第66話(魔法の開発)




イルマは、ナミノ教官から今年養成所に入った貴族についてどうするのか考えながらカガリが待つ研究室に向かっていた。



………貴族か。

ナミノ教官から注意を受けたけど、……どうやって注意しようか?貴族に目をつけられないようにすることが一番のは分かっているけど、それだと何かと面倒だし不自由だ。

ナミノ教官は、力が及ぶ限り力になってくれると言ってくれたけど、負担を掛けるのは気に止むし、何処まで力が及ぶか分からない。

後は、こんなことを相談出来る人って……………




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うん?ならアタシが力を貸してやるよ。」


「えっ!?……貴族ですよ?カガリ先輩は、貴族相手にどうか出来る力があるのですか?!」



イルマは、あれから貴族相手の対策を考えていたらカガリの魔法の研究室に到着したので、一応カガリにそのことを相談してみたら、まさかカガリが貴族相手に何かあれば力を貸してくれると即答で言ってきた。



「カガリ先輩。幾ら先輩でも貴族の相手は出来ないのでは?」


「………力だけでは権力の相手は出来ない。」


「そうだぜ先輩!どうやって貴族相手に力を貸してくれるんだよ?」


「あれ?言ってなかったっけ、アタシはこれでも貴族の一員なんだよ。親が伯爵だから、伯爵の娘のアタシは大抵の貴族相手でも力になれるんだぜ?」


「「「ッ!?え、え~~ッ!?」」」


「……………聞いてませんよ。そんな話。」


『ビックリです!!まさかカガリさんが伯爵の娘で貴族だなんて!』



イルマ達は、カガリのまさかのカミングアウトに全員が驚きを見せる。イルマは、内心は驚くもメラ達の驚きの反応が大きくて声を上げることなく、代わりにカガリに小さい抗議の声を上げる。



「ゴメンゴメン。でも、言っても別に何も変わらないだろ?聞かれなかったし、必要無かったから言わなかっただけだからな。だから、貴族相手に何もあれば教官に言うのもアリだけど、アタシに相談してくれたら力を貸してやるよ。」


「………ホント、ビックリしたわ。……カガリ先輩が貴族だなんて。」


「でも、これで貴族相手に心配が1つ減った。」


「そうだな!これで、貴族相手に色々心配しなくてもいいな!」


「駄目だよダン。初めから教官や先輩の力を宛てにしたら。一番良いのは貴族相手に揉めないことには変わりがないんだから。」


「だけどよ~イル~マ、それだと話が振り出しに戻って、貴族相手に気にして不自由なままだぜ?」


「うっ、……それは他に又何か対策を考えるよ。」


「イルマの言う通りだぜダン?確かにアタシも力を貸してやるけどな、一番良いのは貴族相手に揉めないことだし。まぁ、他にも何か対策を考えてそれでも貴族相手に揉めたらアタシにも相談しな。」


「はい。助かります先輩。教官以外にも助けてくれる人がいるのは心強いです!対策を考えますけど、どうしても駄目な時は宜しくお願いします。」


「おう!任せな!」


「はぁ~っ結局、貴族相手に揉めない対策を考えないといけないのかよ~~」


「はいはい、ダンの気持ちも分かるけど今回の場合は仕方ないわ。相手は貴族だから、イルマの言う通りに揉めないように対策と揉めた場合の両方の対策を用意しとくには越したことはないわ。」


「……対策を考える、対策を行うのは面倒くさいけど、貴族と揉める方が面倒くさい。」


「ははは。まぁ、色々考えるよ。(……それにしてもカガリ先輩が貴族だったなんてね。確かにこんな研究室を普通の生徒が用意出来たと思えないから、貴族って聞いて納得したな。)」



結局イルマは、貴族相手に揉めない方法を考えることになり、揉めても教官以外にもカガリの力を宛てに出来るようになった。



「貴族の話はもういいか?そろそろ魔法の開発の話をしたいんだが?」


「あっ、すみません。はい、大丈夫です!魔法の開発ですよね?昨日は確か、魔力の物質化についてまでの話や実験したんでしたよね?」


「そうそうそう!それで魔力を圧縮して物質化までは出来たんだっけ?」


「それとその呪文の詠唱もですよ。」


「……後はその物質化した魔力に属性を付けたら一応完成。」


「そうだそうだ!後は属性を付ける処まで出来ていたな!ク~~ッ、やっぱり魔法の開発を手伝ってくれる奴がいたらスムーズに進むな!!あっ勿論、手伝ってくれているお前達が噂以上に優秀なことも大きいぞ!」


