第3話 大人より子供の方が勘が鋭い
「もしかして、お前は」
「どうやら、オラを探しているみたいですね」
茶屋で隣り合わせの席にいた
「ここではお店の方に迷惑がかかります。ひとまず外に出ましょう」
茶屋の外には広い牧場があり、その端っこでアルサーと
「随分、余裕があるな!今から、俺にボコボコにされるってのによ」
「オラはもう......」
自信の有無に差がある両者を見ながら、ニーアはどっちが世界の敵なんだがと思っていた。
安全確保のため、木刀で対決するも一方的な展開が続く。アルサーの一太刀はことごとく、
「本気を出せ、クソ野郎。そこの魔王をぶっ倒したってんならよ!」
「待って下さい!!」
そんな叫びと共にキングは、
「あなたにはもう“無双”も“モテ”もないのでしょう」
「よくわかりましたね、キングさん」
仲裁に入ったキングの一言に一同騒然となる。
「オラに“無双”も“モテ”もあったのは確かですが、魔王キングを倒して世界に平和が訪れた時点で、その力を失っています」
「てことは、今の都で悪さをしているのは、あなたではないと」
ニーアが割り入るように聞く。アルサーはまだ事実を飲み込めてないようで、あわあわしている。
「そうです、オラではない。別の誰かです」
「じゃあよぉ、誰が都でのさばっているんだ」
やっとのことで、アルサーがボソっと呟く。
「オラは確かに力を失った。けれど、キングさんを倒してからも、オラの周りには女性が多くいたのだ」
「私を倒したとなれば、“モテ”などなくてもモテるでしょうからね」
やけに微笑ましくキングは語っている。やはり、元魔王のプライドは健在のようだ。
「そんな女性の中で、とりわけ積極的な人がいたんだ。オラはまんまと乗せられて......」
「その後は大体予想がつくので、言わなくて良いです♪。想像するだけでキモいんで」
満面の笑みで、冷ややかな一言を浴びせるニーア。キングはそんなニーアにコラコラと言いながら、
「身ぐるみ剥がされてしまったんですね。それは大変でした」
「そうなんです...え!」
突然、
「これはもしや、現代に戻るのでは?」
「オラは嫌です!異世界にいたいんだぁ!!」
「最後に、俺に教えろ!お前を倒したやつの情報を!!」
「脱ぐと凄い......」
そう告げて、
「どうしようもない下ネタをぶっ込んできましたね。全く最低なクズ野郎です!」
ニーアがなんだか嬉しそうな口調ながら、冷え切った目で言った。アルサーも、煽りさながらの一言にブチ切れている。
「なんだよ、あいつ。そんなに自慢したいか!俺だって、俺だって......」
瞳がうるうるし始めるアルサー。
「ていうか、あいつはズルだろ!なにが“モテ”だ!クソォおお」
「静かに」
不平不満が絶賛爆発中のアルサーを催眠魔法で寝かせたキング。この時、キングだけが
-都の関所
「言葉遊びしましょ、そうしましょ♪」
「名前を繋げましょ、最初の文字を繋げましょ♪」
「そうしましょ、出てきた順番で繋げましょ♪」
「いやぁ、うるせぇ!うるせぇよ!」
やっとのこと目覚めたアルサーの前には、関所に押しかける民衆の姿があった。アルサーを起こしてしまった子供たちは、この押しかけに参加している人たちの連れなのだろう。
「おい、ガキども。俺と一緒だった奴ら知ってるか?」
「おじさん、口が悪いね」
「ね。いけないんだー」
(誰がおじさんだと、クソガキが)
いつもなら振りかざしかねない拳を抑え、優しげに言い直す。
「メイドさんとか、見なかったかなぁ?」
「おじさん、言葉遊びしましょ!そしたら、教えてあげる」
そんなこんなで言葉遊びに巻き込まれるアルサー。
「じゃあ、わたしから。アーサー王の“あ”!」
「次はおじさんだよ」
「俺か?えーと、じゃあランスロットの“ら”」
「それはもっと後だよ。順番に言わないと」
「悪いが、おじさんは忙しいんだ。じゃあね」
我慢の限界を迎えたアルサーは、子供たちから逃げるように別れを告げた。
寝ていたところから、少し行った先にニーアとキングはいた。
「やっと起きましたか、効きすぎてしまいましたね、すみません」
「状況を教えてくれ」
「見たままです。完全にシャットアウト。通ることは叶いません」
どうやら魔法を使うやり方も警戒されてしまうため、好ましくないようだ。アルサーは少し考えがあると、いたずらな笑みを浮かべた。
「アニキ譲りの変装テクニック見せてやるぜ」
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