第33話(ダンジョンボス)





ダンジョン攻略に向けて行動するイルマ達。

やっていることは先までと同じことだが、探索中もイルマ達は、目の前のことだけではなく、どうすれば《ハイ・イート・トレント》討伐出来るか、全員で相談しながらダンジョンを進んでいた。




《ハイ・イート・トレント》の討伐方法をイルマ達が相談していた内容だが、


ダンが【やっぱり、木だから火で攻めるか?】と言うと、


メラは【森の中よ?】森に火が燃え広がることを懸念した発言で返す。


イルマは【でも、燃え広がらないようしたら、実際効果は高いと思うよ?】とダンの意見に注意点を上げて賛成する。


シーラは【他にも《ハイ・イート・トレント》の技能≪魔物誘引≫で来る魔物達の対応は?】と他の問題点についても話題に挙げる。




そうして《ハイ・イート・トレント》討伐方法について、ダンジョン攻略しながらもイルマ達は真剣に相談し合っていた。


そんなイルマ達だが、それでも周りの注意を怠らずに警戒もしており、だから今のこのダンジョン内で少数の存在している魔物達が時々自分達に近寄って来る存在を見逃さず、きっちりと倒すのだった。













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






そうして、イルマ達がダンジョンを進んでいると、大きな猿の模様が描かれた4Mにもなる巨大な扉がイルマ達の目の前に聳え立っていた……。



「……イルマ。これって……」「……この扉っは!?」「……うん。この扉は……イルマ」「……皆の想像通りだと思う」



≪ゴクリ≫



イルマ達は、目の前の扉の意味を察しては息を飲む。



「この扉は……………"ダンジョンボスの扉"だ」



そう……目の前の扉は、ダンジョンの核に繋がる前にあるダンジョンボスへの扉だったのだ。





ダンジョンを攻略していたイルマ達は、生まれたばかりなダンジョンと余り魔物がいないこともあり、早くもダンジョンボスがいる扉の前迄探索が進んでいたのだ。


そんなこともあり、イルマ達は何の問題もなくダンジョンを探索出来ていたが、流石に"ダンジョンボス"が相手だと息を飲んで、緊張をした様子を見せた。


そんな緊張していた時、イルマは"扉の模様"を見てはに気づいた。

そして、イルマは皆にその気付いたことを伝える為に声を掛けた。



「ねぇ、皆。このダンジョンボスの扉に描かれた模様、多分………この先のボスの魔物を表しているんだと思うだけど」


「えっ、この扉の模様?……猿の模様のこと?」


「ってことは…、この扉の向こうにいるダンジョンボスは、猿の魔物ってことか?」


「猿の魔物……、"モンキー・ウッズ"?」


「シーラ、それは流石にないだろ?」


「そうよシーラ。"モンキー・ウッズ"は弱いから群れで行動する魔物よ。猿の魔物って言っても"モンキー・ウッズ"がダンジョンボスとはとても考えられないわよ」


「…………そんなこと知っているもん。冗談。冗談を言っただけだし」カァア!………プイ!


素で間違えてしまったシーラ。そんなシーラは、ダンとメラの指摘で自分の間違いに気付いて顔を赤くして照れた様子を見せた上で、冗談と言っては誤魔化そうとするが誤魔化しきれず、シーラの照れた様子に気づいたダンとメラは………


「…………ッ」


「「………シーラ」」

───ニヤニヤ


普段余り見ない照れた様子のシーラに、ダンとメラの2人は顔を合わせてはニヤニヤと笑い出した。イルマは顔が笑いそうになるのを堪えたことで無表情になる。



「ふふふ、シーラ。照れない照れない!」


「そうだぜシーラ?間違いは誰でもあるぜ?……クク……」


「(………っく、堪えないと………!)」


「そうよ。ボスが猿の魔物と聞いて、単純に有名な猿の魔物の"モンキー・ウッズ"と思う間違いなんて誰でもあるから……プッ」


「ッ!!────────────フンッ!」


「「「ッ!!………クッ、あはっはは、はははーーッ!」」」


そして、シーラはダンとメラの2人にからかわれて、更に顔を紅くして拗ねた。

そのシーラの様子とダンとメラの言葉に、黙って無表情で笑いを堪えていたイルマも流石に堪えきれずに笑い声を漏らす。


ダンとメラから笑われてからかわれていたシーラだが、そこにイルマにも笑われたことで、余計に機嫌を悪くなるのであった。













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


機嫌が悪くなったシーラに対し、からかい過ぎたダンとメラに笑ってしまったイルマもシーラに謝り、その事でシーラはブツブツと文句を言うも最終的には機嫌を何とか治した。



………そういえば、いつの間にかダンジョンボスを前にして皆の緊張が解けていい空気になっている。これなら安心してダンジョンボスに挑めるぞ!シーラには悪いけどナイス間違い!



