助手に命じる事
「……本当に、ルーナエなんだな」
「あぁ。そうだよ。兄さん」
「……何しに来たんだよ」
リュクレーヌはルーナエに用件を聞いた。
ロンドンの街を滅亡させる勢いでマスカが侵攻しているこのタイミングで、ファントムに躰を乗っ取られた弟が自分の目の前に居る。
その理由が分からない。一体何のつもりなんだと。
すると、ルーナエはローテーブルの上に山積みになった日記帳に視線を移した。
「その日記を読んだみたいだね」
「あぁ」
「これを読んだという事は、もう分かっているね。僕の話の続きをするって事」
「続き?」
「ここにも書いてあるように、フランが持っているこのスチームパンク銃は本来、兄さんに使わせる予定だったんだ」
ルーナエは日記を手に取って言う。
「でも、あの時は緊急事態だった。フランに託さざるを得なかった。そして、兄さんを撃ってもらって不死身にするように命じた」
「フランに『次に自分に会った時は殺せ』と言って銃を託したのは、俺を殺すのが目的ではなかったって事だよな」
「そうだよ。本当なら兄さんにこの銃を使ってマスカやファントムと戦ってもらうはずだったんだ。フランの役割は兄さんを撃つところで終わる予定だったんだ」
ルーナエはフランの方を申し訳なさそうに見た。
フランはその視線にどこか居心地悪そうにしていた。
話を要約すると、ルーナエの策ではあのスチームパンク銃は本来不死身となったリュクレーヌが使う予定だった。
それをなぜかフランが使い続けていて、二人が協力してマスカと戦っていた。ルーナエとしては想定外だったのだろう。
「つまり、僕は巻き込まれたって事?」
「その通りだよ。フラン。本当にすまない事をした。」
フランに対してルーナエは頭を下げる。兄弟の問題に無関係の少年を巻き込んでしまった。
リュクレーヌは腕組をしながら落ち着かないようにルーナエの方を見ていた。
「それで、結局、何が言いたい?」
フランが巻き込まれていただけという事は分かった。それが今回の訪問とどう関係するのだろうか。
ルーナエの目的は何なのか。リュクレーヌは改めて問いただした。
「単刀直入に言う。フラン。その銃を兄さんに託してくれ」
「え……」
フランの表情が曇る。リュクレーヌが、ずい、と前に出てルーナエの方に意図を質した。
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