彼に私のことを知ってもらうのが
その後、観音は卒園したけど、私は、
「近くを通りがかったもので観音ちゃんがどうしてるかなと」
とか、偶然を装って自宅に立ち寄ったりして、縁が切れないように、あれこれ努力をしてた。
まあ、ぶちゃけ、その行為自体が、今から思えばストーカーみたいなものだったけど、
その一方で、ホームヘルパーさんや、シッターさんには、怪訝そうな顔をされたりもしたけどさ。で、ある程度の顔見知りになったら、お土産とかも持参するようにして、気は遣ってたんだよ。同時に、最初の頃には、変に何か持ってきたら、『盗聴器とかが仕掛けられてるかも』『毒とかが混入されてるかも』みたいに思われるかもと考えて逆に何も持って行かないようにしてたりとかさ。
ほら、アイドルとかでも、ぬいぐるみに盗聴器とか盗撮カメラとか仕掛けられてないか、食べ物に異物が混入されてないか、用心するって聞いてたし、私自身、よく知らない相手からいきなり好意を寄せられてそれで何かもらったりしても、気持ち悪くて手を付けずに捨てるだろうなって思ってたしさ。それこそ、初手で<告白>とか、ないない。
『あなたが私の何を知ってるって言うの?』
みたいに思っちゃうのは確実。私自身が<一目惚れ>してるからそういうのがないとは言わないにしても、やっぱ、ねえ。
だからまず、とにかく親しくなることからって考えたんだよ。
旦那の仕事が休みの日とかにも、なんだかんだと顔を出すようにして、ちょっとずつちょっとずつ顔なじみになっていったりって形で。今から思えば 私達にとってもそれが正解だった気がする。
実際、そうやって少しずつ知っていくにつれ、彼のことは何も知らなかったんだってのを思い知らされた。外ではそれなりにちゃんとしてるようにも見える彼だけど、家の中では、トイレのドアはしっかり閉めないし、休日なんか寝癖付いたまま一日過ごしてたりするし、ぜんぜん最初のイメージと違ってた。
もし一目惚れの状態のまま告白して、まかり間違って成功でもしちゃってたりしたら、その時点で変に満足しちゃって、うまくいくのが当たり前っていう気になっちゃって、彼のことが分かってくるにしたがって、気持ちが冷めちゃった可能性もあったかもね。
だけど実際はこの時点での私は、彼に私のことを知ってもらうのが第一で、彼のだらしないところとかも、
『私も家ではだらしないです! 同じです!』
みたいに考えてたんだ。
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