シーラの間違いのお陰で、ダンジョンボスを前にしていた緊張が解けて自然体になった皆を見てはイルマはシーラの間違いに感謝する。


………勿論、その事はシーラの機嫌が再び悪くなるのは目に見えているので口にしないが。


そして、話をダンジョンボスに戻る。


ダンジョンボスに挑むに最適な精神状態になったこともあり、イルマはダンジョンボスについて自分の考えていた予想を皆に伝えた。


「皆、多分このダンジョンの状態を考えると、そんな強い魔物がボスとは想像出来ないから、ここのダンジョンボスは"モンキー・ウッズ"の上位魔物である、"モンキー・バロン"と思う」


イルマはダンジョンの状態から、ここのダンジョンボスの正体を予想する。

そのイルマの予想を聞いたメラ達は、自分達が知っている"モンキー・バロン"の情報と自分達の力を比較し、4人で力を合わしたら勝てるかと計算した。


「「「………コク。イルマ、俺たち(私達)なら勝てる(わ)(ぞ)!」」」


「………うん、そうだね。よし!皆扉を開けるよッ!」


"モンキー・バロン"と自分達の力を比較し、4人で力を合わせたらた勝てると思ったイルマ達は、皆で勝てると言葉にして顔を合わせ頷く。


そして、イルマ達はダンジョンボスに繋がる扉を開けて中へ入っていく。

















◆◇◆◇


ダンジョンボスに繋がる扉は、イルマが扉に手をかけると4Mあると思えない程軽く、その大きな扉は簡単に開いていく。



ゴオォーー、ゴオォーー、ドンッ!



ダンジョンボスの扉を開けたイルマ達。


扉を開けた先には、大きな広場が広がっており、その真ん中には大きな腕と大きな身体をした猿の魔物が堂々とイルマ達を待ち構えていた。


グルル…。グアァーーッ!


猿の魔物であるボスは、扉を開けたイルマ達に向かって大きな声で唸る。

しかし、そんな唸るボスに動じないイルマ達。動じないイルマ達だが、それよりも素早く戦闘態勢に移る。

そして、イルマはボスの情報を知るために固有技能【開示2】で、ボスのステータスを視る。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



"ダンジョン"・モンキー・バロン


レベル35


技能…≪ダンジョンの加護≫≪剛腕≫≪衝撃吸収≫≪跳躍力≫



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「(うん?名前に"ダンジョン"が付いてる。それに、技能に《ダンジョンの加護》?どういうことだろ?……もう少し詳しくステータスを視てみたら分かるかな?)」



固有技能【開示2】で視たボスのステータスに、名前と加護にダンジョンが付いていることに疑問を持ったイルマは、その気になった部分を集中してもう一度詳しくステータスの情報を視た。



【ダンジョン・モンキー・バロン】

ーダンジョンが産み出した"モンキー・バロン"と同種の魔物。

ダンジョン内限定で存在することが可能で、ダンジョン内のみ能力値が上昇する能力を持つ。


【ダンジョンの加護】

ーダンジョンが産み出した魔物に与えれる加護。

加護を授かった魔物は更に強くダンジョンから支配されるが、ダンジョンの核から魔力の供給だったり、能力が向上する。



「(つまり………あのモンキー・バロンは、ダンジョンが産み出した特別製の"モンキー・バロン"であり、ダンジョン内しか存在することが出来ない代わりに強く、更にダンジョンの手駒として強く支配される代わりに強くなったってことか)」


《ダンジョン・モンキー・バロン》………長いので次からは《モンキー・バロン》と呼ぶことにする。


もう1度詳しくダンジョンボスである《モンキー・バロン》のステータスを視たことでイルマは、抱いた疑問が無事に解けた。

それで得た情報を基に、イルマは戦闘中なこともあり素早く戦い方を考えた。


そして、素早く《モンキー・バロン》との戦い方を考えたイルマは、その戦い方と《モンキー・バロン》のステータスで注意しないといけない点を皆に伝えるようと声を掛けた。


「皆!アイツは完全な身体能力特化の魔物だよ!だから戦闘の作戦の基本は、アイツの土俵である"接近戦は避けて遠距離戦で戦うこと!"

