第34話 目的地
翌朝シーラに抱きかかえられてフォルクスは目覚めた。何故か手が胸を触っていたので魔が差してしまい、欲望に負けついついモミモミしてしまっていたが、我に戻り慌てて手を引っ込めた。幸いまだシーラは寝ていたようで少し呻くだけだった。初めて直接触った胸の感触はとても良く、シーラの側から胸に手を持って来ていたとはいえ、ついつい揉んでしまった事に対して罪悪感を覚えたのと又もや謎の効果音がした。
シーラの事が更に気になって仕方がないようになった。異性の体に意識をせざるを得ないからだ。見事にシーラの作戦通りの行動を取っていたのと、シーラに惹かれていった。しかもシーラは狸寝入りしていて、胸を揉まれたのは恥ずかしかったが、作戦成功と心の中で呟いてガッツポーズをしていた。
フォルクスは恥ずかしかったが、それでも堂々とするように目覚めの挨拶をし、先に着替えてからトイレに行くようにした。その間にシーラが着替えるようにとの配慮だ。だがよくよく考えると、シーラがカーラ達の部屋で着替えれば済む話であった。
朝食を早目に食べ、今日の旅をスタートした。
時折ゴブリンだとか、獣型の魔物が極僅かに出ただけで順調に進んでいた。そして問題の村に着いたのはお昼少し前位だった。
昼に着いたので活動時間が1日半位になる。
早速ギルドで貰った地図にある山を目指す事にしようとしたのだが、村から歩いて20分程の山の麓なのだが、現地に着いて周りを見ると何故これほど近くて人里を襲って来ないのか不思議だった。家畜はやられているようだが、民家が襲われた報国は無いらしい。
ただ、依頼書の簡易地図では場所が分からず何処だろうと、あーでもない、こうでもないと村の入り口近くで最初は屯していた。だが、誰かのお腹が鳴ったので、とりあえず食堂や宿がないか確かめる為に村に入った。どうやら食堂は有るようなので、聞き込みを兼ねて昼を済ませる事になった。
食堂で村の人から大型の魔物の目撃された位置を教えて貰い、食事の後、教えられた場所に向かうのであった。
馬車で行くには道が厳しいという事で、お金を払馬車を預かって貰う事になった。
隊列はフォルクスが先頭、べソンとリズが殿を務める。フォルクスのすぐ後ろはラティス。カーラとシーラは中衛になる。これらは前日の打ち合わせでフォルクスが決めていた。
そうやって目撃位置に着いたのだが、生憎と魔物の気配がしなかった。
その為、周辺の探索をする為に山の中に入る事にした。30分位歩いていたのだが、気配が無かった。一度麓に戻る事にし、道を戻り始めていた。
半分位戻った辺りでオークの群れが現れた。10匹位が現れただろうか、フォルクスの風魔法であっさりと切り裂いていった。現れた直後に倒した為に一箇所に纏まっていたのだ。チームでの初の本格的な戦闘の為、自信をつけるのもありフォルクスのが魔法を放ち、十分に対処可能な相手だという事を皆に理解してもらう目的があり一気に倒していたりした
オークの死体の周辺にラティスが結界を張り、ラティスが周辺の警戒、残りの者達で魔石の抜き取りなど行っていった。魔石を抜き取った後のオークの死体は収納に入れていく。全てを売ればかなりのお金になるらしい。食肉としての需要が高いのだ。味が良いというのも有るが、倒した後に持ち運びが困難な為に、大量には出回らないのだ。
フォルクスは使用する魔法の属性選びは得意属性の風魔法を無意識で選び使っている。得意属性の為魔力消費量が少なく、更に同じ魔力を使った場合威力が高いのだとなんとなく認識していた。特に即時発動可能なウインドカッターを愛用していた。勿論魔法学校にてコピーした各種魔法も使えるので、風魔法と相性が悪い場合はちゃんと切り替える予定だが、あくまでコピーであり、その魔法の本質を理解している訳ではない。
魔石や体の回収を終えた後、進行を再開した。
そうして進み出した直後に、一際大きなオークに出くわした。遭遇戦になるのだが、フォルクスは何となく通常のオークではない個体だと分かった。
