第26話(探索の反省)


【グルルルッ!!?】

ド、ド、ド、ド、ドドーーンッ!!!!



森の強者であるブラッディー・ベアーは、その名前の由来になった技能血液毒素と《魔力感知》でメラの強力な魔法を喰らわないよう立ち回ることでイルマ達を苦しめたが、イルマの新しい技能≪感知妨害≫により技能魔力感知を封じられては混乱し、その混乱の隙を突かれて警戒していたメラの強力な魔法を喰らい、倒れるのであった。


「……倒した?」


「っああ!イルマがアイツの《魔力感知》を上手く封じてメラの強力な魔法をモロに喰らいやがった!流石にアレを喰らって生きてないだろよ!」


「あっ(それフラグだよ……)」



しかし、ダンのそのフラグ発言は杞憂に終わり、ブラッディー・ベアーはそのまま起き上がることはなかった。


「………本当に倒したんだ」


「………ふん。起き上がったら起き上がったらで、また私の魔法を喰らうだけよ。イルマがアイツの《魔力感知》を封じなくても今のダメージのせいで、アイツは避けたり防いだり処か、私の魔法の発動を妨害することも出来なかっただろうけどね」


フラグが立たずホッとするイルマを尻目にブラッディー・ベアーを倒せたことを実感するメラ達。


「……でも、流石に疲れた」


「……そうだな。只でさえ強力な攻撃力なのに、喰らえば毒になる攻撃を防いだり避け続けてたのはかなり疲れたぜ……」


「それだけじゃないでしょ?前方で戦っていたアンタやイルマは、喰らったらヤバい攻撃以外の攻撃や余波は全て防ぐことや避けること出来なくて、怪我してるでしょ?」


「そうだな。……おい、イルマ。この傷、イルマの回復魔法で治してくれよ」


メラのその言葉に、ダンは我慢していた傷に痛がりながら手当てを回復魔法が使えるイルマに頼む。


「わかってるよ────回復魔法、"治癒ヒーリング"」


ダンの頼みにイルマは頷き、ダンの傷を下級回復魔法である"治癒ヒーリング"で治していく。そしてイルマは、ダンの傷を治癒させたら今度は同じく傷を負った自分に回復魔法を使用し、傷を治していくのである。


そうイルマ達は、この戦いで相手の《血液毒素》を警戒して防御や回避優先していたお蔭で大きな怪我はなく、傷付いたのは戦闘の前方で戦っていたダンとイルマがブラッディー・ベアーの攻撃を防いだりした時の反動や回避し損ねた喰らっても問題がない攻撃で傷付いたり、又は攻撃の際に生じた余波の礫などの多少の傷と、Bランクという魔物と戦いを行った緊張でクタクタになって失った体力と魔力の消耗というとても4人とはいえ、幸運にもBランクの魔物と戦ったとは思えない負傷で済んだのであった。









「今日はもう村に戻ろう。流石に疲れたし、これ以上の戦闘は今日はもう嫌だからね」


「「「賛成~!」」」


イルマは回復魔法での傷の治療を終えた後、今日はこれ以上の戦闘行為は嫌だと言っての本日の森の探索を引き上げてポルカ村に帰ることを提案した。


そのイルマの提案に、メラ達3人も頷いて賛成した。3人共、体力を消耗して疲れたことやメラとシーラは傷付いていなかったが2人は大分魔力を消耗したこともあり、イルマと同様今日はこれ以上の戦闘行為は避けてポルカ村に帰りたかったのだ。


「……おっと、ブラッディー・ベアーの死体は回収していかないと──固有技能、【メニュー】発動……」


そして、ブラッディー・ベアーとの戦闘を終えたイルマ達はブラッディー・ベアーの死体をイルマの固有技能【メニュー】で仕舞い、今日の森の探索を終了してはポルカ村に帰って行くのであった。



















◆◇◆◇


「やっと村に着いた………疲れたぜ~」


「………ホントね………」


「……………今日は、もうこれ以上動きたくない」


「そだね。今日はもう解散して家でしっかり休んで、また明日集合しよう。あっ、後僕は明日冒険者ギルドに寄って、今の森の調査がどうなってるのか確認してくるから少し遅れるよ。だから皆は先に集まって待っていて欲しい」


