極秘取引
だが、アドミラから出た言葉は意外なものだった。
「釈放だ」
「……釈放?なんでまた」
「貴様のアマラ軍への配属が決まった」
思わず「はぁ?」とルーメンは顔を歪めた。意味が分からない。
自分の存在は極秘のはずだ。
マスカ討伐の実験に関わったアマラしか、ルーメンを知ってはいけないはずだったのに。
「アマラ軍に、配属?俺の事は知られちゃまずいだろ」
「だから、別の名を名乗ってもらう。当然マスカである事も極秘に──」
「そこまでして俺がアマラ軍に所属する理由は?」
「フラン・コンセルタという少年と組んでもらうため、だ」
唐突に出された全く知らない名前に、ルーメンは更に困惑した。
「誰だ、そいつ」
「私の娘の友人で、アマラ軍に配属されている少年だ。彼はファントムと──いや、貴様の弟、ルーナエと接触している」
「ルーナエと!?」
「悪い話ではないだろう。」
わざわざ言い換えたという事は、ファントムの時の意識ではなく、ルーナエの意識を持つときに会ったという事だろう。
なぜ、アマラの少年が?疑問はあったが、確実に言える事が一つだけあった。
もしも、この案に乗って、ルーメンがアマラ軍になってしまったとすれば──
「……そのフランって子もアンタに利用されてしまう訳か。かわいそうにな」
「何?」
ルーメンの嫌味を含んだ発言にアドミラの表情が険しくなる。
だが、そんな事は構わないとルーメンは大きく息を吸った。
「断る。もう俺は、アンタの元では働かない!」
もう、自分の心を壊すようなことはしたくない。いや、自分だけではない。
見知らぬ少年が同じように傷つくのならば、この話は断るほかないだろう。
「貴様……弟のやった事が分かっているのか!」
「分かってるよ。だから、俺は俺なりのやり方で責任を取る」
しかし、無責任に何もしないという訳にはいかない。
ルーナエの生み出したマスカを、人的被害を出来るだけ少なく、かつ効率的に倒す方法をルーメンは思いついていた。
「ふむ……それはどういったものだ」
「探偵事務所を設立して乖離が起きる前にマスカを見つける。見つけたマスカの身元はアマラ軍に引き渡すよ。まぁ……捕虜を集めるのと同じだよ」
乖離が起きる前に確実に証拠を掴み、マスカを確保してしまうという訳だ。
そうすれば、殺戮兵器となった後よりも、格段に犠牲者を減らすことが出来るだろう。
「だから、金と件のフランだけ寄越せ。さもなくば、お前のやってきたことを軍中に暴露してやる」
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