6.錬金術師とクマさん

畑仕事も一段落したので昼食を食べに家に帰りました、リビングに向かうと珍しい顔が。


「…兄貴…、おかえり…」


ボサボサ頭のグルグルメガネを掛けた少年が声をかけてきました。


お気づきでしょうが彼は三男のパウル(12)です、国家錬金術師です。


5年に一度行われる国家試験に合格した錬金術師が授かる称号を史上最年少で取得した


自慢の弟でもあります。


主に日常的に使われている薬品や消耗品を制作したり、魔道具の作成を主に仕事に


しています。


国家錬金術師の最大の特徴はエリクサー、‘蘇生薬など一般的に作るのが大変難しいと


言われる薬品を作成することが出来ます。


そんな彼は基本引きこもりです、一度作業や興味のあること(例えば珍しい薬草が手に


入ったときや貴重な魔導書や有名な学者が書いた書物など)に没頭し始めると1週間は


部屋に籠もります。ただし、家の決まり鉄の掟には逆らえないので食事と風呂


の時間には出てきますが。


そんな弟ですが私にとってはカワイイ弟の一人なので必要以上に構ってしましますが。


ある日のこと、珍しい人が当家にやってきたのです。


「おーっす、パウルいるかー?」


灰色毛皮の顔に大きな頬傷をつけたガチムチクマさんがやってきました。


お嬢さんお逃げなさい、スタコラサッサ…。


クロードは逃げ出した「おいクロード何処へ行く?」


クロードは逃げられなかった。


彼は父上と共に戦った元勇者パーティーの武道家、霧崎熊太郎さんです。


思いっきし日本名っぽいですが東方出身の為そういう名前だそうで、過去の時代


東方へ住み始めた転移者や転生者が日本名を代々名乗ったからとのこと。


実は熊太郎さんはパウルの師匠でありパウル自身錬金術師兼格闘家という経歴だったり


します、幼い頃から引きこもっていたパウルを見かねた両親がたまたま遊びに着ていた


熊太郎さんに修行と称して身元を預けたらいつのまにかすべての技を伝授してしまった


そうで、指先一つでミンチにしちゃうレベルまで上げたという。


結局引きこもりは直りませんでしたけどね(笑)


「てめぇ、いつまで回想入ってんだ?」


さーせん、パウル呼んできますよ。少々お待ち下さい、せっかくなのでお茶でも飲んでて


くださいな、メイドよーお茶をお出ししてー。熊太郎さん応接室でお待ち下さい。


…数分後…


「…師匠怖い、行きたくない」パウルーお願いだから出てきてー!!


案の定引きこもり継続中です、死線をくぐり抜けたそうであまり師匠には会いたくない


パウル君。君が行ってくれないと最悪お屋敷破壊されちゃうからー。


「…研究資料、機材壊れるのは避けたい…。仕方ない、覚悟決めよう…。」


ドアが開いて顔の青いパウルが出てきました、ごめんよパウル…。


応接室に戻ると、メイドの顔が赤いです。なんかモジモジしています。


とりあえず見なかったことにしましょう、うちは割と自由なんで。


「おう、パウル久しぶりだな。」「…師匠お久しぶり…、何の用?」


「この前地元の市で見つけた東方薬膳集を見つけて買っておいた、お前欲しがっていた


だろう?」


見た目怖いのにイケメンかよー!!と心の中で絶叫している私。


「…師匠、ありがとう…。」パウル君めっちゃ照れてます、珍しい。


「じゃ、俺帰るわ。邪魔したな。」あれ?パウルさんもう帰るんですか?


「ああ仕事の途中で寄っただけだから、またな二人共」


「師匠、またね…。」バイバイと手を振りながら少し寂しそうなパウルを見ながら


思いました。


おい、おっさんうちのメイドお持ち帰りするんじゃねぇ!!


メイドの持ち帰りだけは阻止した一日でした、…なんか疲れた…。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る