第379話 実質癒着の予感しかしないだろ。こんなもん:(;゙゚'ω゚'):
師匠に作曲家のことを相談したら、意外とあっさり作曲家が見つかってしまった。
「こんにちは。ダアトです。ショコラさんとは以前、マサカの大会で勝負しましたね。盛大に爆破を食らったのを今でも覚えてます。あれは本当に伝説に残る芸術的な爆発でした」
そんな禍根があるような挨拶があったけれど、ダアトさんが力になってくれるとのことで、現在は暁さんことカスタードことホイップと話をしている最中だ。
「なるほど……キャラとしてはお嬢様と言う方向ならば、俺の得意とするクラッシック系と丁度相性が良いですね」
ダアトさんはクラッシックが得意なのか。だとすれば、ショコラとも相性が良さそうだし、俺も何か一曲作って欲しい気持ちになってきた。まあ、そんな無謀なお願いは相手方の労力的にもこちらの予算的にも無謀なものである。
「曲調的には明るくてミステリアスな雰囲気が欲しいんですよね」
「わかりました。では、1度その方向性でサンプルを作ってみてそこから修正していく感じにしましょう」
作曲家は決まった。しかし、作詞家は決まっていない。歌を作るには、やはり歌詞が必要。というわけで、なんとかして作詞家を募集したいところだ。まあ、アレが作詞を担当してないらしいから、師匠に相談すればエレクオーシャンの作詞担当の人を貸してくれるかもしれないけれど……流石に師匠に頼りっぱなしと言うのも情けなく思えてしまう。ここは自力で探したい。
「ダアト様、ホイップ様。作詞家は私が見つけてきます」
「そうですね。俺の音楽仲間も作詞ができる人はいないんで、伝手の伝手レベルまで探ろうかなと思っていたところですが、ショコラさんにお願いできるなら、それでお願いします」
ということで、任されてしまった以上は適当なことはできない。作詞が出来そうな人を探すにはどうすればいいかを考えてみよう。作詞に必要なものってなんだろう。曲に合わせて言葉を作るということは、リズム感が必要なのだろうか。
それと言語センス。これらが必要なのかもしれない。そうした能力を持っている人を集めるには何をすればいいのか。それは、ショコラの拡散力を使う他ないだろう。
というわけで、早速募集してみた。適当なパブリックドメインの曲を拾って来て、それに歌詞を付ける選手権。撒き餌として商品はアメギフを出そう。ふふふ、本当の目的は作詞家として囲うための罠とも知らずに。
◇
「こんばんはー。ヒカリソラだよー。今日はパジャマ姿での配信をするね。可愛らしいデザインのパジャマを買ったから着てみたけど、どうかな? 似合う?」
『似合う』
『可愛いいいい』
『これで男は無理があるでしょ?』
『男の娘だからいいんじゃあないか』
……おっと危ない。あまりにもヒカリちゃんの可愛さに思わず昇天しかけてしまった。僕の荒んだ心を浄化してくれるヒカリちゃん。今日は一段とメイクのノリが良い気がする。すっぴんのヒカリちゃんの顔はどんなんだろう。見てみたい気もするけれど、見ない方が幸せな気もしてきた。でも、きっとこれだけ可愛いってことは元の素材も結構整った顔だと思うんだよなあ。
『メイク変えた?』
僕と同じことに気づいた一般視聴者が直球の質問をぶつけてきた。こういうことを直接訊いていいのかどうかしらない恋愛エアプな僕は、大胆な発言にドギマギしながらも気になるヒカリちゃんの反応を待った。
「あ、メイク変えたのわかる? 気づいてくれてありがとう。一生懸命勉強した甲斐があったよ」
どうやら触れて良いことらしい。そういえば、女の子は些細な変化にも気づくと嬉しいとかなんとか聞いたことがある。ちょっとでも変わったことがあったら、それに触れて良いということか? でも、ケースバイケースってこともありえるかな? 触れられたくない変化とかもあるだろうし……太った? とか。それがNGなのは僕でもわかる。