「「「……おぉ~(……わかったわ)(……了解)」」」


森からポルカ村に帰って来たイルマ達。

流石に疲れて限界だと言って、明日いつもの場所で集合することを約束しては家に帰って休むため解散するのである。それと、解散する前にイルマは「明日の集合の前に、僕は冒険者ギルドに寄って今の森の調査がどうなっているか確認してくるから遅れる。だから皆は先に集まって待っていて欲しい」と告げ、メラ達はイルマが遅れてくることを了解して家に帰って行く。







~そして次の日~


「さてイルマを待っている間に、イルマ抜きでも出来ることをするわよ?」


「出来ること?何をするんだ?」


「…………何するのメラ?」


「反省会よ」


「「反省会?」」


「そう、反省会。イルマを待つ間に私達だけでも昨日の探索でのよかった点、悪かった点、改善が出来る点を話し合いするわよ」


「そうだな。昨日の森の探索で俺達、色々と反省しないといけないことあったしな~。次の森の探索迄に、その反省しないといけなかったことを改善しないとな」


「………確かに。昨日の探索での反省点……改善していかないと……」


昨日言っていた通り、イルマは冒険者ギルドで森の調査について情報収集しに寄っており集合時間に遅れていた。そして、先に集合してイルマを待っていたメラ達は、遅れて来るイルマを待っている間にイルマ抜けで昨日の探索での反省点を話し合っていた。



3人は反省点を明確にするため、昨日の森の探索での出来事を振り返っていく。

そして、先ずはシーラが昨日の森の探索での出来事を振り返って反省点を思い出して話し始めた。



「私から言う。昨日の森の探索でよかった点、しっかり警戒して物事に当たれたこと。後は……自分達よりも格上である≪ブラッディー・ベアー≫に怯えて戦えなくならなかったこと。逆に悪かった点は……メラの魔法?」


「グフッ!?」


「ハハハ!そうだな、確かにアレは反省しないとな!」


シーラから昨日の反省点で自分の魔法のことを言われたメラは、自覚が有ったこともあり痛い所を突かれたと言わんばかりに自分の胸を押さえ、ダンは確かにあれは反省点だと笑う。



「ハハハ。でも、シーラ。その件メラは昨日イルマからこれでもか!って言われたし、俺達も注意したからもういいじゃねぇか」


「………そう、ね」


「!───ホッ(ナイス、ダン!)」


メラの魔法の件で笑っていたダンだが、その事は確かに反省点だがそれは昨日散々注意したからもういいだろ?と話す。

そのダンの言葉にシーラも同意し、痛い所を突かれてたメラはそのダンの助け船に顔を上げては安堵の息を吐き、内心でナイスとダンに感謝していた。


そして、


「───他、他に反省点はないか?」


メラの魔法の件以外での反省点は無いかと、3人は考える。


「………攻撃手段?」


「あ?攻撃の手段だぁ?」


「っ!」


「……うん。攻撃手段の少なさ」


他の反省点を考えていたメラ達だが、そんな中シーラがポツリと反省点で自分達の攻撃手段の少なさを指摘した。そのシーラの指摘にダンとメラの2人は、昨日の森の中での自分達の戦いの様子や自分達の攻撃手段について振り返る。



「………そうね、そうかも。確かにシーラの言う通りだと私も思うわ。ダンもシーラも基本的な攻撃手段は剣や水魔法の一択。私も属性魔法は幾つも使えるけど、大きく見ると攻撃手段は魔法だけ。で、能力的にも職業的にも例外のイルマは除いて全員、他の攻撃が使えるって言ってもどれも補助レベル」


「……そうだな、俺の場合は闘気は剣と合わせたら補助レベルじゃないけど、でも確かに剣以外の攻撃手段である闘気は単体なら補助レベルだな。特に昨日≪ブラッディー・ベアー≫クラスには通用しねぇし、遠距離攻撃もねぇ」


「……それだけじゃない。≪ブラッディー・ベアー≫クラスになると、実質私には攻撃手段がない。……それに攻撃手段が無いだけならまだマシ。昨日の戦いで私は支援と防御では固有技能を使わないと戦力にならなかった。しかも、固有技能を連発する形になったから私が一番力の消耗してた」


