誰か困ることある?

観音かのんは、ナポリタンの上に目玉焼きを乗せて食べるのが定番だった。なので、ナポリタンを電子レンジで解凍しつつ目玉焼きを作りつつ、


「掃除は?」


私が尋ねると観音は、


「やっといたよ~」


と答えてくれた。


んー彼女も私と同じように、基本的には手抜きだけど、一応掃除をしてくれる私が手抜きしてるんだから彼女にも完璧を求めるのはおかしいと思ってる。


こうして彼女には<目玉焼き乗せナポリタン>を、私にはボンゴレビアンコを、それぞれ用意して、二人でまたアニメを見ながら、笑ったりツッコミを入れつつ寛いだ。


「私もうお風呂入ったから」


お風呂上りなのは言われるまでもなく察してたけど、彼女の言うとおりお風呂が沸いていたから、夕食を終えたら、私もすぐにお風呂に入る。


うちは、さすがにお風呂もまあまあ立派だ。


二人で入っても余裕の広さがある。ダンナともよく一緒に入ったし、観音かのんともけっこう一緒に入る。


時々、たまらなくなるんだよ。寂しくてたまらなくなるんだ。一人でいるのに耐えられなくなるんだ。


それは観音かのんも同じで、彼女の方から、


「一緒に入ろうよ」


と、声をかけてくることもある。それどころか、ダンナが亡くなったばかりの頃は、彼女は一人でお風呂に入れなくなっていた時期もあった。一人でお風呂に入っていると、たまらなく不安になってきて、涙が止まらなくなることがあるんだって。


だけどそれは私も同じかな。だから二人で一緒に入ったりもするんだ。


そういうのを『ありえない!』と言う人もいるだろうけど、いいじゃん別に。誰か困ることある?


女二人でお風呂に入ってて。


でもまあ、今日のところはとりあえず一人で入って体を洗いながらぼんやり考える。


残念ながら子供はできなかったけど、ダンナとは結構イチャラブしてたと思う。風呂に入ってて盛り上がっちゃってそのままってことも何度もあった。


それを思い出して体が火照ってきちゃうこともある。でもだからって、観音かのんとそういう関係にというのは、ない。


その手の漫画やアニメのような展開はそうそうあることじゃないんだ。違うんだよ。観音かのんはダンナの代わりじゃない。ダンナはダンナで、観音かのん観音かのんなんだ。


そういう形での身代わりを求める人もいるかもしれないけれど、少なくとも私は違うかな。


決していい格好してるんじゃなくて、ダンナでなくちゃ嫌なんだよ。ダンナ相手じゃなきゃそういう気分になれないんだ。


女性なら分かる人も多そうだし、男性でもたまにはそういう人もいるかもしれない。だからってもちろんこれが正しいとも言わないけど、自分がそうじゃないからってそれはおかしいとか言われるのも違う気がする。自分は自分、他人は他人。それでいいよね。


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