第49話新選組と地域の防犯

「最近、小中学生に声かけ事案が多発しまして、この地域でも見守りをしようと自治会で決まりました」


祐介は隊士一同に説明をした。


「つきましては皆さんにご協力をお願いしたいのです」


「子供達を犯罪から守る、立派なお役目ですな」


永倉が言った。近藤が続けて


「うむ、永倉君の言う通りだ。諸君、異義は有るかね」


おおむね賛成であった。斉藤は面倒だと思った。


「そうおっしゃると思って準備をしております」


隊士一同分の手旗と「子供見守り隊」と書かれたベストを持ち出してきた。


「これを登下校時に身に着けていただき、手旗を持って児童を見守ると言うのが主な仕事です」


簡単な事であった。アルバイトをしている原田と、塾の準備がある吉村は外されてその他の隊士が割り当てられた。


小学校近くで子供達を見守る。


「諸君!勉学ご苦労!気をつけて帰りたまえ」


近藤は集団登校の児童に声を掛ける。子供たちは元気良くさようなら、と言って

帰って行く。


「歳よ、子供を犯罪の的にするなど許せぬな」


帰り道、近藤は言った


「我々の時代では考えられない事ですな」


土方は答えた。寒いので早く帰りたい。


「そう思えば現代に来て初めてのお役目ですな」


血生臭い毎日をともすれば忘れがちになりそうな隊士達は気がゆるんでいるかもしれないと土方は思った。


「寒い中、お疲れ様でした。茶でも飲んでください」


小野田家に戻ると、チヨが茶を出した。


「でもですよ、万が一子供たちに何か起こったらどうするつもりですか。我々は丸腰ですよ」


沖田は言った。


「拳闘で良かろう」


近藤は茶をすすりながら言った。脇差でも差そうものならこちらが犯罪者になってしまう。不自由なものである。


「まあまあ、あまり深く考えずに、立っておけば良いのです」


チヨはそう言って茶菓子を出してきた。

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