「そういえばそうね。私も魔法以外での攻撃だと他は棒術だけで、あのクラスになるとそれも無いも同然ね。攻撃手段の少なさもそうだけど、攻撃力も課題ね……」


「……なら、どうすればいいんだよ?」


反省点で攻撃手段の少なさを話し合うメラ達の3人は、話し合いの中で主力の力以外の攻撃力の弱さも課題だと判明し、どうすればいいのかと考える。


「直ぐには新しい攻撃手段や攻撃不足を解決なんて、どうしようもないわよ」


「……でも、解決しないとこれから先を進むのは厳しい」


「………そうよね」


メラは少し黙って考える。


「(この先、長所を伸ばすだけじゃ行き詰まる。でも、短所や足りない所をいきなり直したりは出来ないし………ああぁー、もうっ!!いつもこんなことはイルマやシーラが考えてたからパッと思いつかないわ!!そのシーラも今回は解決策を考えているみたいだけど同じように浮かばないみたいだし、期待してなかったけどダンも同じみたいね)」


メラは黙って必死に頭を回転させては解決策を考えていたが、それでも答えは浮かばず内心で叫んでいた。そして、何時も難しいことを考える役の1人のシーラでさえ同じく頭を悩ましていることに難しい問題だと改めて認識。


期待はしてなかったがダンの様子も窺うと、予想通り頭から煙を上げては悩んでいた。


メラはそんなシーラとダンの様子を見た後、再び問題点を解決するため木の枝を拾い、今度は地面に問題点を書いては考えを整理する。



──私達がやらないといけないこと。

①ダンは剣以外の攻撃手段と、闘気の強化に遠距離攻撃の習得。


②シーラは攻撃力の強化と固有技能の使い過ぎない戦い方。


③私は魔法以外での攻撃手段の習得。


地面に各自やらないといけないことを書き出したメラ。


「(で、問題はこの短所を、どうすれば解決出来るかだけど………簡単に解決出来たら苦労はないわ。でも、解決しないといけない問題


    ………………そうよ!!逆にかんがえるのよ!!)」


「(短所や足りない所をどう解決するかだけど……短所を鍛える、足りない物を直ぐに習得するんじゃなくて、短所や足りない物を長所で補うのよ!私達の長所で短所や足りない物を補う方法だけど……っ!!)」


「ダン、シーラ!」


短所や足りない物を補う方法が浮かんだメラは、そのことに興奮しながらもダンとシーラにそのことを伝えようと2人の名前を呼ぶ。


「う~ん、分からねぇ。………あん?何だメラ。何か短所を改善や足りない物を直ぐに習得出来る方法が見つかったのか?」


「……メラ、何か改善方法を見つけた?直ぐに改善出来る方法なんて……そんな都合がいい方法があった?」


「違うわ!でも、解決方法は見つけたわ!で、その方法だけど……短所の改善や足りない物を直ぐに習得する方法じゃなくて、それとは違う方法で短所や足りない物を補うのよ!!」


「短所を改善しなくても短所を補える方法?」


「足りない物を直ぐに習得しないで補う?」



メラはそうよっと言って、ダンとシーラに先程思いついた方法について2人に話し出す。



「先ず最初にだけど、解決方法を見つけたって言ったけど、だからって短所や足りない物を直ぐには改善できないわ」


「はぁ?どういうことだよ?

