テレーノ教
◆
いざ、聞きこみと言っても、フランはリュクレーヌの後を着けるだけだった。
「それで、何処に行くの?リュクレーヌ」
「決まってんだろ?あの胸糞悪い新聞社だよ」
行先はネオン新聞社。ゴーレムに関する記事を、いの一番で書いた張本人だ。
「あぁ、なるほどね。取材しているなら分かるはずだよね」
「そういう事……って、なんだ?アレ」
道中、教会の前に大勢の人が集まっていた。
「人だかりだ」
今まで教会に人混みができる事など無かった。ではこの人だかりは何だ?
好奇心に負けたのか、リュクレーヌは教会の方へと近づいた。
「テレーノ教ばんざーい!ばんざーい!」
「わっ、なんだ、なんだ?こいつら」
ある者は祈り、ある者は称え、ある者は涙を流していた。
──テレーノ教?そんな宗教があったのか?一体何の?
リュクレーヌの知っている限り、その様な宗教団体はつい最近までは無かった。
二人は、熱心に目を瞑りながら祈りをささげる男に近づいた。何か、独り言を言っている。
「ミーナ様……我々をマスカからお救いください……」
「!」
男の独り言に聞き耳を立てると、良く知る単語が耳に入った。
「マスカ」だ。
「リュクレーヌ!今、マスカって……!」
「おい、ミーナ様って誰だ!それは」
祈りをささげる男性にリュクレーヌは食いつくように、声をかける。すると男は案外すんなりと祈る事をやめて、リュクレーヌ達の方を向いた。
「あぁ、テレーノ教の教祖様です。この宗教を信仰すればマスカからゴーレムの御加護で我々を守ってくれるのです」
次に出てきたキーワードは「ゴーレム」
「なんだと!ゴーレムが!?」
教祖ミーナによって、ゴーレムが人間を守る。だとすれば、自分達の探していた人物はもう、目の前なのではないか。
フランも同じ事を考えていたようで、リュクレーヌに耳打ちをする。
「ねぇ、もしかして……この宗教の教祖様がゴーレムの所有者なんじゃ……」
「そうかもしれねぇな。教祖様に会わせてくれることはできます?」
ここまで来たんだ。リュクレーヌは信者に交渉してみる。
「いや……それはちょっと」
信者はばつが悪そうに声を小さくしていった。その様子を見たまた別の信者が近づく。
「おい、どうした」
これは好都合だ、この人に同じ交渉をしようとリュクレーヌは同じように尋ねた。
「あぁ、僕たち教祖様に会いたいんですけど」
「何を言っているのですか!?我々のような一般人がミーナ様に会えるものですか!?」
頭でも狂っているのかと言うように、もう一人の信者は声を裏返した。
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