助手のやってきた事
マスカは二体、フランの目の前に対峙する。
一体には先ほどダメージを与えた。このまま畳みかけよう。
とフランが銃を構えた時だった。
「痛い……痛いよう」
「っ!」
少女のすすり泣くような声。
先ほどフランが攻撃したマスカからした。
「どうしてこんな事するの?酷いよ……」
もう一体のマスカも、鳴き声でフランに抗議する。
フランは、ぎりっと銃を強く握る。
「ごめんね……けど君たちを救うためなんだ!」
彼らの魂を解放するしか救済の道は無い。
──はずだった。
「救う?」
「何を言っているの?」
きょとん。とあどけなさを残した少女の声。
純粋な疑問が二人分、フランに投げかけられた。
まるで、彼の意思を、覆してしまうように。
「なっ……君たちの魂は、ファントムのものにされちゃうんだよ!」
「だから?」
それがどうしたと言うように一体のマスカは言う。
「え……」
「私達、別に救ってもらいたくないよ?」
マスカは救済など望んでいない。
例え、魂がファントムの所有物のままでもいい。
彼女たちは元々、物のように扱われてきた存在だ。
いまさら救済など求めていないのかもしれない。
全てを、諦めていたのかもしれない。
「そんな……」
フランは銃を構えていた右手をだらりとぶら下げてしまった。
──だとしたら、僕のやっている事は何だ?
「お兄さん達がしていることは、ただの破壊行為だよ」
「!!」
フランの心を見透かす様に、彼女たちは問いに答える。
「私たちの仲間を傷つけて無理矢理壊しているだけ」
破壊。
行為としては事実かもしれない。
行為だけを見れば確かにフランはマスカを壊していた。
「違う……違う、違う、違う!!」
だが、そこにはマスカに囚われた人間の魂を救いたいと言う意思があった。
決して、ただマスカを壊したいだけなんていう感情は無かった。
それに、リュクレーヌに任された仕事だって、マスカの『破壊』ではなく『救済』のはずだった。
今までも、これからも、そのはずだったのに──
「違わないよ?私達はそんな事、望んでない」
「ちが……」
「私達の仲間たちは、お兄さんに殺されたんだ」
今まで救ってきたマスカは救済など望んでいたのだろうか?
フランは自問自答のどろどろとした渦に飲み込まれる。
「あ……」
メリーも、フェステリアも、デルも、アレフレッドも救済したつもりだった。
だが、彼らが救済など望まず、マスカとして、生き続けたかったなら?
救済は一人よがりな破壊行動にしかならなかったのではないか?
──救済だと思っていたのは僕だけだった──だとしたら、彼らは僕が壊した
フランはその場に膝をついてしまう。
「はは……そっ……か。そう……だったんだ」
マスカを破壊したという事実がフランの心を破壊した。
今まで向かっていた目的や信念もろとも粉々に砕かれてしまったのだ。
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