道の脇から急に出てきた為に遭遇戦になってしまったが、偶々フォルクスの前に現れた為、フォルクスがその大きなオークと戦い始めた。他の者はどうやらそいつが引き連れてきた通常体のオーク達に取り囲まれてしまい、乱戦になっていた。シーラが詠唱を始めていた
「紅蓮の炎よ我が求めに応じ敵を討ち滅ぼす力を解き放て、ファイヤーランス」
詠唱すると腕の直ぐ横に魔法陣が顕れた。その魔法陣から細長い炎で出来た槍状の炎が少し出ていて、その槍の炎を掴んで抜き取り、片手を前に出して狙いを定めて投げつけていた。槍を掴み投擲する感じだ。手で炎を掴んで投げているのだが、術者は火傷しないのだと言う。一つ放ち終わると次は展開中の魔法陣に手をかざし、魔力を籠めると次が出てくるのを繰り返しいた。
気が付ば40匹位に囲まれていた。カーラが水の精霊に支援を頼んでいたが、もしその様子を見ていたならば、神秘的な感覚に我を忘れて見ていたであろう。
「我が仲間を救う為に我に力を貸し与え給え。彼の者達に水の眠りを。ウォーターバルーン」
カーラの手からではなく、カーラのすぐ近くにいるもわっとした「何か」から、球状のような水の塊が放たれた。それがゆっくりとだが、10個展開されそれぞれが別のオークに向かって行った。
体の周辺に絡みつく為に嫌がって手で払うが、手で払えなかった。
手に絡みつき、そこから頭に向かってその水球はどんどん登って行き、ついに頭に辿り着いた。そして水球は頭に覆い被さる形で、頭が水没している。その水球がくっついているので、オーク達は必死になって払おうとするが、一向に払えなく、ついに息ができない為に倒れ、やがて動きを止め、息を引き取った。
そうしてそのオークが倒れると、その水球もやがて消えていった。カーラがとなりに何となくいる何かに向かって
「水の精霊よ感謝致します」
そう言ってもやっとした何かにお辞儀をしていた。
フォルクスはオークのリーダーと戦いながら皆の事を気にしていた訳ではないのだが、たまたま、戦っているリーダーの後ろでカーラが精霊を使役しているのが見え、なる程、これが精霊の力かと感じていたのだ。ただぼんやりとしか見えなかったのは何故なのかというのは後で聞こうかと思っていた。
べソンやリズの方は特に問題なかった。ラティスも剣で戦っており、剣でオークを倒して行く。
シーラはピンチの仲間や、背後を襲おうとしている奴に攻撃をしていた。乱戦の為に威力の高い範囲魔法が使えず、サポートに回っていた。そして魔法を放つと無防備になる為にラティスに自分とカーラの護衛を頼んでいた。
5分と経たないうちにオークを全て倒した。フォルクスが戦っているリーダーと思われる奴以外のオークは死体となって転がっている状態だ。
リズとべソンが道の両脇に行き、逃さないぞと言わんばかりに待ち構えている。
ラティスはカーラとシーラの護衛をする為に側にいる。カーラにしろシーラも、戦闘を繰り広げているフォルクスへの支援の為の攻撃魔法が使えなかった。邪魔になるからだ。
フォルクスの戦い方は正直に言うと下手である。ステータスに任せであり、力任せであり、素早さ頼みでがむしゃらに剣を振る感じなのだ。
一度蹴られて吹き飛び、距離を置いた瞬間に風魔法で切り裂くも表面にしか傷がつけられなかった。
そしていよいよ剣は単調な攻撃と威力がなく、警戒すべきは風魔法と思わせておいて、フォルクスはジャンプを使った。
どうやってかと、どういう理屈でかわ分からないが、ジャンプしたいと思えば足の下に風が吹き、足元から押される形で思った方向にジャンプするのだ。カーラだけは、ほほうと感心していた。気難しい精霊が、姿を見せる段階にまでなっていないにも関わらず、無意識下の使役に黙って従うのだから。寧ろ精霊側から自分を使って欲しいとさえ願っているのだとカーラには感じられていた。
そして、フォルクスは背後に一気に飛び去るべく、ムーンサルト宜しく空中で回転しながら、背後から首に襲い掛かり、見事に首を落としてリーダーを倒したのであった。
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