孤独の幽閉施設
◆
自称名探偵は殺人事件の容疑者として冷たい闇に閉ざされた監獄へと連行された。
だが、ここはただの監獄ではない。
壁のいたるところには随分と大げさな十字架が掲げられている。
容疑者であるリュクレーヌには重たい鎖巻き付けられ、その先は杭で打たれている。
当然、躰の自由は効かない。
まるで、何かの儀式のようなスピリチュアルな空間。
そう、ここは警察の牢屋ではなく、アマラ軍の地下にある幽閉施設だった。
幽閉施設という事もあり、不気味な雰囲気が漂う。
臆病な性格の者ならば逃げ出したくなるような空間。
だが、リュクレーヌは随分と慣れた様子で、闇に包まれた天井を眺めていた。
「半年……ぶりか」
どうやら、ここに入るのは初めてでは無いようだ。
半年ぶりの不気味な牢は、どこか懐かしさすらあった。
勿論、あまり、良い思い出は無いが。
リュクレーヌが感傷に浸っていると足音が一つ、また一つ大きくなり、何者かが牢へと近づいた。
「懐かしいか?この場所は」
牢の前で立ち止まった、男は低い声で問う。
「あぁ、お久しぶりです」
この声は知っている。とリュクレーヌは挨拶をした。
半年前、牢に入っていた時に世話になった者だ。
「人を、殺したんだってな」
男は、牢越しにリュクレーヌを見下し、蔑むように言った。
視線が意味する侮蔑の意を察したリュクレーヌはすぐさま容疑を否認する。
「冤罪ですよ」
「どうだかな」
ところが男は吐き捨てる様に、リュクレーヌの否認を疑った。
「やはり、貴様は釈放すべきでは無かった」
それどころか、リュクレーヌを外の世界に放った事を後悔すらし始める。
おかげで一般人に被害が及んでしまった。と責める様に。
これ以上無駄だ。彼は自分を疑っている。
リュクレーヌはこの男に信じてもらう事は端から諦めていた。
「……ご心配なく。自分の無実くらい自分で証明してやりますよ」
自分の事は自分で処理するしかない。
暗い牢の中、改めて孤独を噛みしめた。
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