久遠観音と久遠観音
彼は、本当に寛容な男性だった。だけどまさか、自分の死に対してまで寛容だなんて、普通は思わないじゃない!?
「君と
って、いや、まず自分の命でしょうが!? 自分が死ぬんだってことをまず怖がろうよ!!
おかしいでしょ!?
分かってたわよ! 私みたいな女と結婚してくれるって時点で頭おかしい人だってことは! にしたって限度ってものがあるじゃない!?
……なんて、言っても無駄なんだよな……彼はもう、この世にはいないんだから……
そして、そんな彼を私は愛しちゃったんだから……
自業自得だよ……
それから二年。正直、今でも吹っ切れてるわけじゃないけど、時々、たまらなくなることはあるけど、何とか日常を送れるくらいには立ち直ってきてると思う。
だけどそれも、娘の、
ちなみに私の名前は、
<久遠観音>
になる。
私の旧姓は、<大森>だけどね。
彼女は、今、二十歳。大学二年生。彼女が十三、中学生の時に、私は彼女の父親であるダンナと結婚した。
だけど、出逢ったのは、
でも、そのすぐ後で母親は仕事を選ぶために離婚して、海外へと飛び立った。私はそれを、
「ママはね、わたしをすててしごとをとったんだ」
「!?」
彼女の口からそう聞かされた瞬間、ギョッとしたわよ。まだ三歳になったばかりの子供がそんな言い方、普通する?
可哀想とかなんとかいうよりも、怖かった。
でも、だからって彼女が何か問題行動を起こすとかはなかった。それどころか、いっつもニコニコしてて他の子とケンカもしないし、自分が使ってる
「はい、どうぞ♡」
って笑顔で譲ってあげて、自分はまた他の
ただそれも、『執着がない』という意味では、母親が自分の前から去ってしまったことを『ママはね、わたしをすててしごとをとったんだ』って言ってのけるのと大きくは違わないのかもしれない。
そんな感じで、なんとも言えない強烈な印象を私に残した彼女が後に自分の子供になるとは、さすがにこの時は思っていなかった。
だけど、シッターが送り迎えをしていた彼女を、ある日、父親が迎えに来たんだ。シッターが急病で来れなくなったとかで。
そして初めて彼に会ったその時に、私は恋に落ちてしまったんだ。
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