#821

ローズとフォクシーレディが陸上戦艦の甲板かんぱんに上がると、積み上げられた戦闘用ドローンの残骸ざんがいが見えた。


その前に見えるのは四人の人物――。


刀身の長さが九十センチはある大太刀おおたちを持った白髪の少年――ブレイク·ベルサウンド。


分厚い刃をした青龍刀を持ち、頭のてっぺんから結ったポニーテールの少女――ブライダル。


二丁のブラスターハンドガンを両手に握り、頭全体をおおう感じでバンダナを巻いた、レザージャケット姿の青年――ソウルミュー。


半分長髪の半分スキンヘッドで左右対称の髪型をした青年――エンポリ·アルマー。


それぞれが艦内から出て来たローズとフォクシーレディのことを見据えている。


「おぉッ! あれがローズ·テネシーグレッチだねッ! でも、私が知っているのよりもずいぶんと大人びてるな~。たしかもっと貧乳ひんにゅうでロリキャラっぽかったのに、背も胸もおっきくなっちゃってる」


「ラスボスが二人目の前に出て来たってのに……。お前はホントにブレないヤツだよな」


ローズの姿を見て、いつもの調子で声をあげたブライダルにソウルミューが呆れると、彼はフォクシーレディに声をかける。


「もう、周辺を守っていたドローンは全部破壊した。フォクシーレディ……。今すぐ降伏するんだ」


「あらあら、あたしを呼び捨てにしちゃう? ちょっと会わない間になんか偉そうになったわね、ソウルミュー。あんたがあたしにそんな口を聞いて、ただで済むと思ってるわけ?」


ソウルミューは以前に、フォクシーレディが経営する会社――エレクトロハーモニー社の開発部で、社長である彼女からその腕を見込まれて働いていた。


だが、その後に彼の造るガジェットや兵器は市場に需要じゅようがなく、解雇かいこを言い渡されていた。


「思ってねぇ。今回のこと……正直、ショックだったよ。オレにとってあんたは恩人みてぇなもんだったからな。あんたと戦うことになるなんてよ……」


「そんなにあたしのことを思ってるのなら、今からでも遅くないわよ。こっちに来なさいソウルミュー。またあたしのとこで好きなだけ開発をやらせてあげるから」


フォクシーレディは豊かな胸を突き出し、その白く長い手を差し出した。


挑発的な彼女の仕草を一瞥いちべつしたブレイクたちは、すぐにソウルミューの反応を見る。


「以前のオレならあんたの誘いに乗ったかもな。だけどよぉ、オレが世界を救う理由ってのはよぉ。会ったこともねぇ人間とかを守りたいんじゃなくて、オレが好きな人間がやるはずだったことを代わりでやってんだ。わりぃがその誘いには乗れねぇ」


「そう、まあいいわ。でも、ちょっとは成長したみたいね」


フォクシーレディは手を引っ込めると、両腕を組む。


そして、彼女の隣にいたローズがその口を開いた。

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