それと2つ注意、技能≪跳躍力≫があるから、距離を離れていても跳んで距離を詰めて来る。後、技能≪衝撃吸収≫を持っている、だから打撃系の攻撃は効果が薄いよ!!」


「わかったぜ!」「気をつけるわ!」「了解」


そして、素早く《モンキー・バロン》との戦い方を考えたイルマは、その戦い方と《モンキー・バロン》のステータスで注意しないといけない点を皆に伝えるようと声を掛けた。

イルマからその事を聞いたメラ達は、早速モンキー・バロンから距離を取り始めた。


《モンキー・バロン》はそのイルマ達が自分との距離を取り始めたのを見て、逃がすものかと攻撃を開始した。


そうしてイルマ達は《モンキー・バロン》との戦闘を始めたのである。


















◆◇◆◇

ダンジョンボスである《モンキー・バロン》との戦闘を始めたイルマ達。


そんなイルマ達だが、作戦通り《モンキー・バロン》が得意とする近接戦闘は避けて距離を取り、魔法などで遠距離かつ打撃系以外の攻撃で攻めていた。


そして、ダンジョンボスである《モンキー・バロン》はその遠距離かつ打撃系以外の攻撃で攻めてくるイルマ達の攻撃に対し、多少の傷は≪ダンジョンの加護≫の効果で直ぐに癒えることもあって多少のダメージは無視し、それよりも自分との距離を取るイルマ達に距離を詰めようと岩等投げては攻撃を加えながらも接近しようとする。


そんな《モンキー・バロン》に対し、攻撃を回避したり牽制することで距離を詰められないようにするイルマ達。


何としても距離を詰めようとする《モンキー・バロン》VS距離を詰められないように攻撃するイルマ達。


イルマ達のダンジョンボス戦は、暫くこのような戦いが繰り広げられていた。





そして、


《グギィッ!!》


この戦いを先に痺れを切らしたのは《モンキー・バロン》。

一向にイルマ達との距離が詰められない《モンキー・バロン》は痺れを切らし、己の技能である≪跳躍力≫を発動しては空中に跳び上がった。


空中に跳び上がり一気にイルマ達との距離を詰める《モンキー・バロン》


空中を跳び上がった《モンキー・バロン》は、距離を一気に詰められてイルマ達が焦るであろうと思いイルマ達の顔を見るが、



……………イルマ達は笑っていた。



それをイルマ達の笑顔見た《モンキー・バロン》は嫌な予感を覚えた。


そう、空中に跳んで一気に自分達との距離を詰めてくる《モンキー・バロン》を見てイルマ達は、その事に焦るではなく作戦通りだと言わんばかりに口元を吊り上げて笑っていた。







─────話はイルマがボスである《モンキー・バロン》のステータスを皆に伝えていた時になる。


「(皆、アイツの能力的に遠距離戦を続けて距離を詰められない状況が続ければ痺れを切らして、その状況を変えようと技能≪跳躍力≫を使って一気に距離を詰めようとする筈だよ。その時、アイツはきっと技能≪跳躍力≫で空中に跳び上がる筈だ。狙うならソコを狙うよ!)」


「「「(了解!)」」」





イルマはそうしてダンジョンボスである《モンキー・バロン》のステータスを皆に伝える時に、こっそりと倒す作戦も皆に伝えており、皆もその作戦を聞いては納得してイルマの作戦通りの戦いを繰り広げていたのだ。


そんなことを知らない《モンキー・バロン》。

(普通は相手のステータスを覗けないので仕方ないが、仮に何か考えているだろう所までは読めていても、技能の≪跳躍力≫を使ってくるのをピンポイントで待っていたなんて読むのは無理)


