僕の世界
僕の世界は、ボリビアのウユニ塩湖の様に青空と白い雲がどこまでも果てしなく続く、穏やかな
この世界でなら、僕は、自分の想像し得る事なら何でも出来る。
ここでなら、あの
それじゃあ、余計な話はこの辺にして、そろそろ、僕の美しい世界を、くねくねと気持ちの悪い動きで汚すピエロ仮面の怪人を退治してしまおうと思う。
まずは変身。
右手をかざすと、僕はあっという間に戦隊モノのレッドの様な格好に変身するんだ。
でも、別にこの変身で何かがパワーアップするなんて事はなくて、ただ、気分を上げる為の仮装みたいなものなんだけどね。
ここからが本番で、僕は、あいつの動きを封じる為の鎖を創造する。
すると、何もない
そしたら、紫紺に輝く球体の核が現れるから、今度は光の
これで怪人退治は終わり。
とっても簡単だろう?
でも、ここからが、ちょっと憂鬱な気分になるんだ。
怪人の核を破壊すると、そいつの思念が僕の頭の中に流れ込んでくる。
そうこう言ってるの内に、さっそくきたみたいだ。
────いつの時代であろうか?随分と古風な街並みである。
【どうしても必要なんです!今月だけ、何とか前借りさせて頂けませんか?】
懇願する少年を、
【ダメだ、ダメだ!これだから子供っていうのは話にならんのだ。泣いて頼めばなんでも解決すると思っていやがる】
中年の男が折檻する手を強める。
【今月だけでいいんです。今なら、まだ間に合うって、お医者様が言ってるんです。母ちゃんはたった1人の家族なんです】
少年は、中年男にすがりつく。
【知った事か!
そう言って、中年男が蹴り飛ばすと、少年は
少年の取り出した刃に
そのまま中年男の家へ押しかけると、中年男の妻とその3人の娘を次々と
息も絶え絶え、我が家に辿り着いた少年は金を熟睡する母の枕元に置くと、
【生んでくれて…ありがとう。愛してくれて…ありがとう】
と、独りごちる様に言って、家を飛び出し駆け出した。
橋の
【力なんて…。くだらない】
そう呟いて、真冬の川の激流へと身を投げた。
鬼の
やっぱり、今回も気持ちの良いものではなかった。
どうやら、怪人には怪人になるだけの理由があるらしいけれど。
だけどさ、理由があるからって、人を傷つけていいはずがないだろう?
だから、僕は今日も怪人と戦うんだ。
こうやって、怪人を倒した後は、この美しい世界を閉じる。
そうしたら、ほらっ!
あっという間に現実世界に戻ってきて、剛毅は良い奴になっているという寸法だ。
『おい、マキナ』
ほら、モヤシじゃなくて、ちゃんと僕を名前で呼んでくれるだろう?
『今日の放課後、野球やるから空き地に集合な!エラーしたら、うさぎ飛びで町内30周だから気合い入れろよ!』
あれっ?おかしいな。剛毅は相変わらず昭和風のガキ大将のままだ。
後日分かった事であるが、剛毅を操っていた怪人を倒して以降、剛毅は無闇に暴力を振るわなくなったらしい。
だけど、どうやら、理不尽な事を言ってくる昭和のガキ大将気質は、一向に治らないようである。
彼は、どうやらナチュラルボーンのガキ大将らしい。
こんな事で寿命を削ってしまうなんて。
まぁ、でも、一人の修羅の魂が、心安らかに、穏やかな眠りにつけたのならば、それで良いか。等と思う僕なのであります。
つづく
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