短所や足りない物を何とかする解決方法を見つけたのに、短所や足りない物を改善出来ないって矛盾してないか?」


「ダン、ちょっと黙ってて」


メラの言葉の途中に、ダンが矛盾してないかとメラの話の腰を折ってきたのをシーラが黙らせては「メラ、続きを話して」、と話の続きを求める。


「ええ、それで私は逆に思ったの。長所を伸ばしていた私達がいきなり短所を改善するんじゃなく、"長所の使い方を変えて短所を補ったらどうかと"」


「???」


「長所の使い方を変える?………! 確かにそれならいけるかも!」


「お、おい、どういうことだよ?」


「でしょ!」


「メラの言う通りの方法なら、短所を鍛えたり足りない物を新しく覚えるより短期間で解決出来ると思う」


「でしょでしょ!」


「おい、そこの2人。俺の声を聞けよ!」


「……改善じゃなく、補う。その考えはなかった。メラ凄い」


「えへへ。そう?まぁねぇ~♪」


メラの言葉を聞いたシーラはメラの言葉の意味を理解してはメラの意見に同意する。そのシーラの同意に、メラは自分の考えた事が間違いではないと喜んでいた。


「だ~か~ら、俺の声が聞こえてるのかよ!それと、どういうことだよ!お前達だけで理解して話すじゃなくて、俺にも分かるように説明しろよ!」


「「!?………あっ(ダンのこと、すっかり忘れてた!)」」


が、話を聞いても唯一理解出来なかったダンはメラとシーラの2人に、どういう意味なのか説明をしろと声を上げる。


そんなダンの説明を求める声に、メラとシーラがあっと声を漏らす。そうメラとシーラの2人は、問題の解決策が見つかった喜びのあまり、すっかり話に着いてこれてなかったダンのことを忘れていたのである。


「───コッホン。……いいダン?メラが言っているのは短所を"改善"するんじゃなくて、長所を生かして短所を"補える"方法に考え方を変えるという話」


「──そ、そうよ」


「おい、絶対今誤魔化しただろ。………まぁいい。で、改善じゃなくて長所で短所を補う?それでどうやったらそんなことが可能なんだよ?」


「………そこまではまだ……」


「………う~んそうね、例えばダンアンタだけど、剣と闘気を使った戦闘方法で接近戦が得意だけど、その分剣と闘気が封じられたり、遠距離戦になると何も出来ないわよね?」


ダンから具体的にどう補うのかと、方法を質問されて返答に困るシーラをメラが助けるかのようにダンの質問に答えていく。


「ああ、そうだな。剣と闘気を封じられるか、遠距離戦を仕掛けられると俺はどうしようもないな」


「そうよね。だからダンに分かりやすく言えば、剣と闘気を使って遠距離攻撃が出来るようになれば、遠距離戦が出来ない弱点がなくなるようにならないかしら?」


「剣と闘気で遠距離戦?どうやって?」


「う~ん、例えば……魔力を飛ばす技能魔力放出みたいに、剣で闘気を飛ばして攻撃……とか?」


「おお!!それなら短期間で短所を補えるかもしれねえなぁ!そうか~、剣で闘気を飛ばして攻撃かぁ。いや~遠距離攻撃は魔法や弓のイメージが強くあったけどよ、剣で闘気を飛ばして攻撃する考えはなかったぜ!今から魔法や弓を覚えるって俺には難しいっと思ったんだけどゃ、メラの言うそれならいけそうだなぁ」


「そうでしょ?具体的な方法は、私とシーラは剣と闘気が使えないから、使えるアンタ自身で考えてよね」


おう!っとダンはメラの言葉に元気に返事をしては、早速メラ達から離れた所で剣を振るいながら闘気を使って遠距離攻撃を使えないかその方法を探り始めた。


そんなメラがダンに対して短所を補う案を聞いていたシーラは、今度は自分の改善方法の案をメラに聞いてみたく、ダンと話終えたメラに顔を向けては目を "キラキラ"させて見詰めていた。

そして、メラもシーラの視線に気づいていたが、シーラのその"キラキラ"した視線に戸惑い目を合わせずらい様子だ。

しかし、メラはキラキラ見詰め続けるシーラに根負けしては、ため息を吐きながらシーラと向き合う。


「………何、シーラ」


「メラ。メラ。私は?私には何かアドバイスはない?」グイグイ


「ちっちょっと、落ち着いてシーラ」


案の定、シーラは少し興奮した様子でメラに自分には何かアドバイスがないのか問い掛け、メラはそんなシーラの興奮した様子に押されながらも話をするために諌める。


「むぅー。ダンにはアドバイスしたのに。私にもあっていいと思う」


諌められたシーラは頬を膨らませてはメラに苦情を言う。メラは頬を膨らましたシーラに、少し可愛い…と思いながらもシーラに自分が思いついたアドバイスを伝える。


「しっシーラにはね、水魔法があるじゃない?」


「!うんうん。私は水魔法が一番得意。で、水魔法が何?」


「その水魔法って、攻撃力が他の属性の魔法と比べると弱いじゃない?」


「うん。確かに私が使える一番強い水魔法である≪ウォーター・プレス水の重圧≫も多数を攻撃する点や足止めに向いてたりする、けど攻撃力は他の魔法攻撃には一歩劣る。で、それで?」


