第104話 草原活動②

 続いて第2ゲームが開始する。新しいロビーに入り、人が集まったのでヘリコプターの場面に切り替わる。


「次は生き残ることを優先しますよ。まずは人が密集する地帯を避けます。初心者が入りこんでいい領域じゃなかったんですよ」


『学習できてえらい』

『かしこい』

『当たり前すぎる』

『撮れ高確保できたからガチプレイに移行するサキュバスメイド』


 今度は市街地から少し離れたところに降り立った。ライバルも視界にいる限りはいない。建物も1つだけあり、恐らくそこにアイテムが沢山あることが予想できる。まずはそこに入ってみよう


「建物に入ります。お邪魔します……おお、早速アイテムがありますね。クロスボウ。銃ではないですね」


 クロスボウはサブ武器としては、威力が高い。ただ、銃と比べると射程が見劣りするし、連射もできない。これだけで上位を狙うのは難しいので別の武器も拾いたいところだ。


 次に発見したのはレンガだ。これは近接武器だ。こちらも威力が高いが、遠距離攻撃が強いこのゲームにおいては使いこなすのは至難の業だ。


「クロスボウにレンガ……あんまり当たりを引けませんでしたね。この建物にはこれ以上アイテムがないようなので別のところに移動しましょうか。できれば射程を補うためにスナイパーライフルを拾いたいです」


 クロスボウとレンガを持ったサキュバスメイドは次なる武器を求めて、マップの内側を目指す。このゲームには毒ガスエリアというものが設定されている。マップに表示されている赤い円。それの外側が毒ガスエリアで、そこにいると即死はしないが徐々に体力が削られていき、やがて死に至る。毒ガスエリアは時間経過と共に段々と拡大していくのである。この毒ガスの影響で勝負がつくことも珍しいことではない。決して軽視できない要素だ。


 しばらく移動していると新たなる建物を発見した。


「おお。この建物になにか貴重なものがあるといいですね。まずは建物の周囲の安全確認をします」


 とりあえず建物の周囲に敵がいないかどうかを確認した。もちろん、建物内から狙撃される可能性も十分考えられる。建物の窓付近にも警戒しながらクリアリングを進める。とりあえず周囲に敵が隠れられる場所はない。安全確認ヨシ!


 と思った瞬間に建物の角から人が飛び出てきた。


「わ……きゃあ、ちょ、ちょっと」


 俺は必死でレンガで敵を叩いた。1発目は射程距離が足りなかったのか外した。2発目は敵も動揺していたのかこちらに接近してきたので、命中した。距離が十分詰まっていればこっちのものだ。レンガの2発目の打撃が決まって見事にファーストキルを取ることが出来た。


「はあ……や、やりました。ファーストキル取れました。出会いがしらですが、きっちりと処理できましたよ」


『つよつよレンガ』

『敵もクリアリングの最中だったか』

『咄嗟の行動が明暗をわけたな』

『クロスボウ使え(クロスボウガチ勢並の感想)』


「さて、戦利品漁りでもしますか……持っているのは手榴弾だけですね。なんで銃を持ってないんですか」


 流石に接近戦で手榴弾を使うわけにはいかなかったのだろう。相手は戸惑っていたわけではなく、攻撃手段がなくて詰んでいただけかもしれない。


 その後も入る予定だった建物を探索しても特に目ぼしいアイテムはなかった。ここはもう、他プレイヤーが探索していたのか。


「まあ、とにかく勝ちは勝ちです。この戦利品を持ってもう1キルしに行きますか。このまま隠れてやり過ごすのもいいんですが、最低限の武器がなければ最後まで残ったとしても撃ちあいで負けてしまいます」


 次にショコラが向かう場所は市街地にあるマンションだ。ここにはアイテムが豊富に落ちているので多くのプレイヤーがこの近くを初期地点にしているはず。今はゲーム開始からかなりの時間が経っている。ということは、ここに降り立ったプレイヤーの大半は銃撃戦で命を落としている。つまり、生き残ったプレイヤーが多くの物資を抱えていることになる。そのプレイヤーを倒しさえすれば、物資を少ない労力で掠めとることが可能だ。


 物資が一極集中するし、敵の数も減っている。正に敵を倒せれば理想的な状況だ。その完璧な作戦を遂行するためにショコラはマンションに入って行った。


「お邪魔しまーす。まだマンションに人がいますかね?」


 俺は遮蔽物がある場所を慎重に調べて敵がいないかをチェックした。クリアリングは完璧。その時だった。近くで銃声が聞こえた。


「聞こえました? 銃声です。近くに人がいます。しかも銃を持っていることが確定します。コロコロして奪い取っちゃいましょう」


 当然、1人しかいないのに銃を撃つなんてもったいないことをする奴はいない。戦闘があったのは間違いない。ということは、退場者から更にアイテムを取って肥えているはず。これは、倒した時の戦利品にかなり期待できる。


「とりあえず銃声が聞こえる方に言ってみましょう。このクロスボウで相手を見事に射抜いて見せます」


『クロスボウきちゃあああああ!!!!』

『まーたクロスボウガチ勢がわいてる』

『クロスボウガチ勢もよう見てる』


 ショコラはクロスボウを構えて腰を低くして慎重に歩いていく。部屋の前に辿り着いた。この部屋から足音が聞こえる。ということは、ここに敵がいるのは間違いない。


「ここに敵がいますね。こちらは忍び足で近づいたので気づかれてないはず。そうですね。この優位を生かして部屋の中に手榴弾を投げましょう」


 クロスボウで狙っても良かったけれど、角度的に相手に見つかる可能性がある。だからここは一撃必殺の手榴弾を使うのが賢明だ。


『クロスボウ使わないので低評価押します』

『あっ……(察し)』

『流石にそう何度も自爆はしないだろ』

『ショコラちゃんを信じろ』


「それじゃあ行きますよ。えい!」


 ショコラが手榴弾を投げた。とても美しい放物線を描いた完璧な投擲だ。ただ、惜しむべくところは、照準に若干のブレがあったのか手榴弾は壁にぶつかってしまった。そして、壁にぶつかった手榴弾は跳ね返ってこちらに飛んでくる。


「え、ちょ。うわあ!」


 爆発音。それが聞こえて派手な爆発のエフェクトが画面全体を覆った。ショコラはその場に倒れて画面が暗転する。


【ショコラは自分が投げた手榴弾の爆風に巻き込まれて死んだ。あなたは32人目の死亡者です。残り68人。】


「えーちょっと、これひどいじゃないですか! 今の絶対部屋の中に入る軌道だったじゃないですか!」


『よわよわエイム』

『知 っ て た』

『これが見たかった』

『まーた推しが燃えてる \2,000』

『火葬されたので香典包んでおきます \5,000』

『爆発たすかる』

『丁度切らしてた』

『ここ切り抜き素材』

『だから跳ね返る心配のないクロスボウを使えと』


「ちょっと。そんな予定調和みたいに言わないで下さい。私だってわざとやってるわけじゃないんですよ。あ、投げ銭ありがとうございます」


『もうオチがついたので寝ます おやすみなさい \500』


「いや、オチとか言わないで下さい。まだまだ続きますから! 後、おやすみなさい。そして投げ銭ありがとうございます」


『これ以上の撮れ高あるんですかねえ?』


「撮れ高なんていくらでもありますよ。例えば1位を取るとか。そうすれば、ショコラちゃんすげえ! ってなるじゃないですか!」


『じゃあ1位取るまで終われない耐久配信枠に変えますか?』


「耐久配信枠には変えません。その代わりに次に爆発炎上したら即終了配信に変えますよ。ショコラブのみんなもまだまだ楽しみたいですよね?」


『次で終わりか』

『配信お疲れ様』

『まあ、3回もやれば十分でしょう』

『なお、1回目は即死した模様』


「次で終わりません! まだまだ配信しますよ!」


 こうして、運命の第3ゲームが開始した。

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