悪役令嬢の休憩時間
衣谷一
0.おかえりなさいませ
気がづけばある部屋にいる。
白を基調とした部屋。壁紙天井、床。部屋の中に収められている家具のたぐいも白でいっぱいだった。光の加減によってはそれぞれの境界線すら曖昧になってしまう。幻の中にいると錯覚してしまうような光景だった。
サキにとっては少なくとも、十五回は訪れている場所だった。始めこそ見ている余裕が全くなかったが、『一瞬で事が終わった後』であれば冷静に見て回るだけの余裕がある。
そう、事が終わった後。人生が終わった後。
いわゆる死後の世界というやつかもしれない。サキが落ち着いて周りを見られるようになって初めて抱いた感想だった。いつのことだったか。
しかし、実際のところは死後の世界なんて生易しい場所ではなかった。
生と生の間。さらに言えば。
バッドエンドが約束された者のための場所だった。
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