第32話近藤、図書館にて

祐介の書斎の本を読み尽くした近藤は新選組の辿る運命を知った。しかしだからと言って絶望したり落胆した訳ではない。ただただ、己の出来る事のみを行うまでなのだ。今日は祐介に教えてもらった図書館へ行くつもりだ。土方も同行しようかと言ってきたが一人で行くことにした。


「なんとこれほどの本が……」


入館してなり近藤は驚いた。祐介の書斎など到底及ばない量の本棚が並んでいる。これほどの本を見たことが無い。各分野ごとに区切られた本棚を見ていく。見た事も無いような舶来の画集、世界の思想、数え始めるときりがなかった。そして近藤はお目当ての日本の歴史のコーナーにやって来た。この巨大な本棚が数列並んでいる。ゆっくりと眺めていると幕末、明治維新の列があった。


「これだこれだ」


近藤は祐介の書斎では新選組の顛末や幕府無き後の日本を知るには限界が有ると感じていた。しかしそれも此処へ来れば詳細な情報を得る事ができる。


「これとこれと、後、これもだな」


すいすいと本を手に取っていく。日本の古代から幕末まで適当に選んでいく。これを無料で貸し出すとはなんとも大盤振る舞いではないか。本の裏の価格を見ても決して安くはない。近藤は貸出しカードを持てないので祐介に借りた。祐介は不審がられないように先ず必ず借りる時にはカードを出すようにと言われていた。貸出と吊り看板

のあるカウンターで貸し出し手続きを終え、借りた本を風呂敷に包み帰途に着いた。


「現代の日本は恵まれている。果たしてそれがこの国にとって良い事なのか‥‥」


近藤の疑問は尽き果てる事が無い。

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