テレーノ教

 

いざ、聞きこみと言っても、フランはリュクレーヌの後を着けるだけだった。


「それで、何処に行くの?リュクレーヌ」


「決まってんだろ?あの胸糞悪い新聞社だよ」


行先はネオン新聞社。ゴーレムに関する記事を、いの一番で書いた張本人だ。


「あぁ、なるほどね。取材しているなら分かるはずだよね」


「そういう事……って、なんだ?アレ」


道中、教会の前に大勢の人が集まっていた。


「人だかりだ」


今まで教会に人混みができる事など無かった。ではこの人だかりは何だ?

好奇心に負けたのか、リュクレーヌは教会の方へと近づいた。


「テレーノ教ばんざーい!ばんざーい!」


「わっ、なんだ、なんだ?こいつら」


ある者は祈り、ある者は称え、ある者は涙を流していた。

──テレーノ教?そんな宗教があったのか?一体何の?


リュクレーヌの知っている限り、その様な宗教団体はつい最近までは無かった。

二人は、熱心に目を瞑りながら祈りをささげる男に近づいた。何か、独り言を言っている。


「ミーナ様……我々をマスカからお救いください……」


「!」


男の独り言に聞き耳を立てると、良く知る単語が耳に入った。

「マスカ」だ。


「リュクレーヌ!今、マスカって……!」


「おい、ミーナ様って誰だ!それは」


祈りをささげる男性にリュクレーヌは食いつくように、声をかける。すると男は案外すんなりと祈る事をやめて、リュクレーヌ達の方を向いた。


「あぁ、テレーノ教の教祖様です。この宗教を信仰すればマスカからゴーレムの御加護で我々を守ってくれるのです」


次に出てきたキーワードは「ゴーレム」


「なんだと!ゴーレムが!?」


教祖ミーナによって、ゴーレムが人間を守る。だとすれば、自分達の探していた人物はもう、目の前なのではないか。

フランも同じ事を考えていたようで、リュクレーヌに耳打ちをする。


「ねぇ、もしかして……この宗教の教祖様がゴーレムの所有者なんじゃ……」


「そうかもしれねぇな。教祖様に会わせてくれることはできます?」


ここまで来たんだ。リュクレーヌは信者に交渉してみる。


「いや……それはちょっと」


信者はばつが悪そうに声を小さくしていった。その様子を見たまた別の信者が近づく。


「おい、どうした」


これは好都合だ、この人に同じ交渉をしようとリュクレーヌは同じように尋ねた。


「あぁ、僕たち教祖様に会いたいんですけど」


「何を言っているのですか!?我々のような一般人がミーナ様に会えるものですか!?」


頭でも狂っているのかと言うように、もう一人の信者は声を裏返した。

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