伝言

勝利だギューちゃん

第1話

外は一面の銀世界。

今年の夏は猛暑だった。

で、外は冬が大活躍。


今年は、秋がなかった気がする。

秋の精霊さんも、コロナにやられたか。


しかし、冬の寒さも夏の暑さも、コロナには負けてしまう。

それだけ、強力なウィルスなら、平和に活用できないものか・・・


まあ、フグは自分の毒では死なないので、それと同じだな・・・


僕には、見えないものが見える。

見えなくてもいいのに・・・


近くにいるんだから、嫌がらせはやめてほしい。

出てきてほしい・・・

支度が面倒だ・・・


「だめ」


あっそう・・・

仕方なく準備をする。

普段の恰好なら、見えないものは見えない。

だが、ある事をすると、見えてしまう。


それ用の眼鏡?

違う。

四つ葉のクローバー?

妖精では、あるまいし・・・


それは・・・

アイマスク。


視界に入るものがすべて、シャットアウトされる代わり、そのものが見える。

そして、その姿が見えた。


「できたよ」

「久しぶり」

「いつ以来だ?」

「7年ぶりだね」

「そんなに経つか・・・」


僕が見えるもの。

それは、悪魔。

あの世へといざなう案内人だ。


「悪魔じゃなくて、天使」

「同じようなものだろ?」

「全然、違う」


姿かたちは、女子高生。

でも、それは見る人の願望が具現化されているらしい。


本来は・・・

しらん。


「で・・・どうした?」

「私が来るのは、ひとつしかないでしょ?」


7年前に、彼女が来た時は、親父が死んだ。

その魂を迎えに来たのだ。


今、母が病気中で、認知が激しい。

・・・ということは・・・


「お袋を、迎えに来たのか?」

「ううん。違う。その逆」

「逆?」

「君のお父さんが、言ってたんだけど・・・」

「元気にしているか?魂だけになっているのに、変だけど・・・」

「うん。大好きなゴルフとお酒に明け暮れている」

「それは何より」


やはりな・・・

まあ、安心した。


「で、そのお父さんからの伝言なんだけど」

「うん」

「『お前はまだ、こっちに来るな』って・・・」

「こっちに?」

「まだ未練があるでしょ?だから自殺しないように、釘をさしにきた」


わざわざどうも・・・


「で、お袋は?」

「寿命通りといっておくわ」

「アバウトだな」

「まあね」


なんなんだ?

この悪魔・・・


「天使!」


どうでもいいや・・・


「じゃあ、また来るからね」

「今度はいつだ?」

「それは、神様次第」

「責任転嫁だな」

「下っ端の特典」


こうして、アイマスクを外した。

元の世界が、広がる。


でも、気まぐれだから、立ち寄りにくるんだろう・・・

来なくていいが・・・


さてと、

もう少しだけ、抗いますか・・・

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伝言 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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