「もっと褒めてもいいですよ先輩。約束は、魔法の開発後の魔法のデータ集めの手伝いの約束だったのに、結局魔法の開発まで手伝いをさせられているのですから。」


「確かに約束とは違うよね~~?これは報酬の上乗せかしら?」


「あ~~!!~~だから貴族相手に揉めた時は力を貸してやるって言っただろ?!」


「……それはそれ。報酬の上乗せを希望する。」


「そうだぜ先輩?いいだろ先輩も得しているんだからよ。」


「分かった、分かったよ!……達の悪い後輩だな~先輩をタカるなんてよ~」


「「「何か言いました(言った)(何て)?」」」


「~~何も言ってね~よッ!!」


『……先輩相手でも容赦無いですね皆さん。』



約束以上に手伝わせるカガリにイルマ達は、貴族から絡まれた時は力になってくれると言ってくれたがそれはそれと言って、先輩相手にも容赦なく報酬の上乗せを要求するのであった。



その後、イルマ達は魔法の開発の残りである物質化させた魔力に属性を付けることに成功したが、その魔法の武器の出来に不満を抱く。



「……………」


「……………」


「……………」


「……おい、何だよこの沈黙は?!」


『確かに静かすぎます!どうしたんですか?折角物質化させた魔力に属性を付けることを成功したのに。』


「違ーう!!アタシが作りたかった魔法はこれじゃなーい!!」


「……そうですね。これだと、技能≪魔刃≫に属性が付いただけな物ですもんね。」


「確かに。これだと、魔法使いが属性武器を持って接近戦を戦う形になるだけだから、魔法使いの弱点である接近戦を克服したことにならないわ。」


「………やり直し?」


「アァーーッ!?振り出しに戻るのかーー!?折角此処まで開発したのに!!」


「カガリ先輩仕方ないわ。これだと余り意味が無い魔法になるもの。」


「……そう、しかもこれだと技能≪魔刃≫の方が使いやすい。」


「そうだよね。……何かコンセプトが魔法の開発に抜けていたかな~~?魔力を呪文で物質化した後に属性を付加して…………あれ?何か引っ掛かる?何だ!?………………………………………付加?……そうだ!!付加だ!!~~なんで気付かなかったんだー!?」


「ッどうしたイルマ?何か気付いたのか?」


「どうしたのよ急に大声を出して?」


「カガリ先輩!メラ、シーラ!付加だよ、付加!」


「……付加?……付加の何を気付いたの?」


「魔力の物質化に属性を付加で付けるのもいいけど、他にも付加出来ないかな?!そう、例えば技能をさ!!」


「「「ッ!?」」」


「どう?出来ないかな?!属性じゃなくて、技能を圧縮して物質化した魔力武器に付加出来たら、技能によるけど接近戦の弱点を克服出来る部分があると思うんだ!!」


「な、なるほど。……確かに出来る可能性があるな。………しかし、よく気付けたなイルマ?」


「そうよイルマ!お手柄じゃない!!」


「やってみる価値有り。」


「いや~それほどでも~。」


「(………俺達空気みたいな扱いだな~。いや、聞かれても全然分からないけどさ!でも、俺達のこの扱いは……うっう。)」


『(……確かにダンさんの言う通り、私達空気です~しくしく。)』



失敗になりそうだった魔法の開発にイルマは、新しい可能性とカガリやメラ達からの褒められたことで上機嫌になるイルマ。


カガリやイルマ達だけで盛り上がっているのに、ダンとミルンは話に着いてこれないことと話を振られないことから完全に空気な扱いを受けていた。しかし、そんなダンとミルンの嘆きは誰にも届かずにいた。




その後ダンとミルンは放置されたまま、カガリとイルマ達だけで話は盛り上がり、イルマが出した案で実験を行った結果………



「で、出来た。」


「……魔力で出来た武器に技能を……付加出来た……」


「………カ、完成、完成したのか?」


『うわぁ~!!全ての魔法武器から魔法だけでなくて技能の力を感じます!!あっ!こっちはメラさんの≪魔力活性≫、こっちはイルマさんの≪腕力強化≫ですね!』


「…………ありがとう。……ありがとうッ!!イルマッ!!これだよ!!アタシが開発したかった"魔力武器生成魔法"は!!ーーーそれが今!目の前にある技能の力を付加された武器達がそれだーー!!アハハハハーー!!」



見事圧縮して物質化した魔力に付加魔法で、技能を宿した魔力武器を完成させるのであった!


