第3話 あと、6か月

その日以来、旦那様は、屋敷に帰ることが少なくなりました。


ここまでになれば、いくら私でもわかります、旦那様に外に女がいることくらいは。


 お父様もお母様も、心配して様子を見に来てくれますし、旦那様に対してかなりお怒りです。


ですが、旦那様に対しては何も言わないよう、お願いしてあり、渋々ですが、私の意見をききいれてくれていることは、感謝しかありません。


私は、この時になっても、まだ、やり直せるのではないか?  と思っていた甘ちゃんだったのです。


ですが、現実はそれほど甘い訳もなく、心がえぐられる日々がやってきます。


旦那様は、ご自分に向いていない、慣れない仕事で神経をすり減らし、少し心が弱くなってしまっただけ、そう思っていたので、お酒の匂いをさせ、朝帰りをして、友達と飲んでいたら朝になってしまった、そんな言い訳を黙って聞いてるだけの毎日でした。


本当は、悪阻つわりがひどくて体が動かず、浮気について話し合うことなど出来なかったんですけどね。


ようやく、悪阻つわりが収まり、ベッドから起き上がれるようになった頃、


「ふん、やっと起きてきたのか、伯爵家のご令嬢ともなると、優雅でいいな、一日中寝ていても誰も文句も言わんし、起き上がってきただけで、本や花束、お菓子がひっきりなしに届くなんて、うらやましい限りだ。」


吐き捨てるように、言葉をぶつけてくるこの方が、私の旦那様? この一月半程、私がどれほど苦しんでたかその目で見て、おわかりでしょうに。


悪阻つわりは病気じゃないんだろう、甘ったれた奴がツライ、ツライと大げさにしているだけだと聞いたけど、その通りだよな。」


ああ、この目の前にいる方は、私が愛した旦那様ではいらしゃらない・・・・もう、本当は心のどこかでわかっていても、現実から目を背けていただけだ。


目をつむり、ベッドに逃げ込む時間は終わりました、それでも、旦那様を見上げる私の目から、ポロポロと涙が零れてきます。



「何を、泣いてるんだ、 ちっ、分かってるだろうがお前に対する愛情なんてかけらも残っていないから、今更、反省したって、もう遅いんだよ!」


「私は反省することなど、ありません。それより、ご自分の態度を改めたほうがよろしいのでは?」


「はん、お前のそういうところが嫌いなんだよ! いつも、いつも、上から目線で俺を見下しやがって、多少は頭がいいのかもしれないが、女は少しぐらい、か弱いほうが守ってあげたくなるもんなんだよ。」


もう、私も旦那様を気遣う必要は、ありません。


「私は旦那様を見下したことなどありません、ただ私は領地経営についても、貴族のマナー、王宮での振舞も、小さい頃から教育を受けてきております、学び始めた貴方よりも出来て当然です。」


「だから! そういう態度が問題なんだって言ってんだよ! お前がもっと可愛げのある女だったら俺だって浮気なんかしなくて済んだのに、全部、お前が悪いんだよ。」



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