キーマンの遺した手掛かり
「ルーナエだよ。マスカを作り上げたもう一人の張本人で、ファントムの契約者なら、何かしら手掛かりの一つでも掴んでそうじゃないか?」
ファントム消失への最後の希望と言ってもいい人物はリュクレーヌの弟、ルーナエだった。
彼はファントムとマスカを作り、直接契約し体を乗っ取られた。
きっと彼ならば、ファントムに関する情報を誰よりも知っていてもおかしくないと考えた。
それだけではない。
「それに、お前にその銃を託して俺と引き合わせたのもアイツだ。何かあるはずなんだよ……」
「でも、ルーナエさんの躰はファントムに乗っ取られているから、やっぱりファントムを見つけなきゃ」
「だが、ファントムは行方不明。警察でも見つけられないんじゃあな……それにファントムを見つけたところでルーナエに会えるかは分からないからな」
「えぇ……どうしようもないじゃん」
ルーナエを見つけるためにはファントムを探さなければいけない。だが、ファントムの消息は誰にも分からない。
例えファントムを見つけたとしても、ルーナエに躰を一時的に返すとも思えない。
「そこでだ、ルーナエに関する手掛かりを掴める、とっておきの場所がある」
「場所?」
「ノスクルム邸だよ。俺の実家」
ノスクルム邸。リュクレーヌ──ルーメンとルーナエが生まれ育った家にヒントがあるという。
例え、ルーナエの居場所が分からなくとも、ファントムやマスカ制作に関する手掛かりくらいは有るだろう。
その中に、ファントム消失に関する情報があれば最高だ。ある、とは限らないが、リュクレーヌには自信があった。
わざわざ、フランに銃を託した事、自分とフランを引き合わせたことが、きっと鍵となっているのではないかと思ったからだ。
「リュクレーヌの実家!?」
「ただ、郊外だからな。ちょっと遠出になる」
ノスクルム邸はロンドン郊外の落ち着いた場所に構えていた。今回の調査は遠征とも言える。
遠出ともなれば、リュクレーヌのマスカとしての能力を使うべきだろうかとフランは問いかける。
「じゃあ、空飛んで行く?」
「いや、外にはただでさえマスカがうろついている。ファントムに見つかったら厄介だ。こっそりと行こう」
外に出れば、マスカが大量にいる。そんな中、空を飛ぶ人間など居たら、真っ先に標的にされるだろう。
それならば、出来るだけ目立たないように、確実に実家へと向かう事が安全だと思えた。
「あっ、長旅になるかもしれないから荷造りしっかりしておけよ」
一日で到着するような道のりではない。途中で宿に泊まったりもするだろう。
念のための指示をして、リュクレーヌは食後の甘いココアを口にした。
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