そして、


《モンキー・バロン》はイルマ達の様子がおかしいのに気づくが既に遅く、空中に跳び上がったことで身動きは取れず《モンキー・バロン》はイルマ達の罠に掛かりピンチが迫る。




ダンは、《モンキー・バロン》の着地点から離れて必殺技の溜めに入り、イルマは事前に使えるようにしていた技能≪罠作成≫を発動しては《モンキー・バロン》の着地点に "落とし穴"を作成した。


《ッ!グギィィイイイーーッ!!??》


それを落とし穴を見た《モンキー・バロン》は、焦って身を捩るが逃げれない!(ご丁寧に穴の底には絶対に無事で済まないように杭が用意されている)


次にメラが固有技能【魔道深域】や職業技能≪魔力爆発≫等を発動し、自身の魔力を高めては強力な魔法を用意し、《モンキー・バロン》が早く着地するのを待ち構えていた。


「グギィィ………(絶望の顔)」


最後にシーラが、イルマの作成した落とし穴に《モンキー・バロン》が落ちてから大量の水を流し、まさかの水攻めである。

その上、追加の大量の水まで魔法で用意してある。(残酷)





──────結果、絶望した表情で落とし穴に着地する《モンキー・バロン》。


そして落とし穴に着地した《モンキー・バロン》は、先ず落とし穴に落ちた先にあった杭にグギャーー!と悲鳴を上げ、その後直ぐに落とし穴の出口からシーラが追加の大量の水を流し、ゴブッ!と溺れ、水のせいで中々止まらない出血を強いられながらも《モンキー・バロン》は何とか落とし穴から這い上がる。



ゼェーーゼェーー、ゼェーーゼェ



大きく息を乱しながら落とし穴から這い上がった《モンキー・バロン》が見た光景は更なる絶望だった。


その《モンキー・バロン》が見た景色絶望はメラは輝いた笑顔を浮かべながら、大量の魔法を《モンキー・バロン》に放つ姿である。


────大量の強力な魔法更なる絶望が自分に向かって放たれたのを見た《モンキー・バロン》は……………這いつくばりながらもメラの魔法から逃れようとするが落とし穴(杭の追加ダメージ)+水攻めもあり、避けることは出来ずに直撃した。



ドンッ!……グハァッ!、………グゥ………



メラの大量の強力な魔法を大量に直撃したが《モンキー・バロン》は何とか耐えたッ!!



……………ッ!!ーーグギァッ!?



だが、絶望はまだ終わらない。



"落とし穴(杭付き)"、"水攻め"、"強力な大量の魔法"にも耐えた《モンキー・バロン》。

そんな《モンキー・バロン》に、次はダンの必殺技である闘魔剣最後の絶望が待ち構えていた!!


そうメラは大量に発動させていた魔法の1つを、ダンの剣に技能魔力付加で渡していたのである。

ダンはそれを自分の闘気刃に合わせ、メラとの合体技である闘魔剣を発動させては《モンキー・バロン》に放つのを待っていた。


………そして、今。

落とし穴から水攻めに大量の魔法を受けてボロボロの《モンキー・バロン》に対し、ダンは闘魔剣を放った。



グギャーー!!!(そんなの酷すぎるーー!)



ダンとメラとの合体技である闘魔剣を喰らった《モンキー・バロン》

既にボロボロで体力が残っていなかった《モンキー・バロン》に、それを受けて耐えることは出来ず、結果モンキー・バロンはその息を止めるのであった。
















………この一連の流れを見ていたイルマ。

落とし穴を技能罠作成で作成したイルマだが、この一連絶望の連続でも倒せない場合に備えて、《モンキー・バロン》の止めを刺す為に待ち構えていた。


だが、この一連絶望の連続を見て、流石にダンジョンボスである《モンキー・バロン》に対して同情してしまうのであった。

(作戦を考えた上に実行させた犯人であるが)



そんなイルマの同情をされた《モンキー・バロン》は、無情にもボコボコにされた上にその死体をイルマ達に解体されるのであった。

(解体するイルマは、更に《モンキー・バロン》に対して同情した)















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



そして、ダンジョンボスを無事に倒したフルボッコしたイルマ達。

その結果、ダンジョンボスを倒したことによって発生したダンジョン核に繋がる奥の扉を開けるのだった。


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