「 ! 」

 ーー?

 「何しようとしてたっけ?」

 冷蔵庫の扉を開けながら俺は本気で失念してしまう。


 「ちょっともう、やめてよね!おじいちゃんみたいなマネ!」

 妻がそう言いながら俺におろし金を見せる。


 「おぉ!そうだった!わさびわさび」

 俺の嬉しそうな声を聞いて妻がため息をもらす。


 「はぁああ。しっかりしてよね」

 妻があきれてキッチンを離れてしまった。

 けれど扉の向こうから聞こえる妻と娘の話し声。


 「ほんと、私がいないと何もできないんだから・・・」

 「でもほっとけないんでしょ?」


 そんな他愛ないやりとりを聞いて嬉しく思う。

 生きててよかったと。


 「で、俺は何をしに来たんだっけ?」 

 

  

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