第6話祇園にて

一通り食事が終わり、隊士一同は酒を飲み始めた。しかし決して騒ぐ事無く静かで、時折沖田が駄洒落を言って穏やかに皆が笑うといったものである。薫と詩織は食器を下げ、詩織は酌をして回ったが多くの隊士は手酌で結構、と断ったので詩織は台所に戻った。入れ替わりで祐介が道場へ来た。


「話を聞こうと思うのですが、一体何が起きたのか教えていただきたいのです」


何が起きたか、と近藤が繰り返し、事の顛末を話し始めた。


忙しい任務の合間だったために試衛館一同は揃わなかった。井上源三郎がその一人である。近藤は祇園に繰り出して宴席を設けた。一同飲みに飲んだが酒で剣が鈍るという事は決してなかった。吉村貫一郎がこの席に呼ばれたのは土方が念の為に連れてきたのだ。本人もそれは承知していた。翌日の任務も有るので早めに宴会は終わり、帰途に着くことになった。祇園から屯所は目と鼻の先である。当時の街というのは夜まで営業している居酒屋や遊郭などは明るいものではあるが、現代の様に道の隅々まで照らす様な明るい道ではない。通りを隔てれば吸い込まれるような闇が待ち構えている。先行する吉村の提灯の火が消えた。おかしいと一同が察した時は気を失い、気が付けば小野田家の道場に居た、と近藤は祐介に説明した。


「なるほど、良くわかりました。現代でも良く言われるタイムリープかもしれません」


「たいむりいぷ?」


「はい、何かがきっかけで未来へやってきたのです。原因はわかりません」


詩織が酒を持ってきた。現代の酒は近藤らに好評で、酒の席も賑やかになった。

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