第25話  戦略

 買い物が終わった者達が宿に集まって来て、全員が揃ったのでフォルクスは宿でラティスの追加料金を払い部屋に行くのであった。


 シーラは少しサイズが合わないかもと言いつつ、真新しい服をラティスに渡していた。やはりラティスの荷物も悲しい程少なく、年頃の女性が着るようなのではない服がテントの中に有りため息をついたものである。だがしかし、とりあえず当面の物は揃った。


 ラティスはひたすら感謝をし、申し訳ないと繰り返していた。


 部屋に戻り少し落ち着いてから皆と話し合いをする事になり、お茶を飲んで少し休んでいた。


 皆がまったりし始めたので、会議の開始を告げ、フォルクスは女性陣の顔を見渡しながら戦略について語り始めた

 

「この試験が終わったら、かなりの確率で君達は自分の初夜権を買い戻す事ができるようになるんじゃないかな?」


 シーラが驚きながら


「えっ?どういう事よ?」


「うん、今日ギルドの受付のお姉さんが言ってたろ?ギルドが魔石を買うのは冒険者からだけだと。あいつらの中に冒険者登録をしている奴が何人いるかなんだよな。それとね、登録者がいないチームのうち、そのルールに気付いたチームが幾ついるかが鍵なんだよ。ギルドが買取に来る時間を後から言ってただろ?ギルドの受付が閉まる時間以降なんだよ。ギルドの人達がギルドの本業務を終えてから来るんだ。だからね、慌てて冒険者登録をしようとしても、冒険者登録はその場では出来ないんだ。結果的に学校に魔石を持参した時点で既に手遅れなんだよ。」


「それってどういう事よ?」


「そうだね。折角大枚を叩いて魔石を持って来てもギルドは買い取ってくれないよ。殆どの奴がその事実に気付くのは買取拒否をされた時だよ。講師も言ってたろ?自分で調べろと。買い取ってくれる魔石の種類等を調べたりもするだろうけれども、根本的には魔石を買い取ってくれるのに条件が有るのかというのをギルドにてちゃんと確認しておかなきゃならないんだよね。それも含めての試験だと思うんだよな」


「だからって何なのよ?買い取って貰えなかった人達が失格になるだけでしょ?」


「ふふふ!違うんだなあ!こ・れ・が・さ♪。ここで好機が訪れるんだよ。いいかい、俺達は換金予定の魔石の全てを一度にギルドに出す必要はないんだ。最初に少額の魔石を一人づつ計5回に分けて査定をして貰い、最終的に手形を合計6枚発行して貰う。但し最後の1枚はチームの成績用なので、最後の最後に手元に有る魔石を全て換金して終わりな。それで肝心な詳細だけど、冒険者がいないチームがターゲットだ。親から出して貰ったお金で、そう、大枚を叩いて買った高い魔石を二束三文の額の手形と交換するんだ」


 皆まだキョトンとしていたがカーラだけは頷いていた。


「あくまでも後日ギルドで換金する為の手形、しかもその場で発行して貰った手形の金額で合否を決める。実は俺達って、合格するだけなら無理をして強い魔物を倒す必要がない筈なんだ。でも、1位になる為には万が一俺と同じ事を考える者がいた場合に備え、なるべくレアリティの高い魔物を倒しておきたいんだ。あの様子だと一部の者が気が付いている可能性があるんだ」


 次いでラティスがウンウンと頷く。


「俺達が使えるカードの数、即ち持っている手形の枚数は6枚と限られるけど、合格するのは最大15チームだよね。やろうと思えば合格するチームとを俺達がコントロールできなくもないんだよ。または、単純に稼ぐ事だけを考え、高い魔石を持っている者を優先して俺達が持っている金額の少ない手形と交換するという手もある。どの手で行くのかを予め考えておこうと思ったんだ。勿論換金する魔石のうち俺達が提出する用の手形分を最優先に確保し、最後に換金する。勿論提出用の手形は絶対に手放さない。これは僕が引き受ける。そして適当な魔石を提出し、安い手形を皆にゲットして貰う。そうやって奴らから巻き上げた魔石の金額が何千万かになるんじゃないかと思うんだ。それを人数割りで分ければ十分に初夜権を買い戻す事が可能な額になるのだと思うんだよね。あくまでもチームとして全員の協力の元で実行する必要があるから、全額を人数割りだよ。それであれば君達もちゃんとチームとして稼いだお金であり、配分されたお金は自分の取り分という認識を持てるよね。だから大手を振って自分で稼いだお金だと主張できるだろう?」


 皆目を輝かせていた。


「この首輪のいやらしい所はさ、俺もそうだが君達が自分のお金で買い戻したという認識がないとダメなんだ。例えば今から俺がポケットマネー的なお金を君達に直接渡しても、そのお金は自分で稼いだお金ではなく、貰ったお金だと思うだろうし、俺もあげたお金だという認識になってしまいダメなんだ。大分顰蹙を買うとは思うが、奴らもいい勉強になるだろう。どうだろう?」


 カーラはニコニコしながら


「フォルクスさんは悪知恵がよく働きますわね」


「いやかい?」


「いいえ。そんなフォルクス様が大好きですわ。初夜権をお持ちでなくてもいずれ抱いて頂き、お嫁さんにして貰いたい位ですわ」


「カーラがそう言ってくれると嬉しいが、言っちゃ悪いがまだ君達のよな子供を抱く事はできないぞ。今は君達の初夜権が行使されずに解決する手立てを考えた俺達が格好良く見えるだけなんだろうからさ、まあ落ち着こうな。それにシーラなんか見てみろ。これから大きくはなるとは思うが、まさに今膨らんで成長中の胸だぞ」


「なによ!失礼ね!ラティス位にまで大きくなるわよ。あんたが私の胸が大好きだ、揉ませてくれと懇願して土下座をする位に大きくなってみせるわよ。いずれあんたにちゃんと揉んで貰うんだから!」


 そう言ったそばから真っ赤になっていた。売り言葉に買い言葉で、ついつい勢いに乗って発言をしてしまったのであった。


 フォルクスの悪知恵には皆それぞれ色々の思いがあったが、カーラは感心し、ラティスは凄い凄いとはしゃいでいるようであった。またラティスにとっては久し振りのベッドである。回収したテントは かなり粗末で使い込まれた古いテントで、村長の娘というのはどこに行ったのだろう?というような感じだった。ただ、他の道具は新品で買い揃えていて、違和感があったが、戦略会議はお開きになったのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る