第57話菊一文字
沖田は道場で自分の
「これは
と思っている。古刀の名作と名高い菊一文字がそうそう手に入るものではない。であるから近藤や土方のように売りに出す事も出来ない。しかし良く切れた。沖田にはそれで十分だった。銘などに価値を付けるのは沖田からしてみればおかしな話である。刀として切れればそれで十分なのである。沖田はそういう人間である。
「や、菊一文字の手入れかね」
永倉が声を掛けてきた。
「ええ、久しぶりですから」
沖田は答えた。
「局長や副長、斎藤君のように売りに出せば沖田君も気軽に遊べるだろう」
「いや、こんな名刀、そう簡単に売る物では無いですよ」
出していると永倉との話が長引きそうなので刀を仕舞う事にした。小野田家では刀は人目の付かない時に手入れをし、その後は必ず
「土方さんも売るなんて‥」
土方は冷静に物事を考える人だ。冷静に考えて
「吉村さん、ちょっと一汗かきませんか?」
吉村は喜んで引き受け、沖田と吉村は道場中央で対峙した。沖田の
「良く戻ってきてくれた」
と心で思った。
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