「そう、水魔法は攻撃力は他の魔法攻撃には一歩劣る一面が有るけど、水魔法を純粋な攻撃に使うんじゃなくて、別の使い方をすればいいんじゃないのと思うのよ」


「純粋な攻撃以外に使う?別の使い方?」


「ほら……えーと、かっ顔に!水魔法の水を相手の顔に覆って呼吸出来なくしたり、走っている所に水を撒いて滑らすように使ってとか、攻撃力の改善は出来ないかもしれないけど、搦め手や妨害なら使えるじゃない?」


「………相手の顔に水魔法で覆って呼吸を出来なくするって言っても、簡単に壊せてしまうから顔に水を張り付けるのを維持するのは難しい……水を撒いて足を滑らすことも、動いている相手によるけど…スピードが早い魔物にはこちらも難しい…」


「え~と、ほら、そこは練習すればいいんじゃない。≪魔力操作≫や水魔法のレベルが上がったら壊せてにくくなったり、壊そうとした際に離してまた覆ってしまえばいいのよ。足を滑らすのもピンポイントじゃなくても大体でいいのよ!」


「……成る程」


「まぁ、今のは一例だから色々やってみたらいいじゃない」


「うん。メラ、ありがとう。これなら私にもやれそう」


「よかったわ。シーラ頑張って」


そう言ってシーラも水の魔法と魔力操作を使って、今メラが言った方法や他の方法で今自分が出来る力の試行錯誤を始める。


それを見たメラも、「私も魔法攻撃以外の護身用じゃなくて、実戦でも使える攻撃手段を手に入れないと」と言っては自身の課題をクリアするため、試行錯誤を始めるのだった。









その頃イルマはメラ達がそんなことをしていることは知らず、技能≪気配遮断≫≪隠蔽≫を使っては誰にも気づかれないように物の影に隠れ、念には念を入れて冒険者ギルドの建物の外から技能≪聞き耳≫を使い、冒険者ギルドの建物内の音を拾っては森の調査状況を聞いていた。



{ドラン、どうだったかい森の様子は?何か収穫は有ったのかい?}


{…デルおばさん。確かにイル坊達が言っていた通り森の奥からの魔素がいつもより多く流れてきて、魔物の出現数も増えていたよ。ただ、他には今の所ら森の浅い所には異変の原因については何も見つからなかったよ}


{……はぁー、そうかい。残念だけど、イル坊達の言う通りってことだね。証拠が有ったから嘘とも思ってなかったけどね、私はやっぱり嘘だったと思いたかったんだけどね~……はぁー}


{デルおばさん……俺もそうさ。誰も村に近い森で異変が起きていて欲しいって思っているやつはいないよ。自分達の村が大変なことになるかもしれないだったら尚更イル坊達の話を嘘と思いたいよ}



イルマは≪聞き耳≫で聞いていて、ー自分もそう思うーと内心でデル達に同意する。



{……そういえば、デルおばさん}


{うん?なんだいドラン?}


{実は、森の調査をしている際に大きな魔力と大きな音がしたんだ}


{大きな魔力と大きな音?}


ビクッっとドランの言葉にイルマの肩が跳ねる。


{そうだよ。何か聞いてない?俺達がその場所に着いた時には何もなく、大きなクレーターだけがその場にあったんだ}


{大きな魔力と大きな音、それに何もなくてその場には大きなクレーター?……何も聞いてないけどそれは何処にあったんだい?}


{比較的に森の浅い所なんだけど…森の奥から離れているから直接森の異変に関係があるかわからないけど、いつもと違うことはこれぐらいかなぁ?後は、これ以上調べるにはそれこそ森の奥に行かないと森の異変について分からないと思う}


イルマは顔から冷や汗をダラダラ流しながらデルとドランの話を聞いていた。


{……そうかい、お疲れさんドラン。森の異変の理由が分かるのは助かるけど……無理するんじゃないよ?焦らず調査を頼むよ。私の方でもそのクレーターについても調べてみるとするよ}


