第15話 宿

「どういう事だよ!」


 フォルクスが怒りに震えながらテーブルを叩いたので、周りの注目を浴びてしまった。


 べソンが珍しく助太刀する


「フォルクスは色々有ってな、知らない事が多いんだ。続きは場所を変えてからだ。話題を一旦変えるんだ」


「わ、分かったわ。どこかの宿にする?」


「そうだな、俺達の宿の方が都合が良いだろう。こっちに移れるか?」


「今日はまだ宿を取ってないの。その、野営をしようかと思っていたから」


 フォルクスが少し冷静になり


「金は俺が出すから、俺達の所に泊まれ」


 それからは皆押し黙り、黙々と食べていた。


 フォルクス達は場所を変える事になった。

 宿に行くも、何処もかしこも一杯だった。

 元々6人泊まれる部屋で、フォルクスは3人のリーダーであるシーラに確認した。


「どうする?俺達の部屋は6人が泊まれる部屋だ。追加料金を払えば大丈夫だ。俺達は君達に対して性的に襲わないと誓う。会った当日だから、信じろと言うのは無理が有るのだろうが、野営よりはマシだろ?それに、俺は15才だが、君達は13歳だろ?俺はロリコンじゃないから、君達は抱く対象の年齢になっていないよ。まあ、数年したら分からないけどさ」


 べソンも俺も誓うと言う。


 シーラが悩んでいたが、カーラが


「ゆうま様失礼します」


 腕に手を添え、魔力を少し流していた。その後シーラ達に頷いた。


「この2人は嘘は言わない方々です。兵士としての間に魂に植え付けられた誓いの制約により、自然と自らを律するでしょう。彼らが私達を性的に抱くのは、私達の同意無しにはしなくなりますし、年齢の話も本当です」


「私だけだと信じられないけど、カーラが大丈夫っていうなら大丈夫ね。その、お願いします」


 受付でフォルクスはお金を払い皆で部屋に行く。数日分を支払っており、恐らく入学まで過ごす事になる。


 部屋の前に着き、ドアを開ける前にフォルクスは全員に


「中に入る前にクリーンを俺を含めて全員に掛けるから少し待ってくれ。部屋の中にあまり埃を持ち込みたくないから、埃を落とそう」


 まずはべソンに掛け、次いで自分、リズの腕に触りながらクリーンと呟いて、良いぞと背中を押して中に入れた。

 次いでシーラ、カーラの順だ。


 3人の匂いが気になったのだ。野営をしていたからであろう。多分川などで沐浴か身体を拭いていただけなのだろう。服も水洗いのみだからか、取りきれない汚れ等があり、野営をしている冒険者や兵士特有の匂いがどうしてもするので、気になっていたのだ。


 埃を落とすとはフォルクスの配慮だ。べソン以外気がついたようで俯いていたが、シーラが


「あ、ありがとう。あんたはやっぱり凄いのね。生活魔法って便利ね」


「俺の魔力が有れば攻撃にも使えるんだ。実際あの撤退戦の後ではそれで生き残れたと確信しているよ。それより後で風呂に行ってこいよ。ここの浴場は中々良いぞ」


 部屋に入ると皆どのベッドにするか決めて行く。

 殆ど無い彼女達の荷物を置き、話をしようとフォルクスが切り出す前にカーラが


「良かったら力の使い方を教えましてよ?それとあまりシーラをいじめないで。彼女の条件の言った何でも言うコトを聞くというのは私がゆうま様に精霊の力を教える、それでダメかしら?」


「分かったその条件を飲もう。というよりも俺にはそんな力があるのかい?」


「貴方には風の精霊がついております。私の方は水ですけども。まだ精霊と話すら出来ていないのですね」


「カーラ、宜しく頼むよ」


 シーラがきょとんとなりながら


「ねえ、フォルクス。さっきからずっと気になっていたけど、何であんたカーラの名前を知ってるのよ?誰もカーラの名前なんて言ってないわよ」


「最初にカーラと握手した時に、魔力を測ろうと手に魔力を流したら彼女の名前が分かったんだ。なぜと言われてもよく分からないんだ。それで判ったのは確かに彼女の魔力だと合格はぎりぎりか厳しいと確信したんだ。一次試験を落ちた奴より魔力が低い筈だ。それと俺の方からもお願いするよ。それと従者というのになるとどういう扱いになるんだ?」


「そそんな事私に聞かないでよ。そのうち分かるから」


 フォルクスはシーラが何を慌てているのかよく分からなかったが、首をかしげる位しか出来なかった。シーラの事は可愛いなとは思うが、今はこのカーラという不思議な美少女が気になって仕方がない。ゆうまと自分の事を言った事が一番気になるのだ。


「さっき俺の事をゆうまって言ったけど、俺の名前はフォルクスだよ。どういう事なんだろうか?」


「そうですわね。貴方が私の名前が分かったように、私にも貴方の名前がゆうまだと分かったのです。ただ分かったとしか言いようがありません」


「そうか。僕の本当の名前はゆうまって言うんだね。実は記憶が無いんだ。兵役に就かさせられる少し前からの記憶がないんだよ。皆には仲間になる以上は秘密を打ち明けるけど、他言無用で頼むよ。制約は無いけれど、誓って欲しい。もっと大事な話の方が先だから後で事情を説明しようと思う。その上で僕を仲間にするかどうか判断して欲しい。仲間にならなくても、秘密は墓まで持って行って欲しいんだ」


「わかりました」


「ところで君達3人はどういう友達なの?」


 シーラが膨らみ始め、正に膨らんでいる最中のまだ小さな胸を誇張するかのように胸を張り、私の話を聞きなさい的な態度を取り、


「私達3人は同じ村の出身者よ」


 そう告げ、如何に自分達が仲の良い幼い頃からの友達なのかを雄弁していくのであった。

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