第一章 火炎の王子

第1話 始まりの衝撃



 「人は絶えるとき、最も輝いていると思わないか?」




 沢山の兵士と思われる者達が二つに別れて乱戦を行っている。


 片方は鬼気迫る表情でここを通さないようにと、背中に守るべき城を感じながら剣や拳を振るう。




 もう片方は侵略者と言われるべき者なのだろう。やや余裕をもってそんな兵達を捌いている。決してこっちが押しているという訳でもないが。




 そんな戦場の中央で不釣り合いなほど静かな空間がぽっこりとあいていた。




 城に向いて、先程の言葉を放ったのは汚れとは無縁そうな真っ白な服を着た男だ。黒い髪を後ろに伸ばし、人の良さそうな整った顔をして、杖をもっている。


 彼からは優しさとは対局の冷たい雰囲気と自分に対する傲慢とまで言える程の自信が溢れている。




 「違う!生きているときほど輝いている瞬間はない!」




 黒髪の男の言葉に激昂して二本目の剣を抜いたのは赤髪の男。真っ赤に染まっている髪とルビーの輝きを持つ目をもっており、つり上がった目と好戦的なイメージを持たせる引き締まった顔をしている。目の前の突如現れた侵略者に今にも飛びかかりそうだが、そうはしない。




 なにせ、目の前にいるのは、軍事国家、神柱帝国しんちゅうていこくの皇帝、コーシ・ドート・レクトルであり、帝国最強の男だからだ。




 「そうか……ならまだ俺には勝てまい」


 コーシは見下すように言う。一見両手をだらんとさせている彼の姿は無防備に見えるが、放たれている威圧感は半端ない。きっと、どう仕掛けても自分がやられるだろう赤髪の男は唇を噛む。


 それでも、守らなきゃいけない、戦わなきゃいけない、退けない戦いは今この時だ!自らの力を信じ、妄言を吐く最強に向かって右手に嵌めてある指輪に触れながら走り出す。


 「コール!レギンスフレイム!!」


 カズサールの目の前に豚が炎を纏っている紋章が現れる。カズサールがそれを通りすぎると、急所を守るような深紅の鎧を纏っていた。


 コーシはそれを見てニヤリと笑い右手で誘う。


 「俺を止めればこの戦争はお前の勝ちだぞ?カズサール王子」


 カズサールと呼ばれた赤髪の男はコーシを無視して、敵意剥き出しで剣を降り下ろす。


 「コール レギンスゴッド」


 コーシの周りが光ったと思った瞬間、白色の猿の尻尾のような物が生え、胸部に百合を手にもつ切なそうな猿がかかれた装甲が現れる。


 「燃やし尽くせ!炎降斬えんこうざん!!」


 「向かい打て、神弾しんだん


 炎を纏った剣の降り下ろしと白色の杖から放たれた弾丸がぶつかる。

 

 その瞬間、衝撃波が生まれた。最も近いところで戦っていた者達は軒並み吹き飛ばされる。




 「俺は止まらないぞ」




 どちらが発したのか、赤と白の残像がより激しくぶつかり合った。






















 ここは、まだ戦争が絶えず、平和と豊かさを求めて様々な勢力がぶつかり合う世界。人は魔物という理解の外にいる存在と戦い、時には同族の人と戦う。




 この世界はまるで波のように揺らぎ、繁栄し、衰退し、人々に幸福を与え、絶望を与える。


 その一方、世界には色が溢れている。同じ赤でも桃、紅、朱だったり。それぞれが自分の色を持っている。それらが綺麗に輝き合うそんな素敵な世界でもある。



 はたして、そんな厳しくも素敵な世界でコーシと赤髪の男、カズサールはどうやって生き抜いていくのか…




 二つの大きな波が今、動き出す。







ーーーーーーー

加筆いたしました。また0話を追加しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る