面会と助手の事情聴取

不気味な雰囲気を纏う牢には、確かに探していた人物が居た。

リュクレーヌはフランを見るなり、呟くように名を呼ぶ。


「フラン……」


「リュクレーヌ!」


フランが牢の方へ駆け寄った。


──フランが、動いている。生きている。

リュクレーヌはひとまず安堵して、胸を撫でおろした。


「無事だったんだな」


「急所は外れていたみたい」


「そうか……よかった」


──本当に、良かった

死んでしまっていたらどうしようと、思っていた助手が無事だった。


それだけで良かった。


良かったはずだった。


「ねぇ、リュクレーヌ」


「ん?何だ」


「犯人は僕を生かしたかったのかな?」


生きていた事を安心したのも束の間。

その様子を、犯人に結び付けるような問いが投げかけられる。


疑われているのだとしたら──


「俺じゃない!」


強く否定する。

お願いだから、お前だけは信じてくれと懇願するように。


「大丈夫、信じるよ」


フランは、にこりと微笑んだ。

表情と言葉にリュクレーヌは一安心する。


ところが。


「リュクレーヌが、僕に全てを話してくれたらね」


「……っ!」


交換条件。全てを話せば全てを信じる。

まるで取引を持ち掛ける裏社会の人間の様にフランの言葉と瞳は強かった。


「……分かったよ。全部話す」


だとしたら。取引に応じる。


応じるしか、道は無かった。



「それで、何が訊きたい?」


ここまで来たら仕方がない。どんな質問にも答えてやると言った態度で

リュクレーヌは質問の内容を訊く。


フランは、頭の中の引き出しに入れていた聞きたいことを一つずつ小出しにした。


「まず、大前提として確認。リュクレーヌはマスカで合っている?」


一つ目の質問は確認だった。

リュクレーヌが何者なのか。マスカなのか、人間なのか。


本人に確認する前にお互いに離れ離れになったため、一番初めに聞いておきたかった。


「……あぁ。俺は人間じゃない。マスカだよ」


──やっぱり、か

予想はついていた。分かってはいた。


だが、今はこの前提が肯定された事によって生まれた、もう一つの疑問を投げかけるしかない。


「じゃあ、どうして乖離しないの?」

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