第36話(イルマの悩み・メラの過去)




《ハイ・イート・トレント》討伐作戦を実行することを決意したイルマ達。


ダンジョン探索やダンジョンボスとの戦い等してきたイルマ達は、一度安全であるダンジョンの核の部屋で休みを取ることにした。














イルマの固有技能【メニュー】から荷物を取り出し、テントや、食料等広げて食事をしたり、少し談笑するイルマ達。


そして、《ハイ・イート・トレント》討伐に向けて体力回復の為、寝ることにしたイルマ達。


寝るイルマ達、その中から1人その場から離れていく影があった。

























……この作戦で本当に大丈夫だろうか?……



皆から離れて1人になってイルマは、何度も頭の中で作戦をシュミレーションを行う。


そして、シュミレーションでは上手くいったとしても、現実では上手くいくのか?他に作戦はないか、この作戦で本当に大丈夫か?っと頭にはそれが何度も過る。


もし、この作戦が上手くいかない場合は、村や皆、家族を危険な目に合わせると思うと次々に不安が募る。


皆の前では、強気を見せていたイルマは、いざ1人でいると弱気になってしまう自分に更に不安が募る悪循環に陥っていた。












「イルマ。」


バッッ!



イルマは、1人でいたはずなのに、背中から自分の名前を呼ぶ声がして、驚き勢いよく振り向く。振り向いたらそこにいたのはーー



「メラッ!?どうしてここにッ!?」


「それは、こっちの話よ!あんたこそ、ここで1人になって、何を考え込んでいるのよ?」


「えっ!、えっえ~っと……何をって……」


「……はぁーっ、どうせまた、先のことを1人で考えていたわね。」


「えっ!何で、…何で分かるの?」


「あのね~!私達から離れて!1人で暗い顔をして!そんな難しい顔をしてたら分かるわよそりゃ。」


ー私達幼馴染みなのよ。悩んでいるか悩んでないかぐらい顔を見たら分かるわよ!ー



メラはイルマに悩んでいることを一目でバレて驚いていた。

メラは、作戦実行するっと決めた後でもイルマが時々悩んでいる様子に気づいていた。


イルマがその悩んでいる様子を気づいたメラは、イルマをその後も気にかけていた。


そしたら、皆で討伐に向けて休む際に、イルマが1人気づかれないように離れていくのに気づいたメラは、そのイルマの後を追いかけて行った。それが先ほどの声をかけるに繋がのであった。




「……で、イルマは何に悩んでいるのよ?」


「……、笑わない?」


「内容次第よ!」


「なっ何だよそれ?内容次第じゃあ笑うってことじゃないか!」


「いいから言うの!!」


「………、作戦が上手くいくのかいかないのかずーと不安で悩んでいた…………」


「………プッ、プッハハハーーーッ!!」


「~ッ!笑うなよッ!!真剣な話だよッ!!」


「ハハハッ!………ハハ、だっだって~あんたそりゃ~そんな下らない内容で悩んでいたら笑うわよ~プッ。」


「くっ下らないッ!?」


「だって~、そんな当たり前のことを1人で悩んでいたら笑うでしょ?」


「当たり前!?……この作戦が上手くいかないと皆が、村の人や皆の家族が危ないのに悩んでいたら何処が悪いんだよッ!!」


「……だって、イルマが言ったじゃない?昔、私に1人で悩まずに相談しろって。」


「………っあッ!」


「……思い出した?私が当時、ー何も出来ないことに悩んでいた時にイルマが声をかけてくれた時のことを。」


ーそう、昔の私は魔法を覚えるまで周りの子供達と比べて何もないって悩んでいた時のことをー















それは、メラが、当時7歳の頃、まだ魔法を覚えていないの時のこと……、



<<……何なのよッ!?、もうッ!?>>



メラはあることに悩んで、荒れていた。




<<"メラって何ができるんだ?""メラちゃんは何が出来るの?">>


<<ッ!?私は…………………>>



メラは、当時同じ村の子供達から得意なことがないの?って質問された際に何も答えることが出来なかった。


当時のメラは、まだ魔法を覚えていなくてイルマ達と比べ、自分が何も突出した物が無いことに悩んでいた時に村の子供から悩んでいたことを突きつけられた質問をされ、何も答えることが出来なかった自分に苛立っていた。


当時から、他の子供から見てもイルマの能力は突出しており、ダンも同年代と比べて身体が大きく、シーラも知識に関しては周りを驚く程に知っていた。


そんな中、イルマ達の中で何も突出した物を持っていなかったメラは、そのことを悩んでいた。



<<クッーーッ!、何で私には何もないのよーーッ!>>



メラは、誰にもその悩みを相談せずに1人で悩んでいた………その時!



<<メラ>>


<<ッ!?っい、イルマ?、何でいるのよ?>>


<<メラがずーと悩んでいたから、気になったから。>>


<<ーーッ!……何よ!私達の中で、私だけ…4人の中で私にだけ何も突出した物が無いことに悩んでいたら悪いッ?>>



メラは突然現れたイルマに悩んでいた所を見られて、自分の悩みをイルマにぶつけるように叫ぶ。



<<あるよ>>


<<何がよッ!?>>


<<メラにも得意なことがあるよ。メラが気づいていないだけでメラには僕ら処か、大人にも負けない程の才能を持っているよ>>


<<何言っているのよ?それが無いから悩んでいたのにッ!デタラメ言わないでよ~グスッ、ウ……ウ…>>


<<ッ!………メラ、そんなことないよ。>>メラにも得意な所はあるんだよ?


