第48話月代の悩み

月代さかやき。髷を結う際、頭を剃り上げるのである。新選組では総髪そうはつが圧倒的に多い。現代にやって来た隊士の中では沖田と吉村が月代を剃っている。


「すっかり伸びてしまいました」


沖田は伸びた頭をポリポリと掻いていると近藤は言った。


「吉村君は近所の理髪店と言うところで剃ってもらっているそうだぞ」


沖田は吉村に話をした。それでは一緒に行きましょうとなった。吉村もそろそろ伸びてきた。沖田は看板を見た。田代理髪店と書いてある。


「吉村さん、いらっしゃい。そろそろいらっしゃると思いましたよ」


「どうも。実はもう一人、月代を剃っていただきたい人が居るのです」


そう言って沖田を紹介した。店主は早速沖田の月代を剃る準備をした。


「当店ではお坊さんの剃髪ていはつもやっていましてね、安心してください」


元居た時代では月代を剃る職人などは沢山居たが、現代では居ない。店主は濡らして暖めておいたタオルを頭に置いて、シャボンを泡立てる準備を始めた。しばらくしてタオルを取り、泡立てたシャボンを頭に乗せていく。


「わぁ、暖かいな」


店主が剃り始める。座り心地の良い椅子は心地よい。剃刀かみそりはリズム良く沖田の頭を剃っていく。あっという間に剃り終わった。沖田は心地よさと身が引き締まったように感じる。


「吉村さんと言い、沖田さんと言い、月代を剃れなんて言うお客さんは居ませんよ」


代金を払い、店を後にした。沖田はご機嫌だった。


「しかし沖田さん、髪結かみゆいの職人は居ないんです。髪をいあげるのは手伝いましょう」


沖田と吉村は二人帰った。沖田は近藤からお小遣いを貰っているが、ちょっと増やしてもらわないといけないな、と思った。

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