第11話 首都へ

 フォルクス達は翌朝かなり早い時間に出発する事になった。今までのようにのらりくらりと、景色を楽しみながらゆっくり行く事が出来なくなったからだ。


 というのは、年に1回ある魔法学校への入学申し込み手続きの締め切りまで、あと3日しかないというのが分かり、急遽急いで向かう事になったのだ。


 空荷で馬に乗る場合であれば、なんとか2日、つまり、期限内には着くだろうというような距離だそうだ。また、ギルドにて懸賞金や盗賊から奪った金貨等を全て大金貨に換金して貰った。勿論普段使う為のお金もそれなりに持っているが、魔法学校への入学時に出さなければならないお金は基本的に大金貨での支払いになると言っていたからだ。


 大金貨は金貨100枚で1枚になるのだが、普通の生活の中では中々使わない種類だ。生活費などに必要な分は通常の金貨や銀貨が必要になるが、それ以外のお金は全て大金貨にしてある。


 町を出た後2人はひたすら首都を目指し馬を走らせて行く。勿論全力ではないのだが、 馬がバテない範囲で軽快に走らせていく。


 馬の負担を減らしたいので装備品等を極力外していた。最低限皮鎧だけは外せないので、防具は革鎧のみだ。武器は短剣と投擲用のナイフを数本のみ身に着けるのみにした。尤もいざとなれば収納から武器を出して対処する事としたから問題無い。それにフォルクスには魔法があるので、武器を出す時間位は稼ぐ事は十分可能なのだ。


 手続きをする為の時間は何とかなる。試験の申込みにも何とか間に合いそうなのだが、首都に着いたばかりで、どんな町なのか、どこに何が有るのか等何も分からないままいきなり手続きをしなければならなくなった。


 その為に多少なりとも日程については余裕が欲しかったのだが、実際は行き当たりばったりだ。


 2人共大男なのだが、殆ど装備を身に着けていない為、馬に掛かる負担が少なく順調に歩みを進めてくれた。馬も頑張ってくれたので、なんとか魔法学校への入学試験の申し込みの締切日の前日に町に入ったのであった。


 夕方少し前だったのもあり、とりあえず魔法学校の入学試験の申し込みの手続きをする場所を門番の所で聞いていた。さすがに首都ではある為、かなりの高さの防壁に囲まれた大きな町だった。町の入り口にある門での検査もかなり厳しかった。勿論罪者のチェックなども行われて行く。特に他の町から馬車で来た者達は馬車の中の荷物まで確認されているような状態だった。


 だがフォルクス達は殆ど何も持っておらず、荷物検査の必要が無かったからそのまま通されていた。ただギルドマスター発行の魔法学校への推薦状が有った為、比較的あっさりと通された。


 教えて貰った魔法学校に無事に着くと臨時の試験受付場所があり、そこに行ったのだが、必要な物が不足していた為に突き返されてしまった。まだ1日あるので準備をするように言われた。正式な街での滞在許可証、もしくは冒険車登録があるのならばギルドにてホームタウンとして住居登録をするように言われ、それが無いと申し込みができないと言われたのだ。


 そう、こういう事があると怖いので、せめて1日位は早く来たかったのだ。

 もう本日の試験受付は閉まってしまうので、また明日来るように言われ、手続きに際し必要な事を教えて貰った。


 紹介状も有り、結果的になんとか明日にはなんとかなりそうだった。不足しているのは滞在許可証もしくは町の住人であることの証明をする物のみが足りない事が分かり、今日のところは宿にて休み、明日の朝一番でギルドに行く事にしたのであった。


 宿は一度は高級宿に泊まりたいとフォルクスが言い出した。高級宿の空き部屋を探したのだが、偶々どこも満室で、結局中級宿の中では比較的上等な部屋にした。6人が泊まれる部屋しか無く、割高だが学校に行き出したら寄宿舎か寮になるらしいので、今は宿での滞在を堪能する事にした。


 朝早く起きたフォルクス達は2人して近くの空き地で早朝稽古をしていた。その後食事を摂り、着替えてからギルドに向かう事になる。


 今日の装備はいかにも冒険者です!というような服装ではなく、予備にと思って取っておいたチェーンメールにした。そう兵役に就いていた時の格好で行く事にしたのだ。万が一を考え、手持ちで一番防御力のある格好にしたのと、長い期間使っていて、サイズもぴったりなのだ。重たい事以外は慣れ親しんだ相棒であり、使い勝手が良いのだ。何故ならば、もしも試験の申し込みをした時に、受託された後、即時試験となり、しかも何かと戦う事になった場合に備える事にしたのだ。何を血迷ったかべソンは大剣を背負っていく。


 フォルクスもいつもの剣を帯剣だ。


「俺達ってマンマ兵士の格好だよな。やっぱり兵士に見られるかな?」


「そうだな、まあ見えるだろうな」


 べソンはボソッと言うのだが、まあいいかとフォルクスは軽く考えその格好でギルドに向かうのであったが、フォルクスはこれからの出来事や魔法を覚える事に期待をしていた。また、魅力溢れる異性との出会いを期待し、心が踊るのであった。

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