ドラゴンのいる山岳地帯へ


 俺はうきうきな気分で北の山岳地帯へと向かっていった。そんな時だった。


「ん? なんだ? あの人だかりは!?」


 目の前には数人の男達がたむろしていた。見た目からしてどうやら商人のようだ。


「聞いたかよ!」


「ああ!」


「ドラゴンの出現でこの街道通れないらしいぜ!」


「マジかよ。近道だったんだけどな。したかねぇな! 遠回りだけど別の道で行くか」


「だよな。仕方ないよな」


 商人たちが困り果てていた。


「おじさん達、どうしたの?」


 俺は尋ねる。


「ああ。この先にドラゴンが出たらしいんだ。だからこの先の道は封鎖されてて通れないんだ」


「だったら、俺が行って倒してこようか?」


「な、なにを言っているんだ!? だって君は一人きりだろう!」


「そんなんでドラゴンを倒せるわけないだろう!」


「んっ!! 待てよ!! 君の紋章!! その服の紋章! それはトップギルド『栄光の光』のものだろ! 間違いない!! 君はあの『栄光の光』のギルド員なのかい!?」


「ああ。元だけどね」


 嘘は言っていない。嘘は勿論は言っていない。ポイントギフターとして虐げられてきたが、ギルド員であった事に一点の曇りもない。


「ほ、本当かい!? それは!!」


「『栄光の光』っていえばトップギルドだろう!」


「その栄光の光のギルド員ならドラゴンを倒す事だって不可能じゃないかもしれねぇ!」


 いや、だから元だけど、元。まあいい。


「頼む! この道は近道なんだ! 遠回りすると何日も時間をロスする事になるんだ! この街道を通れるようになったらそれに越した事ないんだよ!」


「任せといてくださいよ。商人のおっさんたち!」


「ああっ! 頼む! 景気づけにこいつを持って行ってくれ!」


 俺は商人のおじさんに何かを渡される。袋だった。


 俺は少し開けて匂いを嗅いでみる。


強烈な匂いがした。嗅ぐだけで辛味が脳に伝わってくる。


「これ……まさか貴重な香辛料じゃ!?」


一袋でいくらになると思ってるんだ……?! この山岳地帯でしか採れない貴重な香辛料だぞっ!


「ああ! ドラゴンたおしてくれるってんなら安いもんだ」


「ここら辺で取れる珍しい香辛料だ。俺達はその香辛料を運んでいたってわけさ」


「ありがとう! 商人のおっさんたち!」


「ああ! 期待してるぜ! 坊や!」


 俺はテンション高く、北の山岳地帯を登っていく。


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