第38話 あとがき
「義足の歌舞伎役者 澤村田之助」を読んでくださった皆様、どうもありがとうございました。37話まで長い道のりでしたが、読んでくださる方がいるという灯りが背中を押してくれました。
この小説を書いたきっかけは、澤村田之助とヘボン先生の継ぎ足の話が153年前の開港場横浜を象徴していると思ったからです。
私が初めて岸田吟香の名を知ったのは、日本で最初に「卵かけご飯」を考案したとテレビで見た時です。私自身は生卵がちょっと苦手なので試したことはありませんが、面白そうな人だという記憶は何年たっても消えませんでした。
小説の柱となる人物を考えた時、ふと吟香の名が思い浮かびました。
調べてみると、新聞の発行だけではなく横浜・江戸間の海運会社や氷室商会を設立した実業家であることがわかりました。
また杉浦正さんが作られた吟香の年譜を見ると、ヘボン先生との深いつながりや、様々な人との交流が記されていました。
慶応3年10月8日の欄には「へボンが切断した沢村田之助の足の膏薬をはり替えに行く」とあります。
筆まめな吟香の日記にそのようなことが書いてあったのでしょうか。
不謹慎ですが思わずくすっと笑ってしまいました。
吟香、ヘボン先生、田之助の輪はこれでつながり、物語が始まりました。
彼らは試練を乗り越え、それぞれの夢を叶えた傑物だと思います。
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