なっさけなぁい……そんなんじゃ成人男性失格だね(後編)


「メロスガキ……起きなさい、メロスガキ……」

「こ、ここは……」


メロスガキが目を覚ますと、そこは闇に包まれた空間であった。

果てがあるのか、無いのか、ただ無限の暗闇だけが続いている。

この闇の中でただ一つだけ白く輝くものは、

うまい具合にまろびでたメロスガキのパンツだけであった。


自分を呼ぶ声はすれど、姿は見えない。

ただ、その声が神々しく、安らぎをもたらすものであることだけは間違いない。

「ここは、あの世……お前は死んだのだメロスガキ……」

「そ、そんなぁ……」


絶望があった。

メロスガキはたしかに自分が死んだ瞬間をはっきりと覚えている。

約束すら果たすことが出来ず、無様に死んだのだ。

ああ、メロスガキよ。己というメスガキはなんと愚かなのだ。

まさか、右と左を見た後、もう一度右を見なかったとは。


「メロスガキ……お前は成人男性誘惑罪FANZA規制で地獄に堕ちる。

 お前は、地獄で永遠にウェブ小説の一話だけを投稿しては、

 なんか気に入らなくてまた新しい話を書く罰を受けるのだ……!」

「悪いけどぉ……こんなところで死んでられないんだよね……♡

 ね♡お願い♡後でまた死ぬから、今だけは見逃して♡」

馬鹿奴ばかめ!そんな話が通るか!」

「だったら……」


メロスガキは無我夢中で走り始めた。

相手は声だけしか聞こえず、実体が存在するか怪しい。

自分は死んでおり、逃げたところでどうにかなるわけではない。


それでも、走らねばならぬ。

どこへ辿り着くかわからぬとも、最期にはセリヌンティウスガキの元へ。

ここで死んだままではいられぬ。


その時、闇の中にドスドスという巨大な音が響き渡った。

メロスガキがスカートを捲り上げて、パンツで照らした先には、

巨大なる人型が待ち受けている。

その肌は青く、虎柄のパンツを纏い、頭頂部には巨大な角を有している。

地獄にて罪人を苛むという鬼か。

鬼はものも言わずに棍棒を振り上げた。


「さぁ……鬼よ!少々痛めつけても構わん!

 メロスガキを少々地獄に送り込んでやれ!」


鬼が巨大なる棍棒を振り下ろすのを、メロスガキはひょいと横について、

つつ、と棍棒を細指でなぞった。

その瞬間、鬼の青肌が赤く染まった。

その隙を見逃すメロスガキではない、

鬼の懐に潜り込んで、剥き出しの乳首を指で弾いたではないか。

パン、パン、と。

その瞬間、鬼は絶頂し、気を失った。


「め、雌餓鬼が……!」

「なっさけなぁい……でも、鬼だってあたしは弄ぶ」


大淫乱かな、メロスガキ。

大淫蕩かな、メロスガキ。

もはや、その性欲に鬼も人も無い。

目の前に立てば、誰であろうと絞り潰す性の権化である。


メロスガキは再び走った。

一寸先すら見通せぬ闇の中、

明かりは捲りあげたスカートから覗くパンツのみである。


「待て、メロスガキよ!!」

「えぇ~……あたしのこと気になっちゃうんだ♡でも、だめぇ♡」

「おとなしく地獄に堕ちよ、淫乱魔人よ!!」

「後でね♡」


メロスガキはひたすらに走り続けた。

再び、鬼が追ってくると思えば、そういうわけでもない。

時折、天からの声が聞こえるだけだ。


どれほど、走っただろうか。そのうちにメロスガキは気づいた。

天からの声が完全に消えてしまった。


ただ、闇の中に、白く光るパンツがあり、

時折、メロスガキが荒々しく息を吐く

「はぁ……はぁ……」という音がするだけだ。


永遠に走り続けられるような気のしていたメロスガキだったが、

少しずつ不安になって、足の動きが鈍っていった。

闇の中、するのはただ自分の声だけである。

自分のやっていることは、ただただ無駄なだけではないのか。

いや、無駄どころか最悪の方に動いてしまっているのではないか。

二、三歩ほど歩いて、メロスガキはその場にへたりこんだ。


セリヌンティウスガキ――アナタの友情に報いてやりたい。

悠然とアナタの元へと歩いていき、

にこりとメロスガキが来たぞ、と微笑んでやりたい。

しかし、自分は死に、出口の見えぬこの暗闇の中、どうすることも出来ないのだ。


メロスガキはとうとう、泣き出してしまった。

どうしようもない、何も残ってはいない。

最後に残された約束すら守ることが出来ないのだ。

許してくれセリヌンティウスガキ!許してくれ!

