現れたキーマン
しかしながら、分からないところもまだまだある。
例えば、ファントムが殺した人物の記憶だ。
リュクレーヌの両親が殺された事を、ルーナエ以外の誰も気づかなかったうえに、両親の記憶を関係者から消すことが出来るというファントムの発言。
それどころか、この能力は他の集落にも既に使っているという。
ファントムは魔術を使って記憶を操作しているのか?
なぜ、ファントムがブラーチの事を知っている?
なぜ、ファントムはルーナエが対マスカ用の武器を作る事を止めなかった?
そして、一番の謎、迷宮を作るとはどういう事だろうか?
挙げるとキリがない。やはり、ルーナエ──ファントムを探すしかないのだろうか。
「それにしても、読むのにかなり時間かかっちゃったね」
状況を整理するために、また謎を洗い出すために少しずつ読んでいった。
魔術の本を全てブラーチに託してしまったので途中調べ物を出来なくて困った面もあった。
結局全てを整理するのに五日ほどかかった。
ブラーチの方も学術書の解析も佳境に差し掛かっているところだろう。
「まだ、分からないところも沢山ある。後はブラーチの返事と照らし合わせながら……だな」
「ルーナエさん、ファントムの監視下で大変だったのに、よく日記に残したよね」
「あぁ。有難い限りだな」
「一冊の本を読んでいる感覚だったよ」
「それは光栄だな」
リュクレーヌのものともフランのものとも違う三人目の声がした。
二人は思わずその三人目の声を探す。
事務所のドアが開いていた。
二人の視線の先にはリュクレーヌとよく似た顔を持った男が立っていた。
「お前……」
「久しぶり、兄さん」
男はニコリと微笑む。
──ファントムが姿を現した。
直感的に理解したフランは、スチームパンク銃を構えた。
「リュクレーヌ!下がって!」
威嚇するように銃口を向ける。
それでもファントムは動じない。
それどころか、両手を上げて、降参するようなポーズをとった。
「フラン、心配しないで。僕はファントムじゃない。ルーナエだ」
銃を向け緊迫した表情をしたフランに言う。
信じられるか、証拠はあるのかと
リュクレーヌはフランの背後から問うことにした。
「その、証拠は」
「残念ながら無い」
ファントムはため息をつきながら首を振る。
それならばこの威嚇の手を緩めるわけにはいかない。
だが、引っかかる点もある。
目の前に居るこの男が本当にファントムだとすれば、部屋に入って自分たちが気づかない間に攻撃を仕掛ける事だって可能だったはずだ。
それでも、彼は何も危害を加えなかった。
かと言って、彼がファントムでないという証拠はない。
フランは、銃口はそのまま、顔をリュクレーヌの方に向けて二人は見つめ合う。
「……どうする?」
「俺に考えがある」
そう言って、リュクレーヌは電話を掛けた。
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