第6話 いつもの待ち合わせの場所で
「ミツバ!遅いよ!」
「ゴメン!寝坊したっ!」
翌日、マホ達と待ち合わせをした駅でバタバタと走ってサヤカとマホの元に駆け寄っていくミツバ。人混みの中を掻き分け息を切らして、やっと辿り着いた
「もー。急いで行くよ。お店混んじゃうから」
「う、うん……」
ミツバが来るなりすぐ歩きだしたサヤカ。マホも歩きその後ろにサクラが二人の後ろを歩いているのを見て、戸惑いつつもミツバも三人の後を追う
「サクラは、この街に来たばかりだよね?あまり、ここら辺のお店とか知らないでしょ?」
「うん、でも引っ越す前からこの街には何度か来てたから、何となくは分かるよ」
「そうなんだ。今から行く所、有名なお菓子屋だから、行ったことあるかもね」
「うん、楽しみ!」
その後も話が盛り上がる三人に対し、ミツバはあまり会話に入らないまま、向かっていたお菓子屋に着いた
「美味しそう!」
注文した四人分のお菓子がテーブルに一杯に並びテンションが上がるサクラ。サヤカとマホもご機嫌でお菓子を見比べている中、ミツバは注文したお菓子を少しボーッしている様子で見つめている
「ちょっとミツバ。体調悪いの?大丈夫?」
「えっ?ううん、大丈夫……」
サヤカに声をかけられて慌てて笑って答えると、気を取り直して会話をしながらお菓子を食べ始めるミツバ達。たくさんあったお菓子はすぐに食べ終えて、今度は紅茶を飲みながら会話が弾む
「私、ちょっとトイレいってくる」
と席を立つマホを見てサヤカも席を立った
「ゴメン。私もトイレ行って、飲み物のおかわり買ってくる。二人ともちょっと待ってて」
「うん……」
トイレへ向かう二人の後ろ姿を見送ると向かいに座るサクラを見たミツバ。どことなく緊張感が流れて二人とも無言のまま、紅茶を一口飲んだ
「あの……サクラさん」
「サクラでいいよ」
恐る恐る声をかけるミツバに、ニコッと笑って返事をするサクラ。思っていたより早く返事が来て一瞬、うろたえ戸惑いつつもまた話しかけた
「あの……昨日……」
「前にも言ったけど、見たことは全部忘れてほしいの」
今度は語気を強めてミツバの話を遮ると、その声に萎縮したミツバが少しうつ向いた
「でも……私……」
「お願い。何も知らないで。聞かないで」
再び強い口調でまた話を遮ると、何も言えなくなったミツバと、気持ちを落ち着かせるため紅茶を飲むサクラとの間にまた緊張感が溢れて二人とも無言のまま時間が過ぎていく
「二人とも、どうしたの?」
いつの間にかサヤカとマホが戻ってきていてサクラとミツバに声をかけた。会話のない二人の様子に、心配そうに席に座るサヤカとマホ
「な……なんでもないよ」
「お話が盛り上がって。ねっ」
二人の声に気づいて慌てて返事をするミツバ。サクラもニコッと笑って返事をするとつられて、ミツバも少し頷いて答える。少しぎこちなさそうな二人の雰囲気がちょっと気になりつつも、サヤカとマホがまた買ってきたお菓子をサクラとミツバにも渡すと、また四人の会話が始まった
「ミツバらしくないね。あんな風にサクラと話すなんて」
そんな中、四人がいるお店の向かいの建物の屋上では、女の子二人組が双眼鏡でサクラとミツバを見ていた
「何にも知らないみたいだからね。教えないって意気込んでいるみたいだから」
と、双眼鏡の女の子の隣で、ツバキがサクラ達が食べているお菓子と同じものを食べながら答えると、双眼鏡でミツバとサクラを見ていた女の子が立ち上がり、うーんと背伸びをすると持っていた双眼鏡が本に変わり、パラパラとページをめくると、ふわりと体が浮いてツバキの手を引いて地上へと降りていく
「じゃあ一緒に、サクラの作戦をちょっと壊しに行こうか。ミツバがどうなるか楽しみだね」
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