ミルキーパンプキン
◆
新聞社から事務所に帰ってくると、フランは早速キッチンへと向かった。
日照時間が短くなり、日が沈むのが早い。もう外は夜の色に染まっていた。
フランは早速、牛乳と野菜を取り出した。その様子を背後からリュクレーヌが伺う。
「何作るんだ?」
「今日のメニューはかぼちゃのシチューだよ」
「おぉ、最近肌寒いしな。ちょうどいい」
「あとは、チーズバケットとデザートはミルクプリンね」
牛乳とチーズ、今夜のメニューに共通する事項をリュクレーヌが指摘する。
「乳製品多くないか?」
「だって、カルシウム必要でしょ。さっきのやり取りでストレスたまって……」
新聞社での一幕は相変わらずストレスフルなものだった。それもこれもあの編集長の人を食ったような態度のせいだろう。
あぁ言えば、こう言う。手など出そうものなら記事にするぞと脅す。世論の手綱を握っているのは我々であると言うように。
「あぁ、そういう事か」
「リュクレーヌだってムカつかない?僕普通に腹立ったんだけど」
「いや、腹は立つけどもう慣れてきたな。アイツはもう、あぁいうやつなんだって、割り切ることにした。いちいち苛ついていたら立てる腹が足りなくなる。それに、証拠が無いのは事実だしな」
彼らと対峙するのは、今回で二度目。あの編集長の嫌味にも慣れてきた。慣れるべきではないのかもしれないが。
証拠が無いのであれば、疑う以上の事に進むことは出来ない。
「リュクレーヌ……」
「まぁ、何かしら悪事の証拠を掴んだら突き付けるけどな」
だからこそ、言い逃れのできない証拠があればその時は、徹底的に追い詰めると決めている。
「牛乳プリンは、やめておこうか」
「それは要る」
部屋には、カボチャがたっぷり入ったシチューとパンの甘い香りが充満する。
「いただきます」と食前の挨拶をすると、二人はスプーンを取り、滑らかな橙色のスープを口に運ぶ。
よく熟れたかぼちゃの、砂糖菓子とは違う自然な甘みがミルクと混ざり合い、口いっぱいに広がった。
シチューとパンを半分くらい食べたところでフランは今日の聞き込みの成果とも言える話を始めた。
「それにしてもあの宗教団体何だったんだろうね」
「さぁな。でもまさかゴーレムに関する情報が手に入るとは思わなかった」
信者の口から出てきたゴーレムというキーワード。まさに自分たちが今追っている存在を思わぬ場所で聞くことが出来た。
おかげで、霧の中でまともに見えなかったゴーレムという存在が一気に晴れた様。
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