それが皆の目の前にはその技能を宿した魔力武器達が一杯転がっていた。その新しい魔法が生まれた光景に、メラ達は感動しており、ダンもメラ達からこの魔法について説明を受けては驚愕する。そしてカガリも頭に描いていた魔法の実現に感情を爆発させていた。



………魔力で出来た武器に技能を付加する。凄い!!結果的にこの魔法は、高度な≪魔力操作≫≪魔力放出≫≪付加魔法≫が習得しているのが必須な魔法になったけど、今までの魔法使いの常識を覆す魔法になったぞ!?


この魔法は、魔法武器を一時的にとはいえ生み出す。その生み出した魔法武器は、付加された技能によっては様々な能力を秘めていて、付加された技能によっては魔法使いの弱点を克服出来きる。………何て魔法を開発したんだ僕達。



イルマも、完成された魔法の真価を想像しては感動と驚愕の気持ちになっていた。


暫くは完成した魔力武器生成魔法に呆けていたイルマ達。そして、時間が経ち全員が正気に戻った後はこの魔法を習得してからこの魔法について調べるのであった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



その後イルマ達は、カガリとともに魔力武器生成魔法を開発に成功してからは、魔力武器生成魔法の習得と調査の日々に明け暮れていた。


そして、イルマ達とカガリは魔法の習得と(この時、イルマとシーラは、付加魔法も習得する)調査を終了する。



「あんたら、ありがとな!お陰様で無事に魔力武器生成魔法を開発出来たわ。」


「いえ、僕達もこの魔法開発を手伝えて楽しかったです!」


「それに先輩の魔法技術も教えて貰えたしね!」


「俺は先輩の魔法を受けて、その効果を調べるだけだったけどな~」


「……ブツブツうるさいダン。……後は、報酬の疑似融合魔法と報酬の上乗せ分ですね?」


「ゲッ?!まだ上乗せ分について覚えていたか?!……………はぁー、まぁいいかそれぐらい。こっちの手伝ってくれた魔法の価値から考えたらな。」



「(……よし!言質は取った!!)」グッ!


シーラは、カガリの発言に拳を握る!



「はは。それじゃあ先輩。この後は、僕らの指導を宜しくお願いします。」


「「お願いします!!」」


「俺は暇だけどな~~」『私もです!』


「はいよー!なら先ずは融合魔法に使う魔力の質の変化からだな………」



イルマ達は、無事にカガリのお願いである魔法開発を完成させた後、報酬である融合魔法をカガリから教えて貰うのであった。






【イルマ達が融合魔法を覚える間のダン達の様子】


ーーちなみにカガリは、報酬の上乗せで暇していたダンに使える無属性魔法を1つ教えるのであった。



「……えっ!?俺が魔法ッ!?ヤホォーーイ!!」


『あっ!?これで暇なのは私だけッ!?ウ~~ッ!ダンさんの裏切り者~~ッ!』


「どんな魔法を教えてくれるんだ!?カガリ先輩!!」

(ミルンの声は届いていない。)


「まぁ、それは楽しみに待っとけ。それはイルマ達の融合魔法が教えがすんでからな?」


「~~ッ!(待ちきれないぜ~!!)」



魔法を1つだけとはいえ、カガリ先輩から自分でも使える魔法を教えてくれると聞いたダンは、自分が魔法を使えるようになることに興奮を隠しきれず、カガリからの魔法伝授の時をウズウズして待っていた。



『ウ~~!!私だけ仲間外れです~~!!』



そしてミルンは、イルマ達から1人だけ仲間外れにされて怒っていた。結果、そのミルンの怒りは取り憑き相手であるイルマが後日受ける羽目になるのであった。



「何で僕だけ~~~!?」


後日、イルマの不満の声が響くが誰も助けてはくれなかった。

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