走れメロスガキ

春海水亭

なっさけなぁい……そんなんじゃ成人男性失格だね(前編)

メロスガキは激怒した。

必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。

メロスガキには政治がわからぬ。メロスガキは小学5年生のメスガキである。

メスガキとは淫蕩な性質を持ち、特に年上の男性を誘惑する女児のことである。

縦笛を吹き、

不特定多数の小さい女の子の身体で興奮する成人男性と遊んで暮らしてきた。

けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。


メロスガキがシラクスガキの市でミニのスカートをちらりと捲りあげ、

ひらひらと動かしては、

見えそうで見えぬパンツで成人男性を誘惑していた時のことである。

いつもなら、池の鯉の如くに寄ってくる成人男性が、今日はやたらと少ない。

太陽は西の空に溶け落ちて最後の炎を燃やし、

一日の終わりを告げる頃であったが、

それだけでは納得できないほどに奇妙に閑散としている。

よく見れば、見えるか見えないかのパンツに息を荒げる成人男性も、

その呼吸はどこか頼りないものがある。

淫蕩なメロスガキもだんだん不安になって来た。

自身のパンツで性的な興奮を覚える若い衆をつかまえて、

何があったのか、二ヶ月前にこの市に来たときは、

小さい女の子のパンツに群がって、街はにぎやかであったはずだが、と質問した。

若い衆は首を振って答えなかった。


しばらく歩いて、中年の成人男性に逢い、こんどはもっと、

語勢を官能的にして質問した。中年の成人男性は答えなかった。

メロスガキは両手で自身の小さな胸をゆすぶって質問を重ねた。

中年の成人男性は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

「王様は、人を殺します」

「えぇ~?おとなのくせになんでそんなことしちゃうの?」

「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ」

中年の成人男性はふるふると身を震わせながら応えた。

「いっぱいころしたの?」

「はい、目についた端から片っ端に。

 シラクスガキの市の人口は1/10となりました」

聞いて、メロスガキは激怒した。

当然、メロスガキは小学校の授業で分数を学んでいる。


「あっきれた♡」

メロスガキは単純なメスガキであった。

成人男性の情欲を煽る格好で、のそのそ王城にはいって行った。

たちまち彼女は、巡邏じゅんらの警吏に捕縛された。

調べられて、メロスガキの懐中からは名札が出てきたので、

騒ぎが大きくなってしまった。

メロスガキは、王の前に引き出された。


「小学生が淫猥な格好でなにをするつもりであったか。言うのじゃ!」

暴君ディオニスガキは静かに、けれども威厳を以て問い詰めた。

その王の顔は蒼白で、その身長は一般的な成人男性よりも頭二つほど小さい。

本来耳があるべき場所には何もなく、頭頂部からは狐めいた巨大な耳が生えていた。

あどけない容貌であったが、その瞳には残酷な青い炎がぼうっと灯っている。


「えぇー?わかんないのぉ?」

メロスガキは悪びれずに答えた。

「……むっ」

ディオニスガキは静かに目を閉じ、思考を巡らせた。

メロスガキが纏うのは、

とても文章には書けぬような成人男性の情欲を煽る淫猥な服装である。

その上、胸元の名札と背のランドセルが奇妙なアンバランスさを醸し出していて、

かえって成人男性の理性の天秤を大きく揺らしていた。


「市を悪い王様の手から救うんだよ?」

「おまえマジか?」

王は、絶句した。

重く湿った風が吹き、メロスガキのスカートを捲りあげる。

王城は重苦しい闇に包まれ、白いものといえばそれぐらいであった。


「仕方のないやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ」

ディオニスガキは部下に命じさせ、メロスガキの分厚いコートを着せた。

しかし、僅かにちらりと覗く生足がかえって変態めいた雰囲気を強調していた。

「乱交する?」

メロスガキが素朴な善意の言葉を発した。

「だまれ、下賤のメスガキ!」

暴君は顔を赤らめて、叫んだ。

「そういうのは……その、好きな人としかやってはいけないのじゃぞ……!

 とにかく、貴様は処刑じゃ……!磔になってから、泣いて侘びたって聞かぬぞ」


「ふぅん……」

メロスガキはコートを脱ぎ捨て、

卑猥な衣装をディオニスガキに見せつけるように小ぶりな胸を張った。

衛兵はコートを再度メロスガキに着せようとしたが、

重く湿った風がコートにまとわりついて、そのまま持ち去ってしまった。

ただ風に煽られるままに、メロスガキのスカートが舞い踊る。

「期待しちゃってぇ……でも、ダメだよ。おうさま。

 メロスガキはぁ……泣かないし、謝りもしない。 

 あたしに向けられた成人男性のおちんちんのようにまっすぐに突き進むだけ♡」


瞬間、メロスガキを取り押さえようとした衛兵の口いっぱいに血の味が広がった。

決壊したダムのように鼻血がダラダラと流れ、

自身の意思とは無関係にその陰茎は膨れ上がっていた。


普通の成人男性なら小さい女の子の誘惑に反応するはずがない。

これは日本の法律にも定められた真実ガチ道理ルールである。

そして、メスガキとは――その道理を捻じ曲げ、成人男性の情欲を煽る存在である。


「お、おとなが……こんなガキに……興奮するはずが……」

口では吠え立てながらも、

衛兵は解き放たれんとする股間の怪物を押さえるのに必死であった。


リリスにサキュバス、

淫魔と呼ばれる存在の語源がメスガキであることは言うまでもない。

メスガキがなまりリリスガキがリリスに、サキュバスガキがサキュバスになった。

神話の真実とはメスガキであるのだ。

そして今、蘇った神話は衛兵を勃起せしめた。

恐るべき、メスガキ。

余談ではあるが、日本の神話、そして歴史においても、

アマテラスガキ、アマノウズメスガキ、

オダノブナガキ、トクガワイエヤスガキが確認されている。


桃色R-18のハートマークが浮かんだメロスガキの瞳が、

官能的に潤み、ディオニスガキを見た。

ディオニスガキは憫笑し、己の手をメロスガキに向けた。

不可視の糸に絡め取られるかのように、宙に浮かび上がるメロスガキ。


「どうじゃ、メロスガキ……暴君の名は伊達では無いぞ?」

「あっ……あっ……あっ……あっ……」


暴君ディオニスガキ、

彼女の二つ名は暴虐から来るものではなく、その圧倒的な念動力に由来する。

100年前の戦争において、当時80歳のディオニスガキは

敵軍勢10万人を孤軍ソロプレイにてねじ伏せて、その念動力で土下座させた。

通称、生殖可能カノッ年齢差凄絶の屈辱事件。

周辺諸国を震え上がらせて勝ち取りしは100年の平和。冠せしは暴君の名。

そして100年の平和に終止符ピリオドを打つのもやはり暴君セルフサービス


命乞ごめんなさいをするのじゃ!メロスガキ!

 すっかり遠くなってしまったワシの耳にも届くようにのォーッ!!!

 そうすれば、道徳の宿題を毎日出すだけで許してやるぞ!?

 成人男性を挑発する暇などは与えん!

 放課後は延々とたかし君の気持ちを考えさせてやるわァーッ!!」

「ま……曲げられない……!道徳教育でも……あたしの本能は……!!

 食欲!睡眠欲!小さい女の子に興奮する成人男性を挑発する欲求!

 それを曲げるぐらいなら……死ぬ以外にない!!」

「よう言うたメロスガキ……殺してやるわ!

 磔にして、雀の餌にしてやるのじゃ!」

「けど……待って……殺されるのは仕方がない……

 けれど……もしもあたしに情けをかけるならば……

 処刑までに三日間の日限を与えてください。

 今日の晩ごはんはエビフライで、明日はカレーなんです……

 食べたら処刑されに戻ってきます」

「夕飯済ませてから殺しに来いよ」

メロスガキはメスガキと言っても、あくまでも小学五年生の女児であった。

好物のエビフライとカレーだけは食べておきたいのだ。

暴君は嘲るように言葉を続けた。


「とんでもない嘘を言う奴じゃ、ワシはかつて大学の必修単位を逃した。

 だが、待っているだけでは結局返ってこなかった、

 結局翌年も講義を受けることで単位を取り戻すことが出来た。

 逃したものは、自分の手で取り戻す他にないのじゃ。

 お前は帰ってくるというのか?」 

「あったりまえじゃん♡あたしはお兄ちゃんとの約束を破ったことないよ♡

 でも……もしも信じられないなら……

 この市にセリヌンティウスガキというあたしの無二の親友共通の竿を使用した関係がいるからぁ……

 あの子を人質として置いて行くね♡もしもあたしが逃げてしまって、

 三日目の放課後までここに帰ってこなかったからぁ……なにしてもいいよ♡」

それを聞いて王は悲しい気持ちになった。

生意気なことを言う奴じゃ。どうせ帰ってこないに決まっている。

そして哀れにも親友に裏切られた小娘だけが残る。

やはり、人類は滅ぼす他にないのじゃ。

じゃが、幼い小娘が無い知恵振り絞ってやったことじゃ。

人類が滅ぶまで家族のもとで過ごす時間ぐらいは与えてやろう。


「願いを、聞いた。その身代わりを呼ぶが良いのじゃ。

 三日目には日没までに帰って来い。一分でも遅れたらその身代わりは殺すぞ。

 期限切れのレポートを受け付けない教授のように、ワシは時間に無慈悲じゃ。

 じゃが、身代わりの命を以てお前の罪は許そう。

 せいぜい、ゆっくりと家族との時間を楽しむが良い……

 待ち合わせに遅れるほどにのう」

「あは♡んなわけないじゃん」

「命が大事なら遅れて来るのじゃ、子供のやることじゃ。許してやろう」


メロスガキは口惜しく、地団駄踏んだ。

挑発の一つも返してやりたくなった。

メロスガキの親友シスター、セリヌンティウスガキは隣に住んでいた。

王城の兵士が時折姿を消していた理由をディオニスガキは今、知った。

セリヌンティウスガキは栗の花のような臭いをむんと放っていたが、

女児の甘ったるい体臭と相まって奇妙な色気を放っていた。

暴君ディオニスガキの面前で、メスガキメスガキは□なった。

言葉はいらなかった。同じ向きを向いたパズルのピースもハマるときはハマるのだ。

セリヌンティウスガキは暴君の念動力によって、磔にされた。


「ただいまー」

メロスガキは家に帰った。

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