。斉藤は黒の股上の浅いボクサーブリーフを自分で買い求めた。他の隊士は祐介と一緒にショッピングモールで買った。


「斉藤先生は粋ですね」


吉村が風呂場で斉藤に言った。引き締まった体に浅めのボクサーブリーフは似合う。


「貴公はトランクスにしたのか」


吉村も最初はボクサーブリーフにしたが、やはり落ち着かず永倉のすすめでトランクスにした。そうすると褌に近い履き心地なのである。


「褌が売っていないとは驚きですね。わずか百五十年程度で変わるものですね」


「ちと早過ぎる感もあるがな」


下着ですら意見が分かれるのだから組織をまとめるのも難儀なんぎである。


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