Disc.02 - tr.06『幽霊部員とアクションサウンドとRE-X』

 結局、盛り上がる3年生トリオにそのまま有耶無耶のうちに生徒会室を連れ出された真貴と響一郎は、約束通り綺麗に片付けられた部室を確認する間もあらばこそ、今日はもう遅いから帰りましょう~~という日々希の鶴の一声で、訳が解らないまま帰路に就くこととなった。


「結局、何だったんだ今日のアレは……」

「まぁ、先輩たち喜んでたみたいだし、良かったんじゃない?」

「それで済ましちまうのかよ……」

「そう言えば、結局、あの子たちの名前、聞きそびれちゃったねー」

「なかなか誘導尋問にも引っ掛からなかったしな」

「また会えるかなー」

「俺はどっちかというと御免被る……」


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 翌日、放課後。

 部室に入った真貴と響一郎は、激しいデジャヴに襲われていた。


「……え!? ……え!? ……えーっ!!」

「おいおい」


「やっほー☆」

「よ!」


 テーブルに掛けてこちらに手を振る先日のワンココンビ。いや、そもそも鍵はどうした!?

 流石に予想外のことに固まってしまった2人の後ろから、3年生トリオが入ってくる。


「ちょっと響一郎、そんなところに突っ立ってられたら邪魔ですわ……え?」

「真貴くん、どうした? 早く中に入らないか……む?」

「どうしたの~~ 早くお茶にしましょう~~……あらあら~~!」

 3人の態度に流石にマズいと思った真貴は慌てて昨日の経緯を話そうとするのだが、気だけ急いて頭が回らない。

 助けを求めて響一郎を見上げると、さしもの彼も言葉が出てこない――と思ったら。

「よう、コロにポチ。今日は何を録るんだ?」

 チガウ、ソレジャナイ。いきなり事態を混乱させかねない一言に真貴が慌ててフォローを入れようと1人であわあわしていたら――


「ちょっと、貴女あなた方、どういう風の吹き回しですのっ!?」

「お前たち……もっと早くに来ていれば昨日のような面倒も無かったものを……」

「お久しぶりね~~!! ヴィーちゃ~~ん、ミサちゃ~~ん」


 お久しぶり!? 知り合い!? どーゆーことっ!?

 真貴が更なる惑乱の極みに達していると、察して真紅が説明してくれた。

「――あぁ、君たちは初対面だったな。彼女らは2年生で、、電音部員だ」

 え!? 部員!? てか…2年生ーっ!?

「仕方ありませんわ。この2人は部員と言っても名ばかりで、最後に部室ここに来たのがいつだったかすら思い出せませんもの」

「しかも国楠の奴が抜き打ちで現状確認に来た時に限っていないときた。お陰で奴めに幽霊部員扱いされて、去年は散々だったからな」

「まぁまぁ~~いいじゃないの~~久しぶりに来てくれたんだし~~」

 当の幽霊部員2名は、日々希に纏めてハグされて極楽浄土に逝っている。

 それを見ながらソニアと真紅は自分の胸の辺りを見下ろして複雑な顔をしている。

「はいはい、感激の再会はもう宜しいでしょう! 2人とも、初顔合わせですからお互いに自己紹介なさいな」

 パンパン!!と大きく手を鳴らし、ソニアが話を切り替えにかかる。

「……う~ん……もうちょっと~……」

「……あと5分……極楽極楽……」

「――貴女あなた方……」

「――いい加減に……」

「なさいっ!!」「せんかっ!!」

 阿吽の呼吸で左右からワンココンビの頭を引き剥がすソニアと真紅。

 ソニアに耳を引っ張られたポチ嬢と真紅に頭を鷲掴みにされたコロ嬢は盛大に痛がっている。

「ぐぉぉぉ!! ソニア横暴!! 鬼ーっ!! 悪魔ーっ!!」

「ぁ痛たたたたたーーーーーっっっっっ!! 副部長、たんまっ!!ギブギブ!!」

「ソニアちゃ~~ん、真紅ちゃ~~ん、程々にね~~」

 突然の阿鼻叫喚の大惨事に状況がさっぱり飲み込めない真貴と響一郎だったが、日々希が平常進行なので大丈夫だろう、多分。


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「改めて紹介しますわ。こっちが丹羽野にわのヴィクトリア」

 ポチ嬢が銀髪のサイドテールを揺らしてドヤ顔で宣う。

「ボクのことは敬意を込めて"ヴィー"と呼んでいいぞ、後輩ども」

「で、こっちが百地ももち三沙織みさをだ」

 コロ嬢が姫カットの襟足を靡かせて言う。

「アタシは"ミサ"でいいよーん☆ シクヨロ~!!」


「しかしお前たち、昨日居たのなら一緒に来れば良かったものを」

「ヤボ用もあったしぃ☆」

「それな」

「ふ、副部長っ、あまり言わないであげて下さいっ! ミサちゃ…先輩は、お父様のことでお辛いんですからっ!」

 真貴が三沙織をひしと抱き寄せ真紅に訴える。

「……辛い、とは?」

「……あ、あの、亡くなられて……」

「……いや、真貴くん? ミサのお父上はご存命…と言うか極めて壮健だぞ」

「……へ?」

「最近、転勤があって単身赴任されたとは聞いたが」

「……えぇぇぇーーーっっっ!!!」

 思わず腕の中の三沙織を見ると、うんうんと肯定するように首を縦に振る。

「ミサは"今は、居ない"とは言ったが、死んだとは一言も言ってない」

 ヴィーが何言ってんだお前とでも言いたげにしれっと付け加える。


 流石に脳内のパニックが限界を超えて、そう言えば、と先程から姿の見えない響一郎を探すと、彼は部室の隅に膝を抱えて座り込んでいた。

「……これだから女って奴は……ふ…ふふふ…もーぉ誰も信じられねぇ……ふふふふふ……」


 そちらをちらっと見たヴィーと三沙織は、小悪魔と天使が相半ばした満面の笑みで言ったものだ。

「「てなワケで、よろしくねっ、お兄ちゃん!」」


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 その夜。

 懐かしい歌に包まれながら、彼女は壁に飾られたレコードに向かって言った。

「――おやすみ、パパ」


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【特報】


 時は21世紀、史上稀に見る未曾有の災害に見舞われたこの地球を陰から狙わんと蠢く悪の帝国――

 世界を蹂躙する猛威にすべての希望が潰えたかに思われたその時、敢然とそれに立ち向かわんと戦う者が現れた!!

 彼女らこそは地球最後の希望!! 今こそ較正こうせいせよ、キャリブレンジャー!!


 きゃりぶれ! Bonus Disc『劇場版 磁帯戦隊キャリブレンジャー! -出陣!!新たなる戦士-』 実は本日完結!!


 G.W.連続公開と言ったが、完結するとは言ってない!! (コラ)

 

 ブラック、ピンクの中の人が漸く判明。


 ※磁帯;カセットテープの中国語表記

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