<<何でイルマにそんなことがわかるのよッ!?>>


<<わかるよ僕には固有技能があるからね>>


<<……えッ!?………、固有技能……?ってあの固有技能?英雄クラスが持つと言われているあの固有技能?……、嘘よ!そんなデタラメ信じないわッ!!>>


<<嘘じゃないよ>>


<<嘘よ!>>


<<ほら、これが証拠だよ>>



イルマは、自分の話が嘘じゃない証拠に、メラに見えるように固有技能【開示】を発動し、【ガチャ】以外の技能≪隠蔽≫を使ってないステータスをメラに見せる。



<<……何これ……ステータスが表示されてる。……嘘、本当にイルマに固有技能がある……>>


<<ステータスが表示されているのは固有技能【開示】の能力だよ?【開示】には、鑑定の能力があって、技能≪鑑定≫より詳細に物や人等のステータス情報を開示する力があるんだよ。>>


<<さっきの話で、メラにも才能があるという根拠も、この固有技能【開示】なんだ。僕の固有技能【開示】がメラには才能があるって教えてくれているから……メラ、安心してよ>>



イルマは、泣き顔のメラに安心出来るように優しく声をかける。




<<メラには、誰にも負けない才能があるんだよ>>


<<それは、僕が保証する。>>



ウァーーーンッ!!、ウァーーッ!!


ウ・ウ、ウーー!






メラはイルマの言葉に堰が切れたように泣き出す。

イルマは、そんなメラに何度も大丈夫大丈夫と優しく宥める。


メラはイルマの言葉に、ずーと悩んでいた悩みが、大きな重みが無くなる感覚を覚える。



思いっきり泣いたメラは、イルマに照れた様子を見せる。

イルマは、メラのそんな様子にメラはもう大丈夫と思い、安心する。


そして、泣いてたメラが落ち着いたのを見計らい、イルマはメラにある提案を持ちかける。



<<メラ?魔法を覚えてみない?>>


<<ま、魔法?>>


<<うん。魔法。>>


<<何で魔法?前にイルマが魔法を見せてくれた時に教えてって言った時は、危ないから駄目だって言って教えてくれなかったじゃない……>>


<<あれは、今よりメラも幼かったし、まだ魔力も少ない時だったからね>>


<<そうかもしれないけど、……何で今?……それに何で魔法なの?>>


<<それは、メラに魔法の才能があるからだよ。>>


<<私に魔法の才能がッ!!>>


<<うん。それに今なら簡単な魔法ぐらいなら大丈夫と思うし、……どうだろうメラ、覚えてみない?>>


<<覚えるッ!!イルマ!私に魔法を教えてッ!!>>



イルマはメラの言葉を聞き、メラに簡単な魔法を教えながら、自分の技能≪魔力操作≫で、メラの体内にある魔力を操作する手助けを行う。


すると、短時間で、メラは≪火≫の初級魔法をイルマの手助けがありながらだが、魔法の発動に成功するのであった。


魔法の発動に成功したメラ。今度は、嬉し涙を流しながらイルマにお礼を言って喜びを露にしていた。



<<どうメラ?悩みを相談して、メラの悩みは解決した?>>


<<う、うん。イルマのお陰で私の悩みは解決出来たわ。>>


<<なら良かった。………メラ、悩んでも良いけど、悩みは1人で抱え込まないで。1人で悩み込んでしまったら心配だし、危ない。>>


<<う…うん、……でも、悩みを人には中々打ち明けれる物じゃないじゃない……>>


<<それはその通りだと思う。でも、メラが悩んでいたら僕も何にメラが悩んでいるのか悩むし心配もする。勿論ダンやシーラ、メラの家族もだ。>>


イルマの言葉に、メラは罰が悪い顔をする。



<<それに、1人で悩んでいても解決出来ないことでも誰かに相談することで解決出来ることもある。今回がそうだったろ?>>


<<ウッ!……そうね>>


<<だから、相談して欲しい!メラの悩みが迷惑とも思わないし、解決出来なくても一緒に悩むことで負担が悩みが減ることも出来るから!>>


<<……、わかったわ。今度からは皆にも相談するわ。>>


イルマは、メラの返事に良かったっと笑顔を見せる。




「あの時、イルマは、私に1人で悩むなと言ったわ!そんなイルマが1人で悩んでいたらおかしくて笑うわよ!ちゃんと私達にも相談しなさいよ………ちゃんとイルマの話を聞くわよ、私達幼馴染みでイルマのパーティーよ。イルマの悩みは、私達の悩みでもあるんだから!」



イルマは、メラの昔の話を聞いて反省する。

自分がメラに1人で悩むなと言ったのに、当の自分が1人で悩んでいたら世話がない。


イルマは、メラに謝罪し、反省してメラに悩んでいたことを相談するのであった。


そして、悩みを相談したイルマは、悩みが、不安が小さくなっていることを実感する。


改めてイルマは、メラに感謝して《ハイ・イート・トレント》討伐に向けて身体を休める為に、メラにおやすみと伝えて寝るのであった。













寝るイルマを見るメラ。

寝るイルマを見ながら、メラは昔イルマに救われたことを思い出し馬鹿っと溢す。



「あんたが悩んでいたら、……私は悲しいのよ。もっと頼っていいのよ?イルマがリーダーだから責任や不安を1人で抱えるのはわかる。……でも、私はあんたに頼って欲しいの。だって……私はあんたのことが……」



メラは寝るイルマをずーと見て、そう言葉を漏らし、最後まで言葉を言わずに自分も《ハイ・イート・トレント》討伐に向けて身体を休めるのであった。

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