第14話 頼まれ

 そこに現れたのはフォルクスより僅かに背が小さいが、それでも並の男よりも大きい大柄な女性だ。大柄と言っても鍛えられており、無駄な肉はなく、どちらかと言うとすらっとしていて痩せている。腰に剣を帯びているので女流剣士といった所であろうか。ブロンズにポニーテールでキリッとした顔立ちだ。そんな彼女が


「シーラ、貴女が男連れだなんて珍しいわね。ひょっとして彼がそうなの?」


 意味深な事を言っていた。


 フォルクスはきょとんとなりながら


「シーラ、彼女達が君の言っていたお友達なの?」


「ええそうよ。元々この店で待ち合わせをしていたの」


「という事は彼女達も魔法学校を受験するの?」


「そうよ」


「そっか。まずは自己紹介だよな。俺はフォルクスでこっちのでかいのがべソンだ、宜しく!」


 まず大女の方に握手を求め、握手を交わす。


「こっちの大男はなかなか強そうね。アタイといい勝負をするかしら。でアンタもデカイな。うっ!」


「いたたた」


 フォルクスが手をさすり悲鳴を上げた。


「あんた一体何をした?それとあたいのこれに対して握り返さなかった男は久し振りだよ。大抵の男はムキになって握り返してくるんだよ。それにアンタもアタイといい勝負が出来るだろうに何故だい?まあ、その悪かったな。で、こっちのお兄さん!始めまして。あんたは握り返してくれるよな!」


 2人の手が震えていた。


「降参、降参、参った。うへー驚いたよ。あんたさ、あたいより強いんだな。あたいはリズってんだ。決めた、あんたのスケにしてくれてもいいんだぜ。アタイはこのお男に決めたぜ」


 フォルクスもべソンも言っている意味が分からなかった。

 もう一人の方を見ると、エルフの綺麗系な清純派美少女といった感じの美少女だ。

 エルフは皆金髪のようで、見事なストレートで、腰までの長さで、後ろで上品に纏められている。


 フォルクスは一瞬固まった。この世界に来て話をする2人目のエルフだからだが、やはり握手を交わす。彼女も一瞬ぴくんとなり、フォルクスもぴくんとなった。何も言わなかったが、先程シーラにした事をしていたのだ。


「カーラは僕と同類のようだね。同じような力を感じるんだ」


「そうね、ゆうま様。貴方はまだその力が使えないようだけれども、私には使えるのよ。宜しくね。久し振りに貴方のような方に出会えましたわ。あちらの方も可能なら貴方にしようかしら」


「それじゃあみんな揃った事だし、そろそろ本題に行こうかしら?単刀直入に言うけど、私達とチームを組まない?カーラ達は構わないわよね?それとは別に貴方に2つお願いがあるの」


「チームってどういう事だ?冒険者でもするのか?」


「学校を卒業したら多分冒険者をやるとは思うけれども、そうじゃないの。学校での事よ」


「学校はいいが、その前にまず合格しなきゃダメだろ?」


「何言ってるの?あんただったらトップで合格よ」


 カーラと言われるエルフの美少女が


「確かに彼は強そうですわね。問題は私が合格できるかどうかなのですよ」


「アタイは多分大丈夫だろうが、シーラ分かっているのか?アイツを敵に回すんだぞ」


 フォルクスは首を傾げる。リズと名乗ったこの女はおそらく魔法剣士なのだろう。べソンと同じ位の魔力があるのを先程測ったからだ。


 いつの間にやらフォルクスは握手をすれば魔力量がそれなりになんとなく強いか弱いか位は分かる、そういう力が身に付いていたのだ。魔力を流しあえばなかり正確に分かる。


「うん、確かにこの中でカーラが一番魔力が弱いね」


「流石ですわね。貴方は桁外れに強いようですが、私の事も分かるのですね?」


「リズさんに比べて、半分も魔力が無いようだね。でもこの中では僕の次にカーラが強いと思うんだ」


 シーラが頷きながら


「そうよ。彼女は私より強いのよ。魔法以外の力が強いのよね。でもあの学校で合格するのに必要なのは魔法の力なの」


「もう少し詳しく教えてくれないか?」


「魔法学校でね、月に1回チーム別の試験があるの。それで1番を取ったチーム全員のその月の分の授業料を始め、寮の費用等全ての費用が免除になり返金されるの。だからね、その、フォルクス、貴方がいればずっと1位を取れると思うの。私とフォルクスがいれば行けると思うのよ」


「シーラも十分魔力を持っているだろう?」


「駄目なの。貴方がいないと。その、私の力だけでは1位は取れそうにないのよ。だから1位を取る為に一緒にチームを組んで欲しいの。今年の入学予定者に宮廷魔術師の息子がいるの。私の倍は魔力を持っていて、個人では絶対に適わないから、チームに賭けるの。それにあいつとチームを組むなんて死んだ方がましよ。それとフォルクス達は費用の方は大丈夫なの?私達はあまり持っていないのよ」


「確か大金貨6枚だろ?俺達は金貨6000枚は持っているから問題ないんだ」


「何でそんなに持っているのよ?ひょっとして、あんた達って貴族の子息なの?」


「いや、ここに来る前に盗賊団を一つ潰したんだ。その討伐達成報酬と懸賞金、盗賊のアジトに有ったお宝でお金はかなり有るんだ。まあ、一応正式にはとある街の領主の息子って事になっているがまあ違うのだろうな。所謂身代わりってやつさ」


「そ、そうなんだ。私達と違ってやっぱりお金持ちなんだ。その、ひとつ目のお願いなのだけれども、カーラが合格できなかった場合、貴方の従者にして。何でもお願いを聞くから。」


「どういう事?」


「その、個人での1位合格者は特例で従者を連れてこれて、その者のチームは特別室に住めるの。また、従者は一次試験さえ突破していれば合格者扱いになり、一緒に授業を受けられるの。昔、王族の身の回りの世話をする者を何とか送り込む為に作られた制度らしいのだけれども、今はその名残で1位の者の特別な権利として有るの。駄目かしから?」


「俺が居なかったらシーラは一位になりそうなの?」


「今年宮廷魔術師の息子が入ってくるって言ったでしょ。彼はその、100年に一度の逸材と言われているのよ。私の倍近くの魔力があるし、既に技術もそれなりに有るから個人でのナンバーワン候補なの。今の私じゃ残念ながら無理なのよ。卒業するまでには追い越したいけどもね。あんたはあいつの3倍は魔力を持っているでしょ?」


 フォルクスは眉がピクッついたが、下卑た感じで更にいやらしい手付きをしながら


「大体の事情は分かった。本当に何でもお願いを聞いてくれるのかい?」


「き、き、聞くわよ。そのエッチな事を要求してきたら駄目だけど、それ以外なら何でも聞くわよ」


「はははは。流石にそんな事はお願いしないよ。ちなみにもう一つは何をお願いしたいんだい?」


「その、時間があまりないの。無理な事を言うと思うの。その、運悪く私達3人共権利を握られているの」


「何の事だい?」


「シーラ、この方は知らないのよ。べソン様は分かったようだけれども」


「そ、そうなんだ。その、私達のその、初夜権を買い取って欲しいの」


 フォルクスはその瞬間意味が分かるが解らず真っ白になったのであった。

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