同じ地獄に堕ちることすら出来ない、謝ることすら出来ない。

永遠にこのままかもしれない、違うのだ。

ディオニスガキの言葉に従うつもりは欠片もなかった。

自分の姿を見てくれセリヌンティウスガキ、

あたしは立派に、家を出てアナタを迎えに行くはずだった。

それを事故で死に、それでもアナタのために走った。

どうか許してくれ、性行為を伴う親友同士セックスフレンドの友情は本物なのだ。

ああ、セリヌンティウスガキ。

メロスガキは大の字になって寝そべり、そして目から溢れる涙を流れたままにした。

見上げたところでやはり、闇がどこまでも続くだけである。

どこまで走ったところで、何もないのだ。


「うっ……うっ……」


どれほどメロスガキは泣き続けただろうか。

もはや、歩く気力もない。それでもメロスガキは立ち上がった。

セリヌンティウスガキは自分を信じ、身代わりになったのだ。

メロスガキは自分を信じ、スカートを手に持ってひらひらと動かし始めた。

もはや、何をしたところでどうにもならぬのかもしれない。

それでも、セリヌンティウスガキが信じた自分を信じる。

自分とは何だ、メロスガキである。

メロスガキとはメスガキである。

ならば、メスガキ然として、メスガキたらねばならない。


つまりは、年上を誘惑するのだ。


闇が火を灯すがごとくに、ほんのりと赤みを得た。

メロスガキは小ぶりな乳を揺らし、指で輪っかを作り舌を動かす。


闇がずず、と動き始めたように感じた。

メロスガキは誰に対するでもなく、囁いた。


「ねぇ……ヤラせてあげようか♡」


その瞬間、闇が陰茎の形に集約し、

メロスガキは闇のない世界の姿を得た。


闇とは世界の始まりより存在していた現象である。

つまり、メロスガキよりも歳上だ。

現象に意思は無く、性欲もなく、ただ存在するだけである。

それが世界の絶対法則ガチルールである。

そして、メスガキとは――その法則を捻じ曲げ、成人男性の情欲を煽る存在である。


世界に広がる闇を晴らしたメロスガキは、そこに河原を見た。

子供がPCやスマホでカクヨムを起動しては一話だけを投下する姿が見えれば、

年老いた老婆が亡者から服を剥ぎ取る様子も見える。


伝説に聞く、三途の川である。


「しまった……メロスガキ……」

闇を晴らした瞬間、天からの声が再び蘇った。

陰茎の形をした闇は犬のように激しく腰を振っている。


「神さまか悪魔さまか知らないけど……あたしは帰るわ……

 セリヌンティウスガキが待っているもの」

「こうなってしまっては仕方がない……帰るが良い、だが……」

天からの声を最後まで聞かず、メロスガキは走った。

どこへ走ればよいかは本能が知っていた。

すなわち人間の生きたいという本能が。


「ぐぼ」

メロスガキは蘇り、再び死んだ。

根本的に肉体がミンチになっており、どうにもならんのだ。


「メロスガキ……お前の身体はミンチ肉になっており、どうにもならんぞ」

「早く言えよ!」

「おとなしくカクヨムで投稿を始めろ、2話まで書いてもいいぞ」


天からの声を無視しながら、メロスガキは思考する。

肉体が死んでいる以上は、どうにもならない。

だが、このまま死んでいるというわけにはいかない。

セリヌンティウスガキが待っているのだ。

つまり、自身のするべきことは唯一つ。


「それでも走らなければならない」


蘇っては一ミリほど進み、メロスガキは死んだ。

ナメクジよりもよっぽど鈍い歩みである、

それでも、走らないわけには行かなかった。

友が待っているのだ、徒歩5分圏内に。


メロスガキは死んでは蘇り、死んでは蘇りを繰り返す。

そのうちに気づく。

進んでいる距離が増えている。

宙に浮いている――いや、誰かが自分を抱きかかえている。

蘇った肉体に視力はなく、ただほんの少しだけ進む力があるだけである。

確かめることは出来ない。だからメロスガキはただ祈った。

どうか、王城に向かって進んでいてくれ。


太陽は別れを惜しんで、燃える口づけを西の空に放っていた。

徐々に世界は夜の闇の中へと消える。


「メロスガキは逃げたようじゃのう」

磔にされたセリヌンティウスガキにディオニスガキは語りかける。

その目には哀れみの光を宿している。

「来るよ♡わかってっから♡」

「来ない……お前は死ぬ、哀れじゃ。

 友情に唾を吐き捨てよ。

 メロスガキを呪うが良い、代わりにメロスを殺してくれと言うが良い。

 ワシは喜んで受け入れるぞ、お前を助けてやろうではないか」

「……メロスガキは来るから♡」

ペッとセリヌンティウスガキはディオニスガキに唾を吐き捨てた。

ディオニスガキは無言でその唾を拭った。

空は赤々と燃え、終わりの時は近づいていた。


「暴君ディオニスガキ様!」

その時、衛兵が門のところから二人のもとに駆け寄ってきた。

「どうしたのじゃ?」

「そ、それが……」


王城の門には、数百人ほどの人間が立っている。

その手には、人体と思わしきパーツを持って。


「なんじゃ、貴様らは……」

「メロスガキに抱かれた者たちだ」

「なんじゃ、貴様らは……」


二度繰り返したのは聞こえなかったからではない。

意味がわからなかったからである。


ディオニスガキを無視して、

集まった老若男女は人体のパーツを人間めいて並べていく。

一瞬だけ、ゆるりとそのパーツ群は、

セリヌンティウスガキの元へと進んだかと思うと、

その動きを止め、再び動いたかと思うと、止まるを繰り返している。


「……メロスガキ♡」

セリヌンティウスガキが呟く。

「あのグロ肉がメスガキじゃと!?」

「そうです」

脂ぎった小学校教師が答えた。

「彼女はトラックに轢かれ、数百のパーツになりました。

 それでも、彼女は約束を守らんと走っているのです」

「何じゃと!?何故それがわかる!?

 いや、わかったとして……何故、奴に協力する!」


「わかりませんか王様……!?」

メロスガキがゆっくりと走る。

友情を守らんがために。


「我々は皆家族です、彼女が我々を一つの家族にしたんです。

 大穴兄妹ビッグファミリー……にね。

 彼女は、たしかにませた淫乱のクソガキ、淫売の娘かもしれません」

「ワシはそこまで言っとらんが」

「ですが、彼女の我々を愛する心に嘘偽りはなかった。

 無償の愛を彼女は分け与えた……

 だから、私達も少しは返してあげたかったんです」

「メロスガキは死んだぞ」

「ですが……約束は生きている。

 恋人の願いを叶えてあげたいと願わない家族がいますか?」


メロスガキがゆっくりとした歩みで、セリヌンティウスガキの足元にたどり着いた。

「ありがとう、メロスガキ」

セリヌンティウスガキの瞳から涙がこぼれた。

涙は風に運ばれて、燃える空へと消えていった。

日は沈んでいない、約束は守られたのだ。


暴君ディオニスガキは静かに二人のメスガキの元へと歩いていった。

彼女の靴音が響き渡るほどの静寂だった。


「メロスガキ……約束通り、セリヌンティウスガキを解放しよう。

 ワシは市民が皆、悪心を持っているものだと思っていた。

 小さい女の子の身体に興奮する

 異常性癖者だけが集まるソドムが生み出されてしまったのだと。

 だが、違ったのだな。

 皆が皆、ただ、愛しただけなのだ……」


ディオニスガキはハラハラと涙を地に落とした。


「ワシに何か報いてやれることはあるか?」

「王様……産もう」

「産む?」

「例え、一日に1000人を王様が殺したとしても……

 1500人の子供を産めば……差し引き+500になる」


セリヌンティウスガキは算数が得意であった。


「皆で乱交しよう」

セリヌンティウスガキは服を脱ぎ去った。

王城に集まった数百人の老若男女も服を脱ぎ去る。

少し恥ずかしそうに、ディオニスガキも服を脱ぎ去った。


裸の人間達を見て、少しずつメロスガキの意識は消えていき、

天へと昇っていった。


「メロスガキよ」

「なぁに♡地獄に落とすなら早くして♡」

三途の川にて、メロスガキは天の声を聞いていた。


「お前は暴君を妄執から救い、

 シラクスガキの市を……いや、世界を滅亡から救ったのだ。

 お前の罪を許そう……もう一度、人間としてメスガキとして人生を続けるが良い」

「えっ♡」

「シラクスガキの大乱交スマッシュホールブラザーズで、

 殺されたものの魂は現世で再び肉体を得ていくだろう。

 帰るが良い……お前も、元の世界へ」


徐々に意識が薄れていき、再び、メロスガキが目を覚ました時、

メロスガキは赤子の身体をしていた。

傍らには母や友がいて涙を浮かべている。

勇者はひどく赤面し、声を上げて泣いた。


死んだ者たちによく似た子どもたちは通常の数倍の早さで成長していった。

シラクスガキで失われた命はすぐに戻るだろう。

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