ー今日は一旦休みなー


ーあぁ、そうするよー


そう言ってはデルとドランの森の調査についての話が終わった。




冷や汗を流して話を盗み聞きしていたイルマ。

ドランがデルに話していた途中からの内容はどう考えても自分達のことだ。

確かにメラの魔法は凄く、遠くにいた≪ブラディー・ベアー≫もメラの魔法を感知していたことから、調査している冒険者が気づく可能性は充分にある。

でも、それがドランが気づいて、デルと話していて、その話を自分が聞いている時に聞くと思わずイルマは冷や汗が流れ技能≪気配遮断≫と≪隠蔽≫が解けるそうだったと思った。


イルマは聞きたいことは聞けたので(聞きたくないことも)冒険者ギルドの建物の外から離れては皆の元に行くのだった。








イルマは、ギルドでの調査の話を頭の中で考えながら、昨日の森の探索について振り返る。


(昨日の森の探索は、前半の方は問題は無かった。今の僕らでも森の浅い所なら十分対応可能と思う。でも、≪ブラッディー・ベアー≫の戦闘から考えたらアイツらがいる森の奥には正直まだ不安がある。)


(≪血液毒素≫のせいで、倒すのに強力な魔法か致命傷を与えれる程の一撃、どちらも使えるがそれを当てる技能が足りてない。昨日は不意をついて≪感知妨害≫をぶつけ、ヤツの≪魔力感知≫を封じれたから攻撃を当てれたけど、毎回上手くいくわけないし、≪ブラッディー・ベアー≫も単体じゃなく、複数で来たら倒せても僕らもただじゃすまない)


(技能数や必殺技だけじゃなくて、僕らに足りないのは練度と長所が活かせれない時の対応力や短所と足りない物を補える力。経験もだけど、これは流石に直ぐにはどうしようもない。この足りてない物を埋めないととても森の奥には行けない。)


イルマもメラ達と同じく、短所や足りてない物を補うために動き出すのだった。












◆◇◆◇


「こっこれは?」


メラ達の下に来たイルマの前には、ダンが剣を使って闘気を飛ばして今まで出来なかった遠距離攻撃を行っており、シーラは水魔法を辺りに撒いて風魔法を使って、水を冷やして擬似的に氷魔法を再現しては氷の地面を作ったり、空中に魔力操作で水魔法を上下左右に動かしていた。そして、メラは魔鉄棒に≪火≫≪水≫≪風≫≪土≫の魔法を付加し、その魔鉄棒を技能棒術で操っていた。



「みっ皆!これはどうしたの!?」


「おっイルマ!これは反省会の成果だ!」


「は、反省会ぃ?」


皆の様子に驚いていたイルマは、事情を確認しようとダンの言葉を聞くが、ダンの言葉だけじゃ情報が足らなくいまいち理解出来なかったようだ。

メラとシーラにはそれがわかり、苦笑しながらイルマに自分達がイルマが情報収集している間に、昨日のことを自分達で反省し、反省点の改善方法を考えて、これは、その試行錯誤した結果だとイルマに伝える。


イルマはメラ達にビックリしていた。

正に自分が考えていたことをメラ達が、自分がいない間に問題点に気づき、更に改善方法まで発見し、試行錯誤に動いていることに正直めちゃくちゃ驚いていた。

そして、やっぱり自分の幼馴染み達は本当に10歳なのか?凄すぎるだろ?前世含めたら40歳になる自分と同じ考えに至ったその上改善策を見つけて動けるなんて……もしかして自分が頭のレベルが低すぎるのか?、とイルマは謎の精神的ダメージを戦闘外の今、1人で喰らっていた。




……少し、イルマは錯乱しているようだ。



そんなイルマを痛い子を見る目をしながらも幼馴染み達は心配していた。そんな幼馴染み達の目に再び錯乱しそうになるが気合いをいれて正気を保つ。(コイツ1人でなにしての?)


謎のツッコミは無視し、イルマはメラ達に自分も同じことを考えていたと伝える。

その上イルマは前世の漫画等の知識を使い、メラ達の工夫に更に一手加えたり、自分自身も戦闘技術の向上や技能の使い方の見直ししたりなど試行錯誤をするのであった。



そうしてイルマ達は、森の探索して自分達が足りない物を実感したことを、森の探索を再開する今度迄に短所を補える力を身につけていくのであった。

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