「でも、メイク変えたのは良いんだけど、結構値が張るんだよね。いつも使っているものの半分の容量しかない癖にお値段は2倍。高いよねー」
やっぱり、メイクとか服にもお金がかかるんだな。どうにかして、ヒカリちゃんに投げ銭して少しでも経済的に楽させてあげたいところだけど……生憎、僕にはもう投げられる程の種銭がない。ショコラさんや美桜さんから原作使用料とやらを貰ったはいいけれど、それは一時的な収入で継続的なものではない。当然使ったらなくなってしまうわけで……もうヒカリちゃんに貢いでしまったので袖がなくなってしまった。
どこかにもう1度収入を得る方法はないだろうか。ないな。だって、僕はまだ中学生だ。バイトだってできないし、稼げる方法は限られている。ショコラさんや美桜さんが僕の作品を原作として使用してくれたお陰で作品自体は跳ねたものの……書籍化の声は未だかからず。僕よりもポイントが低い作品が書籍化報告しているみたいだし、ポイント的には声がかかるラインに達しているとは思うんだけどなあ。めぐり合わせが悪いんだろうか。
「そういえば、私も歌の配信とかたまにするけれど、やっぱり自分のオリジナル曲が欲しいなって思う時が来るんだよね」
『そうなの? 俺作曲できるから、作ろうか?』
「え? 作ってくれるの? ありがとう。えへへ。言ってみるものだね。あ、もちろんお金はちゃんと払うから安心して」
作曲……いいな。僕も作曲出来たら、ヒカリちゃんにアピールできたのに。
『でも、俺は作詞ができないから、その部分は他の人に頼むしかないね』
「そうなんだ。作詞家はいないかな? チラッチラッ なーんてね。そう都合よくいないよね」
ここで僕が! って立候補できたら良かったのに、僕にはそういったものの実績が何もない。実績がない僕が立候補したところヒカリちゃんに迷惑しかかからないだろう。ああ、切ない。
そんなこんなで作詞家がいないことからその件については保留のまま配信は終了した。配信終了後、僕はヒカリちゃんのSNSアカウントにお疲れ様のメッセージを開くためにアプリを立ち上げた。そこで最初に目に入ってきたのは……ショコラさんのアカウントだ。
『急募 この曲に合わせて歌詞を作ってくれる人募集。動画に使用しても構わない人だけ応募するようにお願いします。 最優秀賞はアメギフ1万円分』
え? なにこれ……丁度良く、実績を作るチャンスが舞い込んできた。歌詞……歌詞ってどうやって作ればいいんだ! 落ち着け……僕の目の前にあるものを思い出せ。困った時には電子の海を検索すればいい。歌詞の作り方のコツくらいどこかのサイトに載っているだろ。多分。
実績も積めて、またヒカリちゃんに貢ぐためのギフ券を貰えるチャンスもある。なんて一石二鳥な企画なんだ。また、ショコラさんが僕にチャンスをくれている。彼女は本当にチャンスの女神だ。絶対にこのチャンスを物にして見せる。
◇
まあ、SNSで募集しましたよ。ええ。商品のアメギフに釣られてワラワラと応募者が来ました。
レベルは本当にピンキリで、凄い人もいれば、良くそれで応募してこれたなって思える人もいる。やはり金の魔力は恐ろしい。優秀な人を呼び寄せるのと同時に、金目当てだけのしょうもないのまで来てしまう。
まあ、それは俺がチェックして弾けばいいだけの話だ。チェック作業が大変になるけれど、まあクオリティ高いのも来てくれたからヨシ! としよう。
審査は俺の一存で決めてもいいのだけれど……やはり、ここは音楽に詳しい人の意見も聞いてみたい。ということで、上澄みだけを掬ってから師匠に見てもらうことにしよう。
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