第40話無戸籍

隊士一同が道場へ呼び出された。


「皆さんにお集まり頂いたのは現代における諸問題を解決するためです。」


祐介はそう言って続けた。


「現代では戸籍と言うものが無ければ国民として存在しない事になります。つまりは皆さん現代に存在しない事になります」


「別にそのような物は必要ないのでは」


土方が言った。


「現代には国民健康保険という制度があります。それが有れば医療費の三割を支払えば良いのです。歯医者に通うのも高額な金額を払う必要もありません」


「原田さんは自動車の免許が取りたいのですよね」


「左様」


「であるならば住民票という書類が必要になります。ここに住んでいると言う証明です。これも戸籍が無ければ手に入りません」


詳しい事は弁護士に相談する事になりますと話を止めた。


吉村が質問した。


「我々が居た頃にも戸籍と言うものは存在しました。現代とどう違うのですか」


「まず政府は国民を把握し、各種の行政手続きや税金の把握など現代においては必須のものなのです。私も無戸籍については無知ですからしかるべきところに相談します」


「いよいよ現代に生きる人間として準備をしないといけないという事ですな」


近藤が言った。


「幹部諸君。我々ははからずも現代にやって来た。郷に入れば郷に従えと言うが先ずは我々も今は現状に対応しなければならない。辛抱してくれ」


話は終わり、散会になった。近藤と祐介は道場に残った。


「して祐介殿。肝心の我々が何故現代にやって来たのかを説明してほしいのであるが」


「近藤さん、それについて説明するには一日でも足りません。私も出来るだけ勉強をして皆さんにお伝えしますのでもう少しお時間をください」


なんとかお茶を濁したものの、祐介は心の中で頭を抱えた。





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