帰宅後の会議

帰りは下り坂なのでスムーズだ。


しかし、郊外から、ロンドンの街までは軽く一時間程ある。


馬車がルーナ探偵事務所に着いた頃には、日は暮れ、夜へとなっていた。


夕食を済ませて、後は寝るだけのタイミングで、リュクレーヌはソファに座り何やら考えている。


そんな彼にフランは「どうしたの?」と声をかけた。


「いや、今日の事だけど」


「うん」


「カレンとマリー、あの双子はマスカで間違いない」


「……やっぱり、乖離しないといけないの?」


「いずれはな。今はまだできない」


マスカだと分かっているのに乖離はまだできない。

フランは「どうして?」と理由を問う。


「彼女たちは自分達が命を落とした記憶がない。マスカになるように唆した相手──仲介人が必ずいる。」


「アマリリスさんじゃないの?」


「あの人がマリーをマスカにするメリットが何もないんだよ」


アマリリスは、マリーの病気が完治した事や退院する事に強い拒絶をしていた。


寧ろ、このままずっと病気のままでいて欲しいとすら見受けられた。

だとすれば、マスカにして病気を治してしまおうなどという事をするか。


「それに、注射をされたのは元気になった後……つまり、マスカになった後だ」


「じゃあ、ファントムが殺したって可能性は?」


「たしかに奴にはできそうだけど、マスカは好きな死体に転生できるシステムだ。その選択の余地を消すか?」


ファントムの役目は仮面を売るために契約をする事。


わざわざ手を下すまでするだろうか。


だとしても──


「そもそも、彼女たちは都市伝説の事をよく知っていなかったからな。仲介人が吹き込んでいるはずだ」


双子はファントムの存在も都市伝説も知らなかった。


だとしたら、都市伝説を吹き込んだ仲介人が居るに違いない。


「その誰かが分かるまでは、乖離は出来ないんだね」


「そういう事。時間は無いけどな」


契約から乖離までタイムリミットは一ヶ月。


それまでにフランが手を下さなければ、双子の姉妹は殺戮兵器へと姿を変えてしまう事になる。


だからこそ、急いでこの事件の仲介人を見つけなければならない。

 

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