021. 北白川 舞の運命は…

 禿河とくがわの家との話し合いがなくなり瑠維さんがする事務手続きのみとなった。

 僕が意識を失って病院のベッドで眠っている間に終了した。

 だから僕が次に目を覚ました時には『瀧野瀬亜月』なっていた。

 何が変わったのかまだ実感がない。

 一番重要なことだろうけど理解できるまで時間がかかっている。


 そして瑠維さんは高校から徒歩十分圏内にあるマンションを購入していた。

 マンションは3LDKで十分な広さだという。

 僕が入院して禿河聖夜と清心の二人は逮捕され、麗夏には禿河の家には住む権利はないし、事件直後に瑠維さんによって養護施設に送られていたので禿河の家がどうなったか。

 僕と母さんの思い出よりも禿河の家族の嫌な思い出の方ばかりが思い出される。

 だからこんな家なんてなくなってしまえばいいと思った。

 そんなことも瑠維さんに話すとお祖父様と話し合ったみたいで禿河の家は取り壊すことになったという。

 まあ、犯罪者の家なんて新築だとしても誰も買ってくれないだろうと思った。

 事故物件とは言わないけれどやっぱり犯罪者が住んでいたと思うと気持ち悪いよね。


 その隣の家に住んでいる北白川舞。

 保育園からというか生まれた時からの幼馴染みだったけれど麗夏と仲良くなったら少しずつ性格が変わっていって僕との関係もどんどん変わっていった。

 気がつけば顔を会わせると邪魔者扱い。


 そんな中で紫凰が毎日病院に来て僕の勉強を見てくれていた。

 その時に何度か紫凰がいつもと違って暗い顔をしていた。


「…はぁ…」

「紫凰どうしたの?そんな暗い顔して…もしかして毎日病院に来るのが大変だったら無理しないで?」

「いや、違うんだよ。亜月のところに来ることが大変じゃないんだ。学校で毎日毎日あいつらがしつこんだ」

「あいつら…?」

「…うん…」

「僕が学校に行けてない間に何かあったの?」

「あぁ…、ちょっと…な」

「僕に話せないこと?僕じゃ役に立たない?」

 ちょっとの間紫凰が黙ってしまった。


「亜月が役に立たないってことじゃなくてな…その…」

「うん、どうしたの?」

「はぁ…話すよ」

「それで?…何があったの?」

「亜月が休んだ日に北白川が俺のクラスに突撃してきた」

「うん」

「次の日も毎日のようにやって来るんだ」

「うん…」

「……」

「へっ?!」

「……」

「それだけ?」

「……」

 紫凰は話すと言ってもなんだか話し辛そうにしていた。


「もうここまで言っちゃったらスッパリ話しちゃってよ。僕もすごくモヤモヤしている」

「わかった…全部話すけれど亜月の所為せいじゃないからね。…亜月が入院した二日目に禿河の家に警察が来たそうだ。北白川は禿河の家と隣なんだろ?外が騒がしくて窓から見ていて禿河の父親と母親が家から出てきてその後に麗夏も誰か知らない女の人に連れられて禿河の家から出ていったのに亜月だけがいなかったって…。それで俺だったら何か知っているんじゃないかって教室まで来て俺から教えてもらおうとしていてうるさいんだ。もう本当にお前はストーカーか?ってくらいに…」

「ストーカーって…どんだけだよ」

 紫凰の話し方に本当は笑えない話だったはずなのに僕は少し笑ってしまった。


「どっちにしても亜月が眠っている五日間で禿河麗夏は三日間は学校に来ていなかったみたいだから、北白川も新しい寄生先でも探してたんじゃないか?でも結局亜月まで学校に来ないしで…仕方なく俺のところ…って感じじゃないか?」

「ふーん…なるほどねぇ」

 納得したよと言うように僕は二・三回首を縦に振った。


「なんだよ、他人事みたいに話聞いているけど亜月だって当事者なんだぞ?」

「そうは言ってもさぁ僕は事件の後の学校も禿河の家も見てないから…実感ないもん!」

「なんだよ…それ」

 僕の反応があまりにもなくて紫凰はクスリと笑った。


「まだ紫凰に北白川と麗夏が僕に会わせろとか言ってきたら『僕が会いたくないって言ってる』って言っといて。それでもダメだったら『家族とか幼馴染みの縁を勝手に切ったのは君たちの方なのに今更図々しいよね?』って瑠維さんみたいな冷たい視線向けたら黙ってくれるのかな?」

 僕は紫凰に目を向けると紫凰は瑠維さんのように何かを企んでいる微笑みを浮かべていた。

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