第16話銭が無けりゃ働けばいいさ

「侍のする事じゃねえなあ」


原田が言った。隊士一同が小野田家にやって来て丸一月になる。それぞれが現代の事情を知り、とりあえずは現代でなんとかやっていかないといけないと気が付いた。現代は刀を必要もしない。現に襲われてもいない。平和な日々が続いている。局長、副長、斎藤は差料を金に換えたそうだが金額は聞いたことが無い。原田はチヨに相談した。


「それがしは名刀も所持せず、所持していた金もすでに換金し、失ってしまった。どうすれば良いのでしょうか」


チヨはニコッと笑顔で答えた。


「銭が無ければ働けば良いのです」


チヨが働き口に困っているという原田に対して勤め口を勧めた。チヨが経営している八百屋である。人手不足で困っているという。原田は雇ってもらう事にした。そして冒頭の言葉に戻るのである。


八百屋、魚屋を経営する小野田家は小売りより卸しに重点を置いており、得意先の注文において商品を扱っている。しかしチヨの経営方針で小売りも行う。野菜の質と価格も良心的で、スーパーとの価格競争にも引けを取らない。卸の小売りとあって敏感な消費者はこの八百屋で野菜を買い求める。そこで働いて欲しいとの事だった。時給は九百五十円。原田は働く事に決めた。 

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