#794

ローズがピックアップブレードのスイッチを入れると、握っていた柄から白銀色の光の刃が現れた。


彼女はそれを一振りすると、ライティングとウェディング二人へと近づいてくる。


「まさか本隊を待機させての侵入作戦とはな。ジェーシーが察しなければ裏をかかれていたよ」


ゆっくりと歩み、次第に距離を詰めてくるローズに、ライティングは恐怖を感じて思わず後退あとずさってしまう。


だが、ウェディングは違った。


ローズの姿を見るなりに、まるで鬼のような形相へと変わり、両手の甲からダイヤモンドの剣を出して彼女のことを激しくにらみ付ける。


「ライティングさんは作戦を続行してください」


「だけど、君だけでローズ将軍を相手にするのは危険過ぎる」


「大丈夫です。私は不死身、それにクリーンのかたきが自ら現れてくれたんですよ。これはあの子のおみちびきです」


ウェディングはそう言ったが。


ライティングは彼女を止めようとした。


いくらウェディングがハザードクラス――舞う宝石ダンシング·ダイヤモンドで知られるほどの人間であっても、マシーナリーウイルスの純粋な適合者であり、かつて世界を救った英雄――ヴィンテージのローズ·テネシーグレッチを相手に一人で戦うなど自殺行為だと思ったのだ。


「ローズゥゥゥッ!」


しかし、ライティングの言葉も空しく、ウェディングはローズへと飛び掛かってしまった。


光剣とダイヤ剣がぶつかり合い、その余波よはで、研究施設内を凄まじい衝撃が襲う。


「たしかウェディングだったか? いいぞ、その憎悪ぞうお。お前の深い愛を感じる」


「ローズローズローズローズゥゥゥッ!」


笑みを浮かべ、右手で握っているピックアップブレードのみでウェディングの斬撃をさばいていくローズ。


まるで嵐のような激しい猛攻だが、ローズはウェディングに声をかける余裕をみせる。


「クリアの娘、クリーン·ベルサウンドと太刀筋たちすじが似ているな」


「お前がクリーンの名を口にするなッ!」


ウェディングは力押しでは無理だと判断すると、剣を振ることができない距離まで近づき、身を縮めて回転しながら蹴りを放つ。


これにはさすがのローズも面を食らい、なんとか攻撃を避けてウェディングから離れる。


「なるほど。剣の基本はベルサウンド流……。それを我流でみがき、その本能に任せた獣ような動きを混ぜたのがお前の戦闘スタイルか」


後退させられたローズは、ウェディングを冷静に見据えると、その口角を上げた。


「だいたいわかった……。さあ、かかって来いッ! お前の怒りを、もっと